卓話


イニシエイションスピーチ

2009年7月29日(水)の例会の卓話です。

植村 裕之君
相原 桂一郎君

地震と台風ー企業の防衛策

三井住友海上火災保険
常任顧問 植村 裕之君



 損保経営に大きな影響を与える地震、台風ですが、インド洋の津波とアメリカのハリケーン“アンドリュー”等が、巨大な規模で人命、財産を奪ったことは、記憶に新しいでしょうが、その後も、中国の四川大地震や、ミャンマーのサイクロンといった災害は我々に大きな恐怖を引きおこしました。

 昨年5月に発生した四川省の大地震の原因は幅30km、長さ100kmという逆断層が何と最大3.4mも移動したもので、巨大なエネルギーが地下19kmのところで発生しました。マグニチュードは8。死者と行方不明者合計で約9万人に達しました。

 昨年6月に発生した岩手、宮城内陸地震は幅12km、長さ20kmの逆断層が約3.5mずれたと推定されていますし、一部地域では山が300m近く動く大崩落がありました。皆様ご承知のように太平洋側では、プレート間地震の影響を受けやすく、発生間隔が短いために地震発生確率は高くなっています。

 切迫性が高まっていると指摘されている東海地震はプレート間で発生する海溝型であります。おおむね150年間隔で大きな地震が起きていることから、最後の安政東海地震から150年以上経過しているため、危険性が高まっているといわれてます。

 経済損害は37兆円、倒壊・焼失建物23万棟、死者数は9,200人と試算されており、阪神・淡路大震災と比較して、経済損害で3.7倍など大きな被害が想定されています。

 次いで首都直下型地震ですが、関東地方は陸側のプレートに太平洋とフィリピン海のプレートが2重に沈み込む構造になっているため、内陸型、海溝型と様々なタイプの地震が多発しています。夕方6時にマグニチュード7.3の地震が発生した場合、経済損害112兆円と東海地区の約3倍、全倒壊・焼失建物85万棟と東海地区の約2.7倍、死者11,000人、帰宅困難者は650万人に上ると推測されています。

 地震予知、耐震・免震対応、個々の企業・家庭での防災対策などしか打つ手はありません。中でも帰宅困難者の対策は非常に重要ですが、公的機関にできることはほとんどありません。東京都は個々の企業が独自の対策を行うことを求めていますし、防災管理者の配置も義務化されました。

 次いで、昨年5月にミャンマーを襲ったサイクロンの被害は甚大でした。風速は6〜70mで巨大な雨雲が発生しました。死者・行方不明合計で13万人を超えることとなり、ました。日本では過去最強の台風は1961年の第2室戸台風で風速67mを記録しました。

 熱帯性低気圧の将来予測ですが、発生数は今より30%減るといわれています。しかし、数は減っても、最大風速が桁外れに大きく、降水量も増加すると推測されています。

 台風の場合、公的機関は個人罹災者への対応を優先するため、地震と同様に企業への支援は全く行われないと認識すべきです。

 このため企業は地震や台風に備えて平常時よりリスクマネジメント体制を確立しておく必要があります。

 ここ数年Business Continuity Plan事業継続計画の立案を求める声が強まり、損保業界はこれらの要請に応えるべくリスク総研を設立し、企業のお役に立とうとしています。夫々の企業の被害の把握、特に建物、生産設備、社員、情報システムの被害把握により企業の課題が見えてきます。平常時からの計画立案、シミュレーション、訓練といった検証をするかしないかで、災害発生以降の企業の優劣を決定するといっても過言ではありません。
 
 「災害は忘れた頃にやってくる」「備えあれば憂いなし」の諺を経営として、どのように立案していくかが、企業トップの大きな責任であると思います。

生命の源 アミノ酸
                                              味の素蝓‘段名鑁じ槎筺
相原 桂一郎君

 日本の十大発明にうま味成分としてのグルタミン酸が挙げられています。昆布に多く含まれるアミノ酸であるグルタミン酸が、食品のうま味物質である事を世界に先駆けて発見したのは、東京大学・理学部の池田菊苗教授でした。今から約100年前、1908年の頃の話です。
彼のこの発見は特許庁により日本の十大発明に数えられ、今や同じ十大発明の豊田さんの自動織機、御木本さんの養殖真珠、レーダーから家庭用のTVアンテナまで世界に普及した八木アンテナ、世界で使われる永久磁石のMK鋼などと同様に、アミノ酸であるグルタミン酸は、調味料、うま味成分として世界中の人々により多用されるようになりました。

 アミノ酸は私たちのカラダや食事を構成する成分です。私たちのカラダはアミノ酸から作られています。そしてこのアミノ酸が連なったものをたんぱく質と称します。たんぱく質は僅か20種類のアミノ酸から構成され、アミノ酸が並ぶ順序、長さが変わることで、このたんぱく質は我々の筋肉や内臓や皮膚になります。また我々のカラダの働きを調節するホルモン、酵素などもこのアミノ酸から作られています。そしてこのアミノ酸の並べ方を決めるのは、皆さんご存知の遺伝子のDNAです。

 これらたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうちの9種類はヒトのカラダでは合成されず、必須アミノ酸と称します。この必須アミノ酸は必ず食事から摂取しなければなりません。我々の食事から一種類の必須アミノ酸でも不足すれば、ヒトのカラダのたんぱく質の合成はうまく進まず欠乏症状が出て参ります。発展途上国のうち、良質なたんぱく質や必須アミノ酸をうまく摂取できていない地域では、栄養不良が多くの成人や子供に散見されます。
 
 我々は10年以上にわたり国連大学の研究者と協力し、途上国で必須アミノ酸であるリジンの投与試験を行ないました。 この試験では、僅かな量のリジン(数百ミリグラム)の摂取で、栄養不良の学童の 体重や身長までもが増えるという驚くべき結果を得ました。 

 しかし必須アミノ酸の不足は、我々先進国の医療施設の入院患者にも認められています。例えば過去の例では、消化器がんの手術後、多くの患者さんは栄養不良状態に陥り、残念ながら少なからず死亡例が認められていました。しかし日本の先進企業の努力により、高度に純化したアミノ酸が生産され、これを用いた副作用の少ない手術後向け高カロリー輸液が世界中に広まり、手術後の死亡率は大幅に改善されました。 

 アミノ酸は味覚物質としても重要です。アミノ酸は、様々な自然界の動植物食品に含まれています。 特に昆布やトマトに多く含まれるアミノ酸であるグルタミン酸は、うま味物質として池田菊苗教授に見出されましたが、このグルタミン酸は味覚への貢献だけではなく、食欲を刺激し、胃や小腸の蠕動などの消化管機能を高めることが最近の医学研究でも解明され始めています。医療の領域ではアミノ酸の利用は日本、アメリカ、欧州でかなり進んでいます。
この他、アミノ酸はアスリートのコンディショニングや、畜産ビジネスに多様に活用され様々な貢献をしています。日本やアメリカのトップアスリートがアミノ酸を使って筋肉痛を予防したり、コンディショニングに役立てていることは、皆さんご存知でしょうか。
 
 またアミノ酸はヒトの皮膚に馴染み易い特性を活かし、お化粧品やシャンプー、石鹸など様々な香粧品原料にも活用されています。或いはアミノ酸の誘導体がパーソナルコンピューターの電子基盤など先端素材として利用されている事実をご存知の方は多くは無いと思います。

 これらアミノ酸の機能や産業上の応用研究で、日本人の研究者が果たした役割は少なくないと思います。またアミノ酸の生産においても、日本企業は世界的に極めて重要な役割を果たしております。 アミノ酸の産業上の応用と生産は日本の代表的な産業と考えて差し支え無いと考えております。このように科学が進歩を重ねることで、私たちの健康と生活の改善にアミノ酸が更に役立つことを私は願って止みません。
 21世紀はアミノ酸の世紀と、私は考えております。