卓話


イニシエイションスピーチ

2013年3月27日(水)の例会の卓話です。

眦菽2揃(掲載していません)
高橋 温君

相続と信託

三井住友信託銀行
相談役 高橋 温 君

 高齢社会を迎えてよく話題になる「相続」と、財産の管理・運用の仕組みである「信託」との関わりについて、お話させていただく。
1.遺言書の効用
 高齢社会となり、相続を巡るトラブルが増加している。しかし、「遺言書」をきちんと作成することにより親族間のトラブルを回避できる。

 家庭裁判所公表の「遺産分割事件」は、平成13年9,004件、平成23年10,793件(+1,789件、+約20%)、と相続争いは増加傾向を辿っている。

 生前に「遺言書」を準備しておくことの効用は2つある。
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 民法で法定相続分が定められているが、現実には不動産などすぐに換金できない資産もあり、遺産分割協議を行うことが一般的である。しっかりした遺言書があればトラブル回避の可能性が高まる。

被相続人の“思い”を盛り込み、自分の意思通りに資産を配分できる
 相続人・被相続人との親密度合いによる配分や、事業承継が発生する場合の後継者への相続分など、相続人の“意思”を、遺言書に盛り込むことができる。

2.遺言信託
 「遺言書」は、法的な条件を満たしていないと失効するため、条件に則った書式整備が必須。遺留分への配慮や、表現にも注意が必要である。つまり、遺言書作成には、民法、税務知識、不動産、資産運用等の広範な知識が求められる。

 一般の方にはアドバイスがないと作成することが難しいため、遺言書作成・執行サービスを行う「遺言信託」を活用される方が近年増えている。信託協会公表の「遺言執行付の保管件数」では、平成13年度末26,628件、平成23年度末70,155件(+163.5%、+43,527件増)と大幅に増加している。

3.平成25年度税制改正について
(1)相続税の課税強化
 平成25年度「税制改正大綱」では、相続税算出時の「基礎控除」が現在の60%の水準に引き下げられる。仮に相続人の数が、配偶者と子供2人の計3人の場合、現行制度では(定額控除5,000万円)+(1人当り1,000万円の法定相続人比例部分)×3人分=8,000万円であるが、新制度ではその6割の4,800万円となる。法案が成立すると、平成27年の相続から適用される。

 国税庁の統計では、2010年の相続税課税件数は約5万件(死亡者に占める比率約4%)。政府税制調査会の試算では、本改正により対象が1.5倍(約6%)に増加するため、7万5千件に増加(+2万5千件)。将来の相続税納付が必要と見込まれる世帯数は、現状4%、約91万件であるため、6%、約136万件(+45万件増)に増える。以上は全国ベースの試算であり、首都圏ではその比率は更に高まる。

(2)教育資金に関する贈与税の非課税措置
 「贈与税」では「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設」が予定されている。これは、祖父母が孫名義で口座を設定し、学費支払い等の目的で、将来必要分も含めて一括して拠出し、贈与すると、贈与税が非課税になる優遇措置。1人当り1,500万円が上限で、人数制限なし。法案が成立すれば本年4月1日からの贈与に適用される。

4.高齢社会と信託
 この制度では、祖父母の資産が金融機関を介してお孫さんに渡る。信託の仕組みも、委託者から受託者を経て受益者に渡る。

 「信託」は、委託者が定める信託目的、即ち、委託者の“思い”と共に、金銭等の財産の管理・運用を受託者に信じて託す制度である。委託者の“思い”に従い、第三者や社会が利益享受する形の利用も可能であり、この教育資金一括贈与制度は、信託のスキームが最もフィットする。

 私たちの暮らしを支える経済、社会の仕組みは、成長・発展を前提とするのではなく、“持続可能”であることを重視した制度設計に組み替えていく必要がある。今後は自分自身のみならず、世の為人の為、また、世代間の分かち合いを考えることも必要になる。

 私としては、信託に備わっている独自の機能が、高齢社会がもたらす課題を始め、様々な社会的課題の解決の為に活用でき、信託の機能を今まで以上に活用できる時代が来ている、という思いを強くしている。