卓話


経営コンサルタントの歴史と役割

2020年8月19日(水)

(株)ビー・アンド・イー・ディレクションズ
会長 塩見崇夫君


 コンサルタントを生業としてビジネス化されたのは、米国19世紀末期から20世紀初頭にかけての頃です。当時の米国は自動車業界のフォードに代表される様に、受注生産方式から大量生産方式へ移行する時代であり、経済成長、所得上昇、市場規模拡大などを背景に大量生産に伴う生産コストの低減が経営の中心的な課題となっていた、といわれています。

   その頃、フレディック・テイラーといわれる人物が、様々な業界で科学的管理手法の在り方を説き、所謂、工場運営の効率化を目指すコンサルティング活動を行ったことが始まり、とされています。その後、20世紀に入りますと、更に経済が成長し社会が豊かになるにつれて消費者のニーズも多様化してきます。ただ製品を大量に作るだけではなく、市場の変化に適合して行く為に戦略的な考えが必要な世の中に移り変わって行きます。その頃には、コンサルタントのニーズも高まり、現在もグローバルで展開されている著名なコンサルティング・ファームが数々生まれ始めました。

   日本でのコンサルタント業の草分けは、1942年に設立された日本能率協会といわれていますが、本格的になって来たのは、日本の高度成長期が続いていた1960年代の後半です。米国大手のコンサルタントファームの日本への進出が活発化した頃と重なります。その後は、コンピューターの大幅な性能向上に伴い、多くの企業が会計業務をコンピューター化して行く過程で、コンサルティング業務そのものが日本でも少しずつ浸透して行きました。

 70年代から80年代にかけては、次々と新たなコンサルタント会社が設立され、著名なコンサルタントの登場と共に存在感も増幅されて、日本に於けるコンサルタントビジネスは、バブル崩壊後の90年代に入りますと徐々に花が咲き始めます。その背景としては、企業に於ける選択と集中を実現する戦略作り、更には、金融ビッグバンを始めとした大掛かりな規制緩和の動き、グローバル化への対応、様々な場面でのコンピューター化の加速など、従来の経営基盤が揺らぐような大きな変革期を迎えたからではないか、と想像します。

 ただ、順調に伸びて来た当業界も、近年、,客様側のインテリジェンスレベルの向上、業界そのものの人材面の構造変化、B仂櫃箸垢觧纏の位置づけやサービス価値の違い、などの理由で取り巻く環境が大きく変わり始めていると感じています。それらの視点から、今後のコンサルティング業務に於いて、あるべき姿とは何か。コンサルタントの仕事の本質は、「考えること」にあることは変わりがないと思います。但し、幾ら良い考えでも、それを実行しなければ価値は生まれません。コンサルタントの価値・評価は、戦略を策定して、実行して、更に期待を上回る結果を創出することに掛かっている様に思われます。

 次に、具体的には、どの様なことが求められるか。一つには、その企業だけでは普段繋げられない異なる業界の人々や企業体と結びつける役割があると思います。それによって、戦略が実際の行動へ移されたり、描いた姿の実現が加速されることもある、と思います。経済学者シュンペーターも、「イノベーションの源とは、新結合である」と指摘しています。これまでと全く異質のものに繋がることは、自らの力だけでは容易ではありません。コンサルタント個人乃至はコンサルティング企業が保有する広いネットワークを通じることで異質のものを紹介する。それによって、人が動き、新しい繋がりが生まれ、その結果、新しい何かが生まれる可能性が出て来る、その様なことが実現出来れば、その先に素晴らしい世界が広がる様な気が致します。

 従い、コンサルタントの提供する価値の源泉は、知識や知恵もさることながら、結果創出につながるネットワークなど「異質のものをつなげていく力」を、これまで以上に備えていかなければならないということです。