卓話


なぜ人は身を飾るのか?−ジュエリーの価値について−

2019年1月23日(水)

ウエダジュエラー
代表取締役社長 植田友宏君


 ジュエリーと言うとほとんどの女性が目を輝かせ、ほとんどの男性の目が曇ります。これほど男女間で反応が違う商品は無いのではないでしょうか?使って楽しむのが女性でお支払いするのは男性と言う違いもあるのかもしれませんが、ジュエリー=贅沢品、富の象徴、自慢して見せびらかすものと言う誤解が大きいのだと思います。本日の内容は1つ目になぜ人は身を飾るのか?2つ目にどの様なジュエリーに資産価値があるのか?3つ目に日本のジュエリーマーケットの現状の3点に絞ってお話をさせて頂ければと思います。

 世界最古のジュエリー・装身具は一体何年前のものだと思われるでしょうか?2004年に南アフリカの洞窟で発掘された約7万5,000年前の貝殻のビーズが世界最古と言われています。世界各国の遺跡から出土する遺物に装身具が全く出ない遺跡と言うのは殆ど無いと言える程、人類にとって装身具・ジュエリーは最古の道具のひとつ、と言えます。何故人は身を飾るのでしょうか?その理由は大きく分けて4つあると言われています。

 1.護符説。2.ホモ・ルーデンス説。3.自己異化説。4.自己同化説です。
 最近の脳科学の研究によると、前頭前野腹内側部の小さな神経細胞の一群の動きが美しいものをみると、刺激され、自動的にそれをつかみたくなる、と言う衝動にかられ、倫理的な判断力が低下する事がわかって来ました。とびきり美しいもの、ジュエリーで身を飾りたい、と言う欲求は心の反応だけでなく、体の反応でもあります。従いまして、人がなぜ身を飾るのか?と言う疑問への答えは美しいものを身に着ける事は生命力の象徴を身に着けたい、と言う人間の生存本能から来ているのだと思います。

 2017年、香港のオークションで59.60ctのピンクダイヤモンドリングが約80億円で宝石オークションの世界記録で落札され驚かれました。それでは、どの様なジュエリーに資産価値があるのでしょうか?宝石の単位として用いられるキャラット(ct)は重さの単位で、1ctは0.2gです。ということは5ctでやっと1gということになります。例えば、ダイヤモンドで5ctの最高級品質のDカラーフローレスの場合、1ctあたりの価格は約1,500万円です。一般的に希少性が高く、資産価値が高いダイヤモンドはグレードにもよりますが、5ct以上と言われています。

 宝石の中で何らかの客観的判断基準があるのはダイヤモンドだけです。他に価値が高いものがカラーストーンです。カラーストーンにはダイヤモンドにおける客観的な基準が存在しないため、その評価には大変幅があり、品質と産地、大きさが非常に重要です。ジュエリーの資産価値を決定するのは希少性ですが、珍しさだけでは無く、「美しさ」こそが価値の根底にあると思います。

 戦後の復興期から日本は高度成長期によって、あっと言う間に米国に次ぐ世界第二位のジュエリーマーケットが形成されました。それはバブル崩壊後、中国の台頭まで続きました。ジュエリーマーケットは1/3となりましたが約1兆円の規模があります。多くの日本人が海外旅行に出、殆どの海外ブランドが日本に進出し、ジュエリー文化に触れる機会が増え、成熟したマーケットになって来るにつれ、二極化が進んでいる様な気がいたします。働く女性が増えた事により、日常使いしやすいアクセサリーマーケットと本来ジュエリーが持っている価値、資産価値や精神的価値の高いジュエリーマーケットです。後者は、代々親から子へ孫へ、と言う欧米的な良いものを永く受け継いでいくリフォーム等のサービスを提供出来る専門店の役割が益々重要になって来ていると言えます。 人類史とほぼ同じ長い歴史のジュエリーについてまだまだ語りつくせぬ事が沢山ございますが、結論としましては「美しいものは人を幸せにする」、と思います。