卓話


資産運用と資産管理のこれまでとこれから

2019年8月21日(水)

ステート・ストリート銀行(株)
取締役会長 高橋秀行君


1.本格的な資産運用の始まり
 諸説はあるが、歴史的にスコットランドが資産運用の始まりと言われています。今でもエジンバラには世界的に有名な機関投資家が多く存在します。

 スコットランド、特にハイランドは土地が痩せ、気候も悪く、男たちは古くから欧州各地に傭兵など出稼ぎに出ていました。異国で死んでしまう事もあり、残された家族の生活は重要な問題でした。

 その為に18世紀初頭に未亡人の為の保険(Scottish Widow)が誕生します。保険資金を安定して着実に増やす必要から長期投資の基礎が始まりました。

 投資信託はそれとは違う生い立ちです。19世紀半ばイギリスで中産階級が富を持ち始め、資本家と同じ投資リターンを少額で得る、という目的でスタートし、それに資産保全の受託銀行という制度が加わり今の投資信託の基本が出来ます。

 後にアメリカで確定拠出年金の誕生で爆発的に拡大し、過去10年でも倍増し額は2,000兆円を超えました。

 最近ではインデックス(パッシブ)運用、ETFと呼ばれる上場投資信託が主流です。
特にETFの伸びは顕著で、アメリカで過去10年で10倍400兆円を超えました。

 投資信託は一般の個人の資産形成の為の運用である事から色々なルールが課されています。当初決めた方針とは違う投資をしてはいけない、カラ売りをしてはいけない、等々こうした制限によってリターンは限定的になります。

 富裕層やプロの機関投資家はもっとリスクをとって高いリターンの投資を探し、ヘッジファンド や PEファンド、インフラ投資、一般的にオータナティブ投資と呼ばれるものが拡大しました。

 結果として運用手法が多岐に亘り複雑になると同時に、益々大きなボリュームになりました。

2.資産管理とは
 投資家が売買の受け渡し、配当や金利の受け取りと記帳、時価情報を毎日反映した運用管理を全て自前で行う事はもはや不可能です。投資家の為の資産保全(Fiduciary Duty)、複雑化しコストのかかる事務作業と管理を効率的に行う資産管理の専門家が必要になりました。

 資産管理という機能は、大きく分けて3つ、信託機能(資産を預かり保全する)、決済機能(売買後の決済や受け渡しを行う)、事務機能(配当や利息の受け取り、運用報告書の作成)、になります。

 これらは、水道、ガス、電気と同じように資産運用という日常生活に欠かせない金融インフラ提供サービスで、インフラの常として、いつでも安定して、安価で提供される必要があります。

 安価であるという事は、規模の利益が無ければ成り立たず、新規の設備投資、特にIT投資が出来ないと、競争力を保てません。金融機関の中でも典型的な装置産業です。

 さて、株券、券面はもはや現物が無く、デジタルなデータへと変化しました。どこにも紙もなければ頑丈な大きな金庫も必要ありません。資産管理銀行が管理しているのは金融に関するビッグデータです。ここが金融ビックデータを扱っている資産管理銀行の新しい付加価値です。

3.何がリスクか。
 破壊的なイノベーションによって、金融機関以外の業種からの参入が可能になります。 何故なら新しい付加価値のコアはデータのプロセッシングだからです。

 テクノロジーで人の仲介を排し、大幅なコストダウンと新しい付加価値を生み出す所謂Dis-intermediationが金融にも広がります。特に資産管理は装置産業であるが故に技術の革新が勝敗と存在意義を決定します。

 テクノロジーの進化によって照合作業、決済に人手がいらなくなり、更には金融知識のある人材を抱える必要も無くなります。

 コスト構造が根本から変わり、競合相手は金融機関ではなく、アマゾン、アリババ、Google、等々です。ルールや発想が全く違う相手との競争は既に始まっています。


東京2035

2019年8月21日(水)

明治大学
名誉教授 市川宏雄君


 専門は都市計画ですが、大学では政治学科の都市政策の講座を担当していました。
 1997年に大学に移る前に富士銀行の富士総合研究所主席研究員をしておりまして、東京都の都市政策の立案には、色々な形で30年以上にわたり携わってきています。最近では、昨年、東京都から国に新たに財源を移されることに反論するための委員会のメンバーでしたが、小池知事の反発も効果なく、合計で東京都は年間9,000億円の財源を国に移譲することになりました。

 私の職業分類が「ガバナンス研究」となっておりますが、これはいわゆる経営ガバナンスではなくて、海外では常識となっている行政ガバナンスにちなんだもので、2004年に明治大学で立ち上げた公共大学政策大学院をガバナンス研究科と命名しました。専門職大学院の公共政策大学院は現在、日本に7校ありますが、そのうちの一つです。

 さて、本日のお話ですが、ロータリークラブに入会させていただいた4か月前に、30分間の卓話で、「東京と日本のこれから−2025年までにどう変わるか−」をお話させていただきました。

 私の生涯研究テーマは「東京」でありまして、色々な視点から分析をすすめてきています。その時の卓話では、来年の2020年の五輪に向けて、日々、東京の姿が変わりつつありますが、実は、その後の2025年頃になるとはっきり未来が見えてくるだろうと、「東京を取り巻く環境の変化」、「都市力の分析」、「都心がどうなるのか」の3つのテーマで、東京の今後10年間の変貌について動画を使ってお話しました。

 本日は、その後の東京2035年について、私が理事を務める森記念財団都市戦略研究所で、毎年10月に開催されるINNOVATIVE CITY FORUMで行ってきたプロジェクトについてお話をしたいと思います。

 この近未来を描くにあたって検討したのが「FUTURE LIVING」「FUTURE WORK」「FUTURE MOBILITY」「FUTURE CITY」の4つです。まもなくシェアリング・エコノミーやロボットによる代替労働、無人運転などが始まります。テクノロジーの進展は驚くレベルで都市を変えていきます。本日はその中の3つの場面について紹介します。

 冒頭は、未来の六本木の都市の姿です。空にはドローンと飛行機が飛んでいます。20年後にドローンは相当な数が空を飛ぶでしょう。それから飛行区域が拡大して、東京の都心部にも飛行機が飛びます。空港の国際線発着回数も増加しています。屋上緑化や壁面緑化などにより都市緑化はさらに進むでしょう。さらに、首都高速はなくなり、老朽化したインフラの更新・修繕・再構築が行われます。

 次のシーンは、麻布の古川です。唱歌「春の小川」のモデルとなった川として有名です。前回のオリンピック開催時にこの川の上に首都高速が架かり、景観は無残にも壊されました。今後の首都高速の架け替え、更新の中で、今回はこの水辺を復活します。ロンドンもそうですが、水辺の復活は、人間と自然の触れ合いのパターンだと思っています。ロンドンの川辺の計画では、段々に人々が座ってみんな川を眺めています。

 最後は新虎通りでのイベント会場設営の風景です。今は会場の設営にたくさんの人が必要ですが、近未来は空飛ぶドローンと地上のドローン、そしてロボットが作業を補います。この先、人口が3割減ったらどうなるか。働き方改革や女性の就業、外国人の雇用など、さまざまな解決策があります。その中で、ロボットが労働力の何割かを代替すると私は期待しています。

 ただし、夢を含んだ未来は描けますが、その実現にあたっては、既存の法体系の存在、旧態依然とした人々の思考形態などが、実はネックとなるということが現実です。