卓話


イニシエイションスピーチ

2008年11月26日(水)の例会の卓話です。

山中信義君,富澤秀機君 

経営者として教育に貢献できるか?

蠧本コンラックス
代表取締役会長 山中信義君

同友会活動でのきっかけ:

 現在に至る私の一連の仕事、海外での生活(20年近く)を通して、日本の将来を語るとき、もっとも重要な軸足が“人”つまり“教育”ではないかと考えるにいたりました。自分の経験、さらに、経営者という軸足で、何か、教育にご支援できないかと思っているとき、経済同友会で、“学校と企業、経営者の交流活動推進委員会”の存在を知り、参加することにしました。すでに、ここ5年間ほど、この活動に関与し、運営のご支援をさせてもらっています。本日は、私がいま深く関与している、この活動のご紹介をさせていただきます。

学校と企業、経営者の交流活動推進委員会:

 現在、経済同友会の会員であることが条件ですが、委員長・副委員長9名と委員総数117名という所帯で運営しておりますのが、この活動です。2001年に教育委員会が“学校と企業の一層の相互交流を目指して、企業経営者による教育現場への積極的な参画を”と提言したことで開始した委員会です。目的は、さまざまな課題を抱えるわが国の学校教育の改革推進に寄与することで、生徒には、(1)職業観の育成に貢献し、(2)将来について考えるきっかけを作ること。教師に対しては、(1)社会の変化に即した変革を促し、(2)学校現場にエールを送り、(3)企業経営者として学校経営改革を支援すること。保護者に対しては、企業や社会の変化を伝えることです。

 2007年は、出張授業を80件、延べ206名の同友会経営者が講師として教育の現場に赴き、クラスを担当しました。また、講演会、研修会、懇談会などふくめ、総合計142件、延べ285名の講師が参画しました。1999年からの合計では、実に、800件弱、延べ1500名弱に上ります。我々が、自分の経験を通し学んだこと、感じたこと、知ってもらいたいこと、将来について考えたことなどを率直に、生徒、教員、保護者に語り、意識と現場の変革を促しています。

 伝えたいメッセージは、基本的には、個人の自由ですが、本委員会の共通課題は以下となっています。生徒に関しては、(1)働くことの意義、(2)学ぶことの大切さ、(3)人として大切なことなどです。

 将来があり、今後、無限の可能性を秘めている彼らのポテンシャルを使い切ってほしいという切な願いから、人生の先輩として、また、経営者として、自分の信じるところを、ストレートに、語りかけ、話し合っています。

 これは大変新鮮な経験です。生徒の目が輝き、将来に思いをはせ考え出す姿も印象的です。語ったこと全てを理解してもらえることは無理でしょうが、その中で、ひとつでも、二つでも、記憶に残り、彼らが将来、大切な人生とか職業の選択をするとき、思い出してもらい、結果的によりよいものにしてもらえると考えるだけでも、ワクワクしてきます。

 私の実体験ですが、今の子供も、昔の子供も、純粋です。若いころに、我々、大人がもつ大きな世界観、社会観から、彼らに語りかけ、将来をよりよいものに変革できるように、支援することは大いに意義のあることと考えています。小学校、中学校、高校を対象として活動させてもらっています。毎回、出張授業のあと、生徒たちの感想文を受け取るのですが、そのとき、彼らがどう感じたか、何を学んでくれたか、なにに心を打たれたか、何に賛同できなかったかなど、生徒からのフィードバックがあります。これも、非常に楽しみです。

 全ては、学校から同友会の事務局に出張授業を依頼していただくことから始まります。活動内容は同友会のHPに載せております。本日は、経済同友会のハンドブックを準備させて頂いております。是非、お目通し頂き、その趣旨にご賛同いただく方は、ご存知の学校の先生に紹介いただければ幸いです。

テレビとデジタル化の波

テレビ大阪
代表取締役会長 富澤秀機君

 古代帝政ローマの末期に、プラデスという喜劇役者がいました。大衆の人気はそこそこあったのですが、演技が大げさなので、時の皇帝だったアウグストスがその事をなじる場面があったといいます。すると、当のプラデスが答えて曰く。「陛下、人民がわれわれの芝居を見て面白がり、暇つぶしをしている方が政治をつかさどる陛下にとって好都合じゃないですか」(ポール・ヴェーヌ「パンと競技場」に出てくる話)

 満ち足りた市民は「パンとサーカス」、即ち日常生活の満足と娯楽・快楽という麻薬が好きなのです。

 政治権力者の側から言っても、国民がやたらと政治に口を出すのはうれしくないし、何処かの農水大臣のようについつい「消費者はやかましい」という事になってしまう。しかし、その結果はどうなるか。市民の政治的無関心が次第に国力を弱体化し、ついにはローマ帝国の滅亡の一因となって行ったわけです。

 最近のテレビ番組を見ていると、一番目立つのは報道と情報・娯楽の混在、というか、「政治の芸能化」ではないか。なぜ、テレビには普通のマトモな人が登場しないで、お笑い芸人ばかりが出てくるのか。なぜ、どのチャンネルも同じような番組なのか。

 「50年、テレビが生んだ総白痴!」という投稿川柳を見たことがあります。

 電通の「日本の広告費」によると全体で6兆円の広告費のうち、テレビが2兆円強、新聞が1兆円弱、雑誌5000億円、ラジオ1750億円、インターネット広告費3600億円という内訳となっています。日本のマスメデイアでは、永らく新聞がナンバーワンの座を占めてきました。収入の面でも新聞がずっと王者だった。ところが、1975年に民放テレビの広告収入は、新聞を上回りました。21世紀に入って、新聞の販売、広告を合わせた金額もテレビが抜き去った。06年で見ると、新聞、民放テレビの総売上高はともに2兆4千億円。NHK(予算6700億円)を含めれば、テレビはすでに新聞の総収入をはるかに上回って間違いなくナンバーワンのメデイアとなっています。

 しかも、テレビは全く脈絡なく情報を垂れ流しますから、受け手の方も主観的・感覚的になり、「面白いか、面白くないか」という基準が幅を利かせるようになります。そうなると番組の作り手の方も、視聴者に媚びへつらう迎合主義となり、企画も、出演者の顔ぶれも似たり寄ったり。食べ物やクイズなど視聴率の取りやすい企画、お笑いタレントなど視聴率に貢献しそうな出演者、が重視されるから、どの局も押しなべて没個性的になります。
 
 2011年7月24日まで、あと3年(千日)を切りました。この日がアナログ放送停波の日と決まっています。この日に向けて2003年12月1日に東阪名地区で地デジがスタート、5年ほどが経過。テレビ局はいま、アナログ・デジタルの2つの波で同じ内容の放送を流しています。これをサイマル放送といっていますが、既に96%の地域でデジタル化を達成、2010年までに99%へもっていこうとしています。

 デジタル化設備投資に関する調査では、全国の民放テレビ127社で総額1兆400億円の投資が必要。1社当りでは82億円ですが、東京のキー局で225億円、大阪の準キー局で125億円、その他ローカル局で54億円の投資額ですが、これがいかに大変か。巨額の投資負担で民放、特にローカル局の経営基盤は急速に弱体化しています。

 もう一つの問題は、ここへ来て、まだ半数以上の世帯が「地デジ」といわれる地上デジタル放送対応の受信機を持っていない、つまり家庭サイドの準備が整っていないことです。アナログ放送終了時期の認知度は7割を超えていますが、受信機の普及台数はまだ4千万台(最終目標は1億台)に留まっています。このままだと、3年後に一部の家庭でテレビが映らなくなってパニックが起き、後期高齢者問題と同様な弱者切り捨て論が再燃するかも知れない。生活保護世帯に簡易型チューナーを無償配布したり、アンテナの改修も支援しなければならないでしょう。