卓話


ICUに於ける国際ロータリープログラムー世界7大学としての責任と自覚ー 

2006年11月1日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

国際基督教大学 学長
鈴木典比古氏 

 現在,RIは世界平和のために実践的に取り組む実務家を養成するという目的を掲げて2002年度から,「国際ロータリー・世界平和奨学生プログラム」という,2年間の大学院修士課程で平和の問題を研究するプログラムを実施しています。

 RIは,このプログラムの委託実施機関として世界の諸大学の中から,7校の大学を選びました。ICUは,アジア圏で唯一の大学として,この7校の一つに選ばれ,毎年10名前後の大学院生を受け入れております。

◆ICUロータリー平和センター設立の経緯
ICUは,1953年に世界平和と日本の再建を願って開学したキリスト教系の大学であります。平和を追求する若者を教育し,かつ平和研究を促進することが重要な目的のひとつでありました。開学以来,世界中で平和や紛争解決に貢献する人材を多数輩出してきております。

 一例として,国連は,事務総長をトップにして,いくつもの国際機関をその傘下に置いております。世界銀行,WTO,ユネスコ,ユニセフなどがありますが,その国際機関のトップを under secretary general,ナンバー2をassistant under secretary generalと呼んでおります。そして,彼らこそ本当の意味での国境なき世界のリーダーたちであります。その国連機関にICU出身者が,トップに1名,ナンバー2に4名おります。

 ICUは,方針としてこのような人材を育てようとする特別な努力をしているわけではありません。リベラル・アーツ教育に裏打ちされた人材が,自分のキャリアで自分の途を歩んだ結果がこのように結実したのであります。

 ICUでは,1963年に大学院行政学研究科を設置し,1991年に平和研究所を設置,同じ年に学部レベルで国際関係学科を設置しました。これらの学内プログラムを通して学生たちが学んでおり,彼らが先輩たちに続くものと確信しております。

 国際ロータリー財団は,1980年半ばから10数年にわたって,大学院レベルの平和教育の構想を追求していました。その構想は,先程述べましたように,世界で7つの大学を選び,その大学に「ロータリー世界平和センター」を設立して,修士レベルでの教育を委託するプログラムへと結実したのであります。

 ICU以外の大学は,米国カリフォルニア大学のバークレー校,ノースカロライナ大学とデューク大学の連合,オーストラリアのクイーンスランド大学,英国のブラッドフォード大学,フランスのパリ政治学院,アルゼンチンのサルバドール大学です。フランスのパリ政治学院は残念ながら,カリキュラムの維持が難しいという理由で,昨年このリストから外れましたので,現在は世界の6つの大学がこのプログラムに参加しております。

 ICUでは1999年に「ICUロータリー平和センター」を設立して,2002年度から「ロータリー世界平和奨学生」を毎年10名前後受け入れ,同センターでプログラムを運営しております。「ロータリー世界平和奨学生」は将来,平和と紛争解決の分野で大きな貢献をなすであろう潜在能力を基準にして選ばれております。奨学生は平和と紛争解決を専門とする職業に就く意思があることを示さなければなりません。

 奨学生は,派遣される大学で,地域のロータリークラブの活動に参加し、親善大使としての役割を果たすことも期待されています。

 奨学生は,在学中の2年間,ロータリー世界平和奨学金の給付を受け、ICUの教員であるアドバイザーのもとで修士課程の勉学に励んでおります。

 皆様からいただいた奨学金は,入学金,授業料,その他大学に係わる諸経費,21ヶ月間毎月給付される部屋代と食費,通学のための交通費などが含まれております。これらの奨学金は,東京RCのメンバーの皆様はじめ,全世界のロータリアンのご寄付をもって支給されているわけであります。

◆ICUにおけるプログラム
 各大学の「ロータリー世界平和センター」は平和と紛争解決に関する,さまざまな国際問題に焦点を当てた,独自のカリキュラムをもっております。

 ICUでは,奨学生はICU大学院の4研究科のうち,行政学研究科に籍を置きますが,他の研究科の科目も積極的に履修できます。必修科目は,平和研究1・2,平和思想,人権論,安全保障・紛争解決,平和と紛争解決の心理学などです。選択科目は非常に多様ですので省略いたします。

 これらのほかに,ICUロータリー平和センター主催の特別公開講座への出席,ロータリークラブの年次セミナーでの研究成果報告などが必須とされております。また,広島や沖縄等へのフィールドトリップが実施されておりますし,NGOでのインターンシップも予定されております。

 必須科目の平和研究の2では,たとえば,東チモールの国連事務所で実際にスタッフを率いてリーダーとして働いてきた日本人の専門家による実践的講義などが予定されています。日本で行われるプログラムであることから,ICUで毎年開講される夏期6週間の集中日本語プログラムで日本語を習得し,ロータリークラブでの年次セミナー報告を日本語で行うほど上達する学生もいます。

 お陰様で,年次セミナーは年々充実してきており,平和問題,難民問題,人権問題など多様な問題を討議する状況になっています。

 このセミナーには,毎年,ロータリアンの皆様が多数おいでになり,奨学生の受け入れ態勢についての報告や検討をしてくださいます。本当に頭が下がる思いであります。

 国際ロータリー本部からは,毎年9月に各大学のプログラム評価のためにシニアのロータリアンが派遣され,学長はじめセンターのディレクター,関係教員,奨学生などを面接します。私どもは,その都度緊張するのですが,ICUのプログラムは高い評価を受けております。勿論いくつかの点で改善を要しますが,本学のもつリソースを有効に使って,カリキュラムの改革や実践向きの科目を開発して,改善を進めたいと思います。恐らく数年後には6大学の中でも誇るに足るプログラムになるものと確信しております。

◆奨学生たちの様相
 ICUは2002年9月に第1期生7名の奨学生を受け入れました。その後,03年に9名,04年に7名,05年に6名,06年に9名。これまでに38名の奨学生を受け入れ,第1期生から第3期生までの23名全員が修士号を取得し卒業しています。

 彼らを国籍別にみますと,米国17名,オーストラリア4名,韓国2名,カナダ2名,イギリス2名,台湾2名,タイ2名,その他マレーシア,オーストリア,フィリピン,キルギスタン,ザンビア,オランダ,日系米国人各1名となっています。なお,女性7割,男性3割という比率です。

◆ICUロータリー平和センター活動の展開
 今年3月9日,10日の2日間,ICUロータリー平和センターは,青山の国連大学と共催で「The International Workshop on Educating Peacebuilding:In Pursuit of a Global Network」という国際会議を開催しました。

 文部科学省が競争的な環境の中で世界的な研究拠点(the Center of Excellence=COE)を構築するプロジェクトを行っていますが,ICUは「平和・安全・共生のための研究と教育」という課題でCOEに採択されています。そのCOE研究とのジョイント・プログラムとして,この国際会議を開催したのです。

 この会議で初めて6つの大学の代表が一堂に会しました。皆さんは異口同音に,このように顔を合わせて,互いの活動を報告し合って切磋琢磨していくことは非常に重要であることを表明されました。そうして,ICUが今後ともリーダーシップをとって会合の機会を作ってほしいという声があがりました。

 6大学とも,このプロジェクトは第2段階に入ったという認識です。第2段階とは,6大学間のネットワーキングの構築です。

 まさにこのような時に,国際ロータリーは「ロータリー世界平和奨学生プログラム」を恒久的なものにするために,9千5百万ドルの基金を設立することを表明されました。これは,6大学の活動が一定の評価を受けて,成果が期待できるという見通しを国際ロータリーがもった結果だと拝察しております。

 我々も一層気を引き締めて頑張らなくてはなりません。東京RCをはじめ日本のロータリアンの皆様に心からお礼を申し上げ今後とものご支援をお願い申しあげます。