卓話


イニシエーションスピーチ

2007年9月12日(水)の例会の卓話です。

羽鳥嘉彌君・河相董君 

羊の背中に乗って伝播したヨーロッパ文明
 パンとバターとワインとキリスト教
 
(株)ダイドーリミテッド
代表取締役会長 
羽鳥嘉彌君

 イラクの現状は目を覆うばかりの惨状を呈しておりますが、5000年前はチグリス川とユーフラテス川に囲まれた肥沃の土地で、世界四大文明の一つメソポタミア文明の地であり、またヨーロッパ文明の源流の地でもあったのです。


 メソポタミアが原産と言われる食品には、小麦=パン、ブドウ=ワイン、羊乳から採れるバター、チーズ等の優れたものがあります。そして羊毛から作られる、暖かい衣類やカーペットによって人々は、豊かな衣食の生活文明をエンジョイしておりました。西ヨーロッパの深い森の中で暮らす未開の人々の暮らしとは比べようも無い豊かなものであったと思われます。
日本はといえば、まだ稲作文明以前の縄文の時代であります。

 イラクに隣接した現在のアラブ世界のアフガニスタン、トルコ、シリア、イラン、パキスタン、レバノン、ヨルダン等も文明の水準に於いて近いものであったと想像されます。

 また西の方アフリカ大陸北部のナイル川流域には、四大文明の一つエジプト文明が独自の発展をとげておりました。こちらでは、綿花や、パピルスを原料とした紙の技術、ピラミッドを建造したような大規模土木工学が発展しておりました。

 これらメソポタミア文明とエジプト文明をつなぐ交易の中間地帯イスラエルに、3000年ほど前、ダビデ王に率いられたユダヤ民族が移り住み、古代ユダヤ国を造り、大いに発展、繁栄を続けました。時はずっと下って約1000年後の西暦73年、その時最盛期を迎えていた古代ローマ軍の侵攻を受け、マサダの丘の戦に破れ、イスラエル軍は壊滅されました。パックスロマーナの時代であります。そして、ローマ帝国はイスラエルの地をパレスチナと改称させました。ローマがイスラエルをパレスチナと改称させたのであります。これら二つは同物異名(異名同物)の関係であります。

 その後1900年間という長い年月、ユダヤ人は地中海世界を中心に、ヨーロッパを放浪する身となったのであります。200年前からは自由の新天地アメリカに多くのユダヤ人が住むようになりました。そして第二次大戦後の1948年米英両国の手厚い支援を受けたユダヤ人は、パレスチナの地の大部分に再びイスラエル国を創ったのであります。現在のイスラエル、パレスチナ紛争は、ここに端を発したのであります。

 現在全世界に居住するユダヤ人は1500万人で、その内訳は、イスラエルに600万人、アメリカに700万人、ヨーロッパ全域とロシアに200万人であります。

 話は戻りまして、古代ユダヤ滅亡と前後して、ユダヤ人でありますキリストによってキリスト教が興りました。そして西暦30年頃キリストの死後、使徒パウロを先頭に、この新しい宗教は地中海世界を西に進んで行きます。そしてなんとキリストを磔の刑に処した覇権国、古代ローマの国教となったのであります。勿論、パンもバターもチーズもワインも羊毛と共にイタリア半島に運ばれました。やがてアルプスを越えて森の国西ヨーロッパからブリテン島まで遠征したローマ軍と共に、キリスト教も広まっていったのであります。驚嘆すべき伝道力の偉大さであります。
そして、この伝道を下から支えるものとして、森の人達を歓喜させたに違いないパンやワインや羊毛製品の豊かな生活文化があったればこそと思うのであります。60年前アメリカ占領下において、ホットドッグやコカコーラと共にアメリカンデモクラシーというドクトリンが日本に浸透していった事が思い起されます。

 更に下って、中世から近世にかけて、羊毛とワインの品質改良は著しく進みました。その結果、ぶどうの苗と種羊はヨーロッパの王朝間の戦略的な取引の具や、婚姻の引出物として使われるようになりました。メディチ家の姫がブルボン家に嫁入りの折、持参したぶどうの苗が、ボルドーにその名を伝えております。

 一方、羊の方は、イベリア半島において傑出した羊毛のメリノ種が完成しました。国王フェリペ2世の頃、当時オランダ領であった、南アフリカに移殖され、更に英国領に変わった後、同じ英国領のオーストラリアに移りました。およそ200年前の事であります。4000年の長い旅の末、現在の羊毛大国オーストラリアに終着点を見つけたのであります。

 以上、ヨーロッパの衣食のスタイルは、メソポタミアから羊の背中に乗ってキリスト教と共にもたらされたものであります。イラクの現状を見るにこの間の歴史の転換に感慨を催さずにはいられません。

 後日談になりますが、ヨーロッパ人に更なる食の豊かさをもたらしたものは、コロンブスであります。15〜16世紀の大航海の時代、中南米から運ばれたものは、ポテト、とうもろこし、トマト、砂糖、コーヒー、タバコであり、就中、ポテトは重要でありまして、小麦の育ちにくいドイツ、イギリス、北欧の人々を飢から救って今日に至っております。

蛇足ではありますが、悪しきものの方が伝達スピードは早いらしく、コロンブスの航海から100年後にはタバコとスピロヘーターが平戸に姿を現したという記録があります。

 以上、3000年の間に地中海世界に興り、亡びた主役達、即ちメソポタミア北部に栄えたアッシリア帝国や南に栄えたバビロニアも、一時古代イスラエルを支配したアレキサンダーの事も7世紀にムハマドによって興り、東ローマ即ちビザンチンを亡ぼして、あっと言う間に地中海世界を支配した古代イスラム帝国(サラセン帝国とも言います)も、近世ヨーロッパに亡ぼされるまで、地中海世界に数百年間、威勢を誇ったオスマントルコの事も全て省略して、羊とパンとワインとキリスト教の4点に絞ったショートヒストリーをご紹介申しあげた次第でございます。                            

ネット証券と個人投資家

マネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社
常勤監査役  
河相 董君

1.ネット証券の生い立ち

 現在、SBIイートレード証券、松井証券、カブ・ドットコム証券、楽天証券、それにマネックス証券がネット専業5社と言われています。これらの会社は総て1999年に証券の完全自由化、特に手数料の自由化が行われ、その年の10月から各証券会社が自由に決められるようになったのを機に設立されました。

 ネット専業証券と云うのは、基本的にはインターネットを通じてのみ株式等の売買を行っている証券会社で、支店、営業所、営業担当者を持たず、所謂売込みは一切行いません。
ネット専業証券会社の最大の強みはシステム構築の為の初期投資以外のコストが低い為、低い手数料を提供できることです。

 例えば1999年10月1日以前の約定代金100万円の場合の売買手数料は、11,500円であったものが、現在では約定金額10万円以下は無料、50万円の場合は400円から1,000円の間、100万円の場合は最も低いものは750円迄下がっております。一日の間に何回取引をしても手数料は定額と云うのもあります。

 このような手数料の急激な値下がりは、それまで株式投資を行っていなかった層を株式投資に誘導し、一日の内に何回も売買を繰り返す、回転売買を行う個人投資家も多く生み出しました。

2.ネット証券の現状

 ネット証券5社の今年7月末現在の口座数は合計約420万口座位で、これに野村證券のネット専業子会社、ジョインベスト証券を加えた6社が東証3市場及びジャスダックの合計個人売買代金に占める割合は約70%に達しており、インターネットを経由した取引全体では90%弱に達しています。

 東証3市場の株式売買代金に個人投資家の占める割合は2005年12月には30%を越えました。その後、ライブドアショック後20%程度に低下しましたが、最近は20数パーセントまで回復しています。

 政府は、「貯蓄から投資へ」と云うことで、個人の資産をより多く株式等の投資へ導こうとしています。現在、日本の家計の資産構成に占める現預金の割合は50%と、米国の13%に比べると非常に高く、一方、株式、投資信託、債券、等の割合は逆に日本が19%、米国が52%となっています。従って、今後も個人の資産が現預金から株式・投資信託にシフトする可能性は非常に高いと思われます。実際に2006年度末の個人株主数は前年度より120万人増えて3,928万人になっていますし、株式投資信託の残高も2007年6月末現在68兆円と、1年前に比べ約20兆円増加しています。

3.ネット証券の今後
 ライブドアショックを機に、2006年1月には2兆3000億円近くあった東証3市場及びジャスダックの1日当りの個人売買代金は半分以下に減少し、現在もまだピークの60%を下回っています。新興市場はライブドア事件以降低迷が続き、新興3市場の売買代金はピーク時の1割程度の水準に留まっています。

 新規開設口座の数もかなり減少し、ネット証券会社同士の手数料引き下げ競争も限界に達し、各社ともこのまま成長を続けることは困難な状況になっています。

 今後はただ単に安い手数料を提供して行くだけで生き残ることは難しくなりつつあり、ネット証券会社同士の吸収、合併も起きるかもしれません。株式等の売買から、資産管理にシフトする会社もあるかもしれません。しかし、最終的にネット証券会社が目指す方向は、個人投資家を対象に独自のサービスや情報、商品を提供して行くことだろうと思われます。

 投資教育と個人投資家に合った商品の提供が特に重要になると思われます。
インターネットを利用して証券以外の銀行、保険、と云った業務を含めた総合個人金融サービス業を目指すところも出るかもしれません。

 ネット証券には自ずと限界はあるものの、対面の証券会社にない強みもあり、特に個人投資家にとっては有用なサービスとして今後も役割を担って行くものと予想されます。