卓話


世界に誇れる日本の美点? 日本的なグローバル化を目指して

2014年4月23日(水)

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代表取締役 ルース・ジャーマン・白石 氏


 私は1988年にリクルートに入社した時から、日本企業以外で働いたことはありません。そのなかで、延べ4万人のいろいろな国からの外国人と関わることができ、日本に対する質問を沢山受けながら、日本のいいところがより深く見えるようになってきました。外国人の立場から見た「日本の国際化」について毎日実感していることと、私はハワイ出身ですので、観光誘致によってハワイがどのように変化したのかなどハワイの経験を基に日本のグローバル化について考えたいと思います。

 私が外国人向けサービスアパートメントを提供するスペースデザインにいた当時に撮ったマーケティング用の写真があります。着物を着た女性のうち右端が私で、他に秋田出身の日本人、カルカッタ出身のインド人が写っています。海外に対して、「国際色豊かな人たちが、国際色豊かな人たちに日本の心でおもてなしをする」というイメージを伝えようとしたものです。当然ですが、着物を着ていても中身は日本人にはなりません。私が考えるベストなグローバル化のやり方は、元々あるアイデンティティに海外のものを付け加えることによって、より豊富な人間になるということです。私はこの27年間、実際に日本のいいところを沢山見て、自分のものにし、自分の子どもの教育にも導入してきました。何かを犠牲にしたり、何かが薄くなったりということではありません。

 1988年当時と現在とを比べ、外国人から見た日本の国際化について3つの例を挙げます。

 一つは私の大好きなマクドナルドです。1988年当時、新橋を歩いていても他に外国人はほとんど見かけませんでした。リクルートのアメフトのチアリーダーをやり、仲間がいて楽しく過ごしていたのですが、私は日本語が話せず、時々ホームシックになりました。そんな時、銀座8丁目にマクドナルドがオープンしました。絶対英語も通じて大好きなハンバーガーが食べられると期待いっぱいでお店に入りました。するとカウンターの向こうの店員さんが私を見て、「英語、やばい」と逃げるようなそぶりをしました。英語のメニューがなく、まったく言葉が通じず、私という外国人を避けるような感じでした。現在、新橋のSL広場の近くにあるマクドナルドに行くと、カウンターの向こうには外国人が立っていて、「コーヒーおいしいですよ。どうぞいらっしゃいませ」とペラペラの日本語でインド人が言います。27年間でそう変わりました。

 もう一つはタクシーです。当時、タクシーに乗り、「オオテマチマデオネガイシマス」と言うと、それだけで運転手さんは「ものすごく日本語上手ですね。素晴らしいですね」とほめてくれたのですが、今、「申し訳ありませんが、近距離ですが大手町までお願いできますか?」と言うと、運転手さんは、「あなたの日本語の発音は先日乗ったロシア人に比べて悪いよ」と比較されます。このように現場にどんどん外国人が入ってきています。

 さらに大きな変化としては、当時私は東西線の南行徳駅の近くのリクルートの女子寮に住んでいました。まだ日本語が読めず、話もできなかったのですが、金曜日の夜遅くJR新橋駅の路線図の前で、東西線の南行徳の駅を探していました。そうすると、顔を赤くした陽気な雰囲気のサラリーマンたちが来て、「助けてくれるかな?」と少し期待していたところ、そのうちの1人が手にペンを持って走ってきて、「This is a pen!」と言うと逃げていきました。今は、券売機の前で少し戸惑っているだけで、すぐに「May I help you?」や「どうしたのですか?」と聞かれます。周りの日本人が私と関わろうとしていることを実感しています。

 国際化が進むなか、日本にある美しいもの、日本人が持っている素晴らしいところを再度自覚し、そのアイデンティティを守りつつ国際化をしていくことが必要だと思います。特に若い人たちにそうしてほしい。そのために『日本人が世界に誇れる33のこと』(あさ出版)を書かせていただきました。 http://www.amazon.co.jp/日本人が世界に誇れる33のこと-ルース・ジャーマン・白石 /

 本を読んだ20代、30代の人たちからもらった言葉は「思い出しました」です。良かった、まだ思い出してもらえる時期なのです。

 著書から5つの例を紹介します。以前、日本プレスセンタービルで12年間働きました。ある時、エレベーターホールに行くと、「落とし物のお知らせ。中身、現金」という貼紙があり、とても驚きました。いろいろ想像してみると、夜遅い時間に誰かがエレベーターに乗った際に現金を落とし、気づかずに帰った。その後、乗った人がお金を拾い、きちんと管理人室に届けた。管理人はその落とし物について帳簿に記録し、貼紙をした。落とした本人ではない人が名乗り出るということもなく、実際にお金を落とした人が気づいて管理人室に行き、金額と落とした時刻を言えば、おそらく管理人さんは、お金の入ったきちんと封をした封筒をきっと渡したと思います。このような信頼の深い日本を継続できるよう、私たちは、なぜそれができているのかを皆で考えていかなければならないと思います。

 また、多くの駅に生け花が飾られています。ケースに入っていて、お母さんたちが順番で生けています。私の最寄り駅は保土ヶ谷駅で、この方たちの展示会に行ったところ、駅の生け花を30年間当番でずっと継続しているということでした。日本のビジネスも、大前提として、継続するおつきあいとして行うというところが非常に重要だと思います。他の国に行くと、「とりあえずこのプロジェクト」「とりあえずこの仕事」ということもあると思いますが、私が経験した日本は、基本的に継続することを前提におつきあいを開始するところ、継続させる力が素晴らしいと思います。

 それから、即答しないところです。以前、日本企業といいビジネスをしたいというインド企業に研修をするために通いました。その時にインド企業の皆さんが言っていたのは、「会議に入っても日本側に話してもらえない」「すぐにイエス・ノーを言ってもらえない」ということでした。いつも私は、「即答しないところが日本の強みですよ」と話しました。日本企業はすぐに答えませんが、答えを出したら徹底的に最後までやるという話をしています。実際に経験しないとわかってもらえませんが、「遅い」「決断できない」というのは誤解で、即答しないところを大事にしたいと思います。

 また、海外に行くと、車のクラクションをよく耳にすると思います。今、観光誘致の仕事もしていて、外国人に聞くと、「東京は静かな町だ」と皆言います。あまりクラクションの音がないからです。タクシーの運転手さんは、信号が青に変わっても前の車が動かない時にすぐにはクラクションを鳴らしません。私がなぜ待っているのかと尋ねると、前の車の運転手が高齢の方だったりすると驚いて事故になるかもしれない、あるいは隣両側の車が動き出したら気づくだろうと言います。周りに迷惑をかけない、周りのことを考えた上での行動は重要なことで、この思いやりのある日本の精神を大事にしたいと思います。

 そして、感謝中心の行動です。日本には、「すみません」「ありがとう」「恐縮です」「恐れ入ります」「助かりました」「お世話になりました」「ごちそうさまでした」「お疲れさまでした」と感謝を表現する言葉が様々あり、いつもこうした表現を大事にしている日本は本当に素敵で、大好きです。

 最後になりますが、ぜひ皆さんの会社の若い人たちに本当のグローバル化を果たすために次のメッセージを伝えて下さい。

 まず、自分たちのいいところを自覚する。クールジャパンと言われるように、日本が世界からどんなに愛されているか、カッコイイと思われているのか、私たちが持っているいいところは何かを自覚すること。

 次のステップとして、それにこだわること。先日汐留の駅で構内を走りながらおにぎりを食べている日本人ビジネスマンを見て「行儀悪いですよ」と言いたくなりました。日本人の行儀の良さなど、いいところにこだわるようにしましょう。

 そして、それを徹底的に実行します。たまにグリーン車に乗りますが、以前は席を倒す時に後ろの人に声をかけるのが普通でしたが、最近、声をかけない人が増えました。私はグリーン車に乗ると、いずれ皆がやってくれるように、周りに聞こえる大きな声で「倒してもいいですか」と言うようにしています。

 それから、私たちの誇れるところをきちんと説明できるように、言語化することが大事です。

 その後になりますが、先方の良いところを研究して吸収し、美しい海外の文化を着物のように自分の身に加えて、より豊富な人間にしていくということが本当の国際化だと思います。ぜひ一緒に目指していきましょう。