卓話


イニシエーションスピーチ

2006年6月21日(水)の卓話です。

牛尾志朗君
原 良也君 

シネマコンプレックス
〜その現状とデジタル化に向けて〜

ウシオ電機(株) 
取締役常務執役員
牛尾 志朗 君

 最初にシネマコンプレックスとは何かと申しますと、通称シネコンと呼ばれていまして、同じ建物の中に5館以上の劇場を持つ映画館がシネコンと定義されています。

(日本のスクリーン数)
 日本のスクリーン数の経緯は、シネコンが登場した1993年が1、734スクリーンでここ50年間で最低を記録しましたが、その年を境に以降年々増加しています。
そして、2002年にはシネコンのスクリーン数が全スクリーンの半数を超え、以後その比率を増やし続けています。

 2005年末には2、926スクリーンとなり、今年5月には3、000スクリーンを越えたようですし、このまま推移すれば2007年ごろには3、500スクリーンぐらいまで増加するのではないかという見方もあるようです。

 ちなみにアメリカのスクリーン数は現在およそ3万8千スクリーン弱で、日本の2.2倍の人口に対しスクリーン数は12倍になり、それだけ映画が身近にあると言えると思います。

(シネコンの歴史)
 さてシネコンの歴史でございますが、シネコン第一号は、今から13年前の1993年にワーナーマイカルさんが神奈川県海老名に出したものがその第一号と言われています。

 それ以前にもシネコンの定義に適合する劇場はあったのですが、それまでの映画館とまったく違う雰囲気の施設作り、また夜9時以降に最終上映を行う「レイトショー」というスタイルも、このシネコンの普及により定着していきました。

 シネコンがはじめて登場したころは、映画館の無い地方都市や郊外ロードサイドに商業施設とセットで展開され、それまで駅前の映画館が主流だった日本の映画業界では「おそらくシネコンは日本では定着しないだろう」という見方が大半でした。

 しかし、市場の予想に反してシネコンは、観客動員数を急速に伸ばし続けてきました。

(シネコンの特長)
 さて次にシネコンの施設としての特長についてお話したいと思います。

 1つ目に、同じ場所で複数の作品を上映しているので、選択肢が広がるということがあげられます。また、作品の人気に応じて、複数のシアターで上映が可能なため、わざわざ出かけたのに、お目当ての作品が見られなかったという事も以前に比べれば少なくなりました。

 2つめに、客席がスタジアム形式で視認性が良く、ゆとりのあるシートを採用しているなど、映画を見る環境に配慮している点があげられます。また最新の映写・音響設備を備え、家庭では体験できない迫力を味わうことが出来るわけです。

(デジタルシネマとは)
 デジタルシネマとは、フィルムを使わずにすべてデジタルで映画を上映するシステムですが、フィルムを使わないことで製作コストを軽減でき、画質・音質の劣化がない等、メリットが多いといわれています。

 また、演劇やコンサート、スポーツ中継などフィルム以外のコンテンツも高画質で上映できることから、映画館の新たな活用方法として期待されています。

 その他、デジタルシネマシステムを使った3Dムービーが普及し始めていますし、過去の名作をデジタル技術により3D化する事も可能なため、コンテンツの有効活用として大いに期待されています。

(デジタルシネマの普及)
 映画本編を上映するための、高画質を要求されるハイエンドモデルのデジタルシネマプロジェクターは、普及の伸びが鈍く2005年末現在、全世界で約1200台が設置されるに留まっています。内訳は、北米が580台、ヨーロッパで340台、アジアで280台となっており、その内日本ではまだわずか52台が設置されているに過ぎません。

(普及の為の新たな取り組み)
 アメリカでは、デジタルシネマを普及させるために、デジタル化により不用になるフィルム代を機器の費用にあて、劇場の設備投資に対する負担を軽減するスキームが立ち上がり、実績を作り始めております。

 日本においても、今後デジタルシネマ普及のために、従来に無いいろんな取り組みがなされるものと思われます。

資本市場のミッション

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取締役会長
 原  良 也 君

 今、もっとも株式の動向を気にしている人は、小泉首相ではないでしょうか。小泉構造
改革内閣の一番の政治スローガンは、「改革なくして成長なし」です。そして、国の成長を最も判り易く表すのが株価市場だからです。

 小泉政権が掲げた構造改革の中身は、「小さな政府」を作り上げて、「官から民へ」と、企業が社会の問題を解決していくような企業中心の社会、経済を実現し、そこに「貯蓄から投資へ」という、生きたお金の流れを作っていくことで、日本経済そのものの活性化と企業の競争力強化を実現することでした。

 構造改革には、金融構造改革や三大過剰を解消する改革に加えて、企業経営のガバナンス改革もありました。企業中心の社会を作るためには、長期的に企業自体が成長力、競争力を持つ必要があります。

 実際、失われた十余年の間に多くの企業が経営改革を行いガバナンスは改善されました。昨年の株価上昇の牽引役は外国人投資家でしたが、企業の収益性改善とともに、ガバナンスの改善を評価した結果、大幅な買い越しになったと見られます。

 さて、「貯蓄から投資へ」は、日本の個人金融資産をいかに活性化させるかの政策に他ありません。これは資本市場の活性化と連動しており、市場活性化を実現することが市場関係者の役割、使命だと考えています。さらに言えば、「官から民へ」の政策でも、郵貯の民営化や政府系金融機関の統合、国有財産の証券化等にも全て資本市場が関っています。資本市場が正常に機能しなければ小さな政府改革も成功しません。ここでも資本市場の役割は極めて大きいといえます。

 しかし、現在、構造改革は道半ばです。株価もポスト小泉が誰になるかを非常に気にしています。もしも改革の速度を緩めたり止めるような人が就任したら、資本市場と株価にはプラスにならないと思います。

 日本の長期的な国家財政状況にとって、これからの5年間は極めて重要な正念場です。この構造改革の成否で日本の将来の位置付けが左右されます。それには、公正で分厚い資本市場の存在は欠かせません。小さな政府の時代に、企業が牽引する持続的な経済成長とそれを支える長期の資本市場の発展こそ、財政赤字問題、公的年金問題等の日本の抱える構造問題解決の王道であると思うからです。

 ところで、最近の資本市場を取巻く問題は、資本市場そのものが真に公正で先進的な市場に移行する過程での産みの苦しみであり、克服しなければならないハードルだと思います。マイケルポーター教授は、昔、その市場に携る証券業は失敗産業と言っていました。本来、限りなく規制が低く保護が少ない自由競争の中で、自己責任原則の下で自由闊達に展開すべき産業にも関らず、行政の保護規制に守られた産業で、製造業と比べて競争力が低い状態だったからです。証券業者がそうだったように、資本市場そのものも競争力の低い状態で、複雑な規制があり、欧米市場に比べて後進的でした。

 本来、資本主義経済は、自由競争の中で自己責任をもって展開されるため、マックスウエーバーの言うように潔癖な倫理観がなければ成り立たないものです。今回の商法改正でも、市場経済のフラット化、グローバル化に対応し、本邦企業が国際競争力を高めるために、規制や制度が大幅に緩和されました。しかし、それと同時に企業にも自己責任において内部統制を強化し、何が適正でモラルに反していないかを判断する高い倫理観や常識が求められています。

 我々、資本市場に関る全ての関係者が、この趣旨に沿ってビジネスを展開し、信頼できる充実した資本市場を作り上げることが、今以上求められたことは無かったと思います。

 このように日本経済の持続的発展の成否は、資本市場のサスティナビリティーにかかっているといっても過言ではありません。我々資本市場に関る者の持つ使命と責任は、限りなく大きいと思っております。