卓話


イニシエーションスピーチ

2007年12月12日(水)の例会の卓話です。

内海暎郎君
林 克昌君 

社会貢献と信託
    
三菱UFJ信託銀行
取締役会長 内海暎郎君
    
 信託とは、一言でいえば、「人を信じて財産を託す」ということです。財産を託す人を「委託者」、託される人を「受託者」、その管理・運用された成果を受け取る人を「受益者」といい、この委託者、受託者、受益者の「信頼」と「忠実」に基づく三者関係が信託の基本的な仕組みです。

 信託の起源については、ローマ時代説等諸説がありますが、現在の信託制度は中世以降英国において体系化され、その後、米国で商業的なものとして発展したもので、日本で法制度としての信託が導入されたのは大正時代です。

 その信託法と信託業法が、先般、80数年振りに抜本改正されました。この改正の最も大きな
点は、信託できる財産の制限が撤廃されたことです。信託財産は、金銭、有価証券、金銭債権、動産、不動産等に限定されていましたが、新たに特許権等知的財産権も信託することが可能となりました。併せて事業そのものの信託等、新たな信託制度も創設され信託の活用領域・可能性が大きく広がりました。

 また、信託業の担い手も拡大され、金融機関以外の参入も認められるようになり、信託業法改正後、12社が新たに信託業に参入しております(H19.10.1時点)。そして、同時点で信託協会加盟会社は54社、その信託財産額は786兆円と非常に大きな規模になっています。

 このような信託は私達の社会・経済活動においてさまざまな形で活用されています。資産運用の分野では投資信託が代表的な商品として注目されています(H19.9末 受託残高97兆円)。投資信託に組入れられる様々な有価証券等の管理に信託が重要な役割を果たしています。

 また、企業金融の分野では、新たな資金調達手段として資産流動化が急拡大しています(H19.9末 受託残高65兆円)。また、不動産の証券化においてはその取引の8割に信託受益権が活用されています。

 更に、少子・高齢化社会で老後の生活を支える企業年金についても制度設計や運用・管理等で
信託が重要な役割を担っています(H19.9末 受託残高86兆円)。

 また、高齢者層から次世代へのスムーズな財産承継ニーズが高まっており、遺言信託をはじめとする相続関連業務が注目されています(H19.9末 遺言書保管件数5万9千件超)。

 信託は、社会貢献活動でも活発に活用されてきました。公益信託は、民間資金を活用して公益活動を支援する仕組みで、奨学金の支給や自然 科学・人文科学研究への助成等、幅広く活用されています。

 最近では金銭信託の収益金を自然環境保護活動を行なう公益団体等に寄付するものや、社会・倫理・環境等の点において優れた企業に投資する「社会的責任投資ファンド(所謂SRIファンド)」等新しい信託商品が数多く生み出されています。また、今後の新しい試みとして、地球温暖化問題へ取り組む企業に対し、CO2の排出権を、信託を活用して提供する排出権信託も検討されています。

 このように信託は、単なる社会・経済活動のインフラとしてのみでなく、社会貢献活動のインフラとしての重要な役割を担っており、その役割や期待は今後益々高まっていくと思われます。そして信託には「ともに助け合いながら生きていく」という日本的な「共生」の精神が生きているとも言えます。

 また、大切な財産をお預かりする私ども受託者には責任をもって財産の管理・運用をする義務があります。

 この点に関し、20世紀前半に米国ワコビア貸付・信託会社初代社長で米国信託の発展に生涯を捧げ「信託の父」と呼ばれたF.H.フリースは受託者の精神について、『信託を担う者(受託者)は、高潔さ、責任感、誇りが求められ、自分以外の個人や法人のために働くことや最大限の誠実性が求められ、引受けた義務と相容れないことや利害関係人に不利になるようなことは許されず、他人のために行動するものである』と述べています。ある部分ロータリーの精神にも関係する大変含蓄のある言葉だと思います。

 私も我が国における信託制度の発展をその中心となって担うべき信託銀行に身を置く者の一人として、このフリースの受託者の精神を胸に刻みながら、より多くの 皆様に信託を利用して頂けるよう創意工夫に努めるとともに、専門性の一層の向上をはかり、社会に貢献してまいりたいと考えております。

技術開発の仕事の話
(食品機械・設備編)

内外施設工業
代表取締役副社長 林克昌君
 
本日は私達の日頃の業務を通じて、食品機械設備業界のオーダーメイドの生産機械の技術開発の話をさせていただきます。

お客様の開発部門や生産を担う工場部門の方々から、私達一人ひとりの技術者のもとに新案件について直接電話が入ります。そしてお客様と一緒に生産機械、ライン、設備の仕様を決め、その設計からお見積り、受注、製造、施工、試運転、お引渡し、更にその後のメンテナンスまで、全ての業務を一人の技術者が責任を持ってやり遂げるというのが『ひとりワンプロジェクト』という私達の仕事のスタイルです。

勿論、会社の組織をもって、プロジェクト担当者をしっかりサポートする体制を採っていますが、タイトな工程と厳しい予算の中で、開発含みの一品料理の生産機械設備を予定通りお納めするということは、現場代理人の担当技術者にとって相当なプレッシャーです。
 
実際、オーダーメイドの技術開発の仕事には初期不良という問題が付いてまわります。実機の設計、製造に当たっては、技術的なノウハウや経験に加えて、必要なら試験装置や試作機からテストデータを取り、あらゆる面から万全の体制で取り掛かりますが、いざ、試運転段階に入ると、それらをもってしても予測し切れなかった問題が発生することがあるのです。

製品の本生産が迫っている中、約束したスペックが出ないときなどは徹夜が続くこともあります。それでも、開発技術者は自分の設計、実験で得たデータや結果、そして自身の経験から、必ず問題を解決できることを信じ、やり遂げます。そしてお客様が本生産に入る頃には、己の苦労を振り返る間もなく、次の開発案件に取り組んでいる、それが我々、この業界の開発技術者の日常です。

一つのプロジェクトをやり遂げた達成感は、開発技術者にとっては格別のものであります。そしてお客様の「よくやってくれたね!」、「ありがとう!」という言葉にどんな苦労も報われます。皆様の日常の食卓に、私達の開発した機械設備を通って生まれてくる食品が沢山あります。それらの商品には勿論、私達の社名はどこにも出てきませんが、こんな形で、着実に人類の食文化と社会の発展に貢献できることが私達のこの上ない喜びです。

次に、オーダーメイドの食品機械設備の技術開発の仕事をしていくにあたり、私達が経営面で重要と信じ、実行していることをお話し致します。

まず、技術開発を生業とする会社としての財務体質の強化です。私達は、先に述べた初期不良のような不測の事態が起こったとき、例えどんなに費用が掛かったとしても、私達自身の体力で、必ずお客様が満足されるものを完成し、仕事をやり遂げなくてはなりません。その為に、万が一の不測の事態に、いったいどれくらいの費用負担に会社が耐え切れるのかを常に把握し、そしてそれに備えることが必要です。

2つ目に、会社の独立性とオーナーシップを保ち続けることです。私達の仕事は、やり遂げることによってお客様との信頼を築き、深め、次のお仕事に繋がっていきます。一方で、私達はお客様の工場の生産ラインの中で、お客様の大切な製品の最も特徴の出る部分の機械設備のお仕事をやらせていただいております。そういった点で、私達経営陣は、どんな状況においても、お客様からご信頼いただける決断ができ、また実行できることが重要であると考えております。

3つ目に、どんなに苦しいときも、毎年人を採り、育てることです。お客様にも私達も毎年新入社員が入ってきます。今年入って来た新入社員が、共に苦労し、成功を積み重ねることによって信頼関係が出来上がり、お互いの成長と共にそれが深まり、やがて彼らの世代が次の時代の食文化と社会の発展を担っていく。そうなるように、これからも力を合わせ、頑張って行きたいと思います。