卓話


ロータリー希望の風奨学金について

2019年4月17日(水)

地区ロータリー希望の風奨学金支援委員会
委員長 百目鬼 健氏


 東日本大震災から8年も経ちました。この震災の遺児達に奨学金を給付するプログラムが「ロータリー希望の風奨学金」です。震災で両親又は片親を亡くした遺児が、高校を卒業した後、大学・短大・専門学校に進学して学んでいる期間、毎月5万円を給付し、返済を求めない制度です。

 スタートは2011年11月1日。ロータリアンとして震災後8カ月で制度ができた経緯を知っておくことは大切だと思います。

 震災発生後、広範囲に及ぶ被災地のどこに支援の手をのばせばよいのか判断しかねている各クラブに対し、2010〜11年度ガバナー会から窓口を一つにするよう提案がありました。それに呼応し、6月7日までに8億9千万円、最終的に10億3,800万円が集まりました。 義援金の活用法を検討する「東日本大震災支援検討委員会」がガバナー会内に発足しました。千葉の第2790地区・織田吉郎ガバナーを委員長とする被災地区5名のガバナーと非被災地区5名のガバナーによる構成です。

 まずは、義援金から見舞金として北海道東部の第2500地区へ800万円、青森の第2830地区へ5,000万円、岩手・宮城の第2520地区へ5,000万円、福島の第2530地区へ3,000万円、栃木の第2550地区へ500万円、茨城の第2820地区へ1,000万円、千葉の第2790地区へ1,500万円、合計1億6,800万円をお渡ししました。

 被災地のガバナーからは「即刻、すべての義援金を地区に配分して、その全てをロータリアンの救済に使いたい」という意見が出ました。それに対し、被災地福島のガバナーからは「今ここにある義援金は決して大きな額ではない。これを配分してしまうのではなく、将来を担う青少年の教育環境の改善のために使うべきである。配分された義援金を使って各地区独自で次世代育成プログラムに取り組むのは困難であり、一括して委員会主導でプログラムを立案推進して欲しい」という熱い意見があり、「義援金を分散させることなく、ロータリーらしい青少年支援の道を探る」という結論になりました。

 この時、1923年の関東大震災の際に東京ロータリークラブが取った対応に学びました。ロータリー連合会や世界17カ国503クラブから送られた8万9,000ドルを、東京・横浜の消失小学校188校への教材寄付、孤児院の建設寄贈、産科医療医院の再建援助、殉職警察官家族の援助と、人を育てる環境づくり、次世代を担う子供達の救援に向けたことです。これは、1995年の阪神淡路大震災、2004年の新潟中越大震災にも受け継がれました。

 教育的支援プログラム作成のポイントとして、「公正であること、建設的であること、温かく心と心を寄り添わせるプログラムであること」を考え、2つのプログラムが立案されました。
 “鏈勸篁への教育的環境支援:継続性を前提に遺児支援の対象を高校生・大学生・短大生・専門学校生とし、カウンセラー制度を設定する。5for1プログラム:被災1クラブを非被災5クラブが力を合わせて物心両面で支える。

 6月9日の第4回ガバナー会にこの案が提出され、24億5,000万円の義援金が試算されましたが、残っているのは8億7,000万円程度と、15億8,000万円足りません。

 ここでロータリー年度が替わり、2010〜11年度のガバナー会から2011〜12年度のガバナー会に義援金と委員会が引き継がれました。2011〜12年度のガバナー会はクラブ訪問の忙しい時期でもあり、前年度のガバナー会の委員会で決めたプログラム案の検討が進まず、前年度のガバナー達も「現役ガバナーは忙しいでしょうから私達が実質的に動きますから」と提案したようですが、2011〜12年度のガバナー会は、長期に亘るプログラムはできないと残っている義援金を一旦各地区にお返しすることを決めました。

 そこで、せっかく集まった義援金を有効に使おうと、前年度のガバナー数人を中心にして新たに活動し、賛同地区の10地区だけで新たに「ロータリー東日本大震災青少年支援連絡協議会」を発足させ、上野操委員長の下、12名で委員構成されました。

 この時、10地区から集まった義援金は3億600万円。「これでは、高校生を支援できない、5for1プログラムもできない」と苦慮し、大学・短大・専門学校生対象の制度にすることにし、この協議会で「希望の風奨学金制度」を立ち上げました。

 そこに神風が吹きました。日台ロータリー親善会議から、1億2,300万円の義援金の申し出がありました。資金が4億3,000万円になり、5年は維持できる目処が立ち、ホッとしたとのことでした。そして、スタートとなった訳です。

 当初、支援地区は10地区でしたが、現在、当地区と海外の2地区も含めて28地区と3団体です。2019年3月末現在、134名に給付中で、延べ369名に給付しました。

 震災直前に生まれた子が大学を卒業するのは2033年3月。最低でもそれまでこの制度を維持しなければなりません。対象人数は1,724人。内訳は岩手、宮城、福島の3県で両親を亡くした遺児が241人、片親を亡くした遺児が1,483人です。トータルで必要な金額は最大10億8千万円と試算されています。この3月末時点で1億7,200万円不足しています。

 歳月は当時の熱い気持ちと義援金を出す気持ちを薄らげています。熊本や北海道の地震、毎年のような豪雨災害等があり、ロータリーが取り組むべき事柄が他にも多いことも事実です。スタート後、毎年の寄付金は6,000万円を超えていましたが、2年程前から4,000万円台、2,000万円台へと急激に減少しています。

 まずは、皆さんがこの制度を知って欲しい。クラブで知らない会員が居ないように例会を通じて啓発して欲しいと思います。素晴らしいプログラムであることを知れば、進んで寄付をしてくれます。少額でも継続して支援頂きたい。ただ、希望の風は、税制の控除対象となる証明書を出せていないため、ロータリーの財団や米山に比べると弱いところです。

 さて、地区ロータリー希望の風奨学金支援委員会は地区社会奉仕委員会の小委員会に位置づけられています。ロータリー東日本大震災青少年支援連絡協議会がこの制度の運営と事務局を務めており、当地区の委員会はこれを支援する立場になります。

 松坂ガバナーはロータリー東日本大震災青少年支援連絡協議会の副委員長でもあり、2017年7月から当地区が事務局を引き継ぐことになりました。協議会の方針の1つは希望の風奨学生とロータリーとの交流を図ることです。この制度によって明るく活き活きと勉強して成長している若者を直接見て頂くことで更なる支援のモチベーションに繋がると考えています。

 2017年11月に東京近郊に在学している大学生を主体にお誘いし、4人の女子大生の参加で、ランチをしながらの懇談会を行ないました。その模様は『ロータリーの友』2018年3月号に掲載されています。もっと多くの奨学生に参加して欲しいのですが、トラウマから関わりを持ちたくない学生さんも多いのは事実で、それから今の若い人の気質でしょうか、お誘いしてもなしのつぶてということも多いです。

 2018年2月の地区大会にお誘いすると、久我理亜さんが参加されました。彼女の留学を応援することを目的に、彼女の卓話を聞く会も昨年2月に実施しました。昨年3月から大学を休学し、1年間アフリカのセネガルに留学し、元気に帰国しました。休学中は希望の風奨学金は支給されないため、他の留学生支援制度を活用されました。留学手記が『ロータリーの友』2018年9月号に掲載されています。

 交流を通じて知ったことは、奨学生自身がロータリークラブから奨学金をもらっている実感があまりなかったことで、驚いています。それは、本人がこの制度を知って申し込みをした場合を除いては、保護者がこの制度を知って手続きをし、保護者を通じてお金が渡ることがほとんどのため、保護者は感謝していても、本人は知らないことが多いのです。この交流でこの事実を知り、ロータリーに対して感謝の気持ちを持ってくれましたが、これは今後の課題です。

 希望の風の奨学生がロータリーの本質に触れて奉仕活動を実践する大人に成長してもらうことも協議会の方針の1つです。現在、千葉2790地区が5月22日に希望の風コンサートを開催する予定で、久我さんが参加されます。それから、6月19日にも久我さんの卓話とランチの会を企画していますので、是非ご参加頂きたいと思います。

 このプロジェクトは素晴らしいものです。是非、2033年まで無事に継続できるように、不足の分のご支援をお願い致します。個人でもできますし、クラブ単位では周年行事等で記念寄付をお願い致します。3月11日前後の例会は寄付を募るチャンスです。

 最後に、奨学生のご家族の声を紹介します。「お陰様をもちまして、震災当時中学3年だった娘も無事に短期大学を卒業することができました。震災当時、父親が行方不明となり、先の見えない状況でしたが、皆さまからのご厚意によりまして、不自由なく勉学に励むことができました。本当にありがとうございました。この春からは短大で習得した資格を生かし、仙台市内の保育所に就職し、社会人としての生活をスタートしました。これから、皆さまより頂いた心遣いを忘れず、将来少しでも何らかの形で御役に立てるような人間になってほしいと思っております。2年間、大変お世話になりました。誠にありがとうございました。」