卓話


イニシエイションスピーチ

2012年6月13日(水)の例会の卓話です。。

島田 茂君
植村昭三君

東日本大震災YMCA救援・復興支援活動の現状と今後

公益財団法人日本YMCA同盟
代表理事(総主事)
島田 茂 君

 震災から一年3か月が過ぎました。昨年3月11日、この未曽有の大震災にどのように立ち向かうか、事務所に泊まり込み、情報を集め、検討を重ね、方針を決定した日が私には遠い昔のように思えます。皆さんは如何だったでしょうか?

 YMCAは、関東大震災、伊勢湾台風、阪神・淡路大震災、中越及び中越沖地震など様々な災害を、被災者の方々と共に乗り越えてきた歴史があります。また近年では海外でも、スマトラ沖地震・津波、ハリケーンカトリーナ、四川大地震、ハイチ・サイクロンなど、現地のYMCAを通して支援を行いました。
 
 阪神・淡路大震災では、市民団体の連絡協議会を立ち上げボランティアによる救援・復興支援に取り組みました。その後神戸での経験を生かし、全国各地のYMCAが社会福祉協議会と共に分野の異なる市民団体NGO/NPOや行政と協働し,災害ボランティアネットワークを立ち上げました。災害ボランティアネットワークは、各地で発生した災害でボランティアが円滑に活動する仕組みとして機能しました。
 
 しかしながら今回の震災では、規模の大きさや範囲の広さ、そして、経験したことの無い原発の問題で、ボランティアによる救援活動は、軌道に乗るまで時間がかかりました。特に、当初のガソリン不足と放射能の影響により、若い学生ボランティアを派遣することには慎重になりました。そのため、全国各地のYMCAから災害支援活動経験のあるスタッフやボランティア、そして、どんな状況でも自立して活動できる登山家ボランティアの派遣を中心に支援活動を開始しました。

 この3月までに仙台YMCAボランティア支援センター、盛岡YMCA宮古ボランティアセンター、そして、YMCA石巻支援センターに延約1万4千人のボランティアを派遣し、約5万8千人の被災された方々に支援を届けました。また、三菱商事をはじめ企業のご支援をいただき、宮城県を中心に2,680人の被災した子どもと家族を全国各地のYMCAキャンプに招待しました。

 YMCAは、被災された方々、特に青少年・高齢者・障がい者・在住外国人等の災害弱者となりやすい方々の支援を、国内外から寄せられる募金・寄附を用いて、息長く継続する方針を決定しました。また、地域に根ざした青少年教育団体として、青少年を救援・復興活動の担い手に育むことを目標としました。

 震災時からこれまでの活動内容に関しては、報告書を用意いたしましたので、そちらをお読みください。この一年間の活動を通して、多くの被災された方々のお話を伺いました。支援活動を通じて被災された方々は、関係性が深まるにつれて徐々にこの災害での辛く悲しい体験を話してくださいました。避難所にいる子どもたちを対象に毎月行われたレクリエーション活動では、一見元気そうに思われる子どもたちが若いボランティアに数日間津波で流され意識がなかった話や、体育館に避難していた時に津波に襲われ、目の前で家族や友だちを飲み込んだ話などを語りだしました。

 私たちが支援を通して関わることのできる人々は、極々限られた範囲の、限られた人数の人々です。そして、被災された方々が受けた悲しみを理解することは、私たちにはできません。しかし、私たちは、被災された方々と共に地域で力を尽くし、深く、そして長く支援をしていく。そこから生み出される希望こそが、被災した地域の復興の原動力となるということを信じます。津波で何も無くなってしまった地域、被災した子どもたちが青年となり自分たちの町をつくっていく未来を、しっかりと描きながら支援活動を続けていきます。
 
 支援活動を行うために多くの皆様からご寄付を賜ったことに心から感謝申し上げます。今後は、支援活動を継続するための募金が少なくなってきます。この震災を忘れないために今後とも皆様のご支援をお願い申し上げます。

知的財産立国日本の再生

青山特許事務所
副会長・弁理士
植村 昭三 君

 私は、通産省特許庁、世界知的所有権機関(WIPO)などにおいて知的財産制度の国内、国際政策に携わった後、特許訴訟など実務の世界に入り、現在は、企業・発明者の権利を守る弁理士を主な生業にしています。本日は、日本の再生が強く叫ばれている今日、知的財産制度の視点から、こうした叫びに応えるべく、何点か申し上げます。

 日本は天然資源が少ない国で、経済成長には製品、サービスの国際貿易発展が欠かせません。そして今日日本は少子高齢化現象により更に人的資源の減少という課題も抱えており、生産性、付加価値を高める技術開発が求められています。この政策基盤の重要性は「貿易立国」、「科学技術立国」というスローガンで標榜されています。
 
 知的財産権の分野では、制度の活性化を図るべく「知的財産立国」といったスローガンが、国家戦略の柱として定着しつつあります。しかしながら、わが国の現況を見るに、必ずしも所期の活性化につながっていないのでは、との懸念を禁じえません。
 
 ひとつは、特許大国日本のかげりです。日本は過去数十年にわたり、世界に冠たる「特許大国」でした。例えば、特許出願件数は日本が年間40万件台、米国が20万件台という時代が長く続きましたが、この数年来急減しています。5、6年前には米国に抜かれ、一昨年には中国に抜かれ差は開くばかりです。
 
 とりわけ、近時における中国の知的財産創出の活力には目を見張るものがあります。昨年の統計では特許出願53万件(日本35万件),3年後には特許出願は75万件に達する見込みです。
 
 知財に関する年間民事訴訟件数は、日本が数百件であるのに対し、米国は数千件、中国は数万件です。日ごろから訴訟マインド、国際的訴訟競争力を高めておくことは、特にグローバル経済においては、権利の取得と同様大事な点であると思われます。
 
 視点を知財のグローバルな側面に移します。
 
 グローバル経済では、知的財産権の網を世界に張る必要があり、制度の国際調和が望まれています。19世紀末からWIPOを中心に国際的枠組み作り、制度調和が図られて来ており、20世紀末には、通商問題として知的財産権を扱うWTO・TRIPSが誕生し、これによって制度のマクロの国際調和が進みました。しかしながら、国際的に調和すべき点は、多々存在していますが、ここにきて大きな壁にぶつかっています。
 
 今日、経済のグローバル化により、知的財産保護の分野でも、様々な困難な課題が山積しています。そしてその解決をめぐる議論交渉は、ますます南北間の対立を深めつつあります。知的財産制度のグローバルな国際調和を図るには、同時に、これら困難なグローバル・イッシューへの真摯なる対応が求められています。
 
 知的財産に関する南北問題は、従来途上国への技術移転の促進に焦点が当てられていましたが、現在では例えば医薬品アクセス問題のように、知的財産制度のあり方が、開発、人権、環境、生命、貧困など新しいダイメンションでの議論、交渉がなされてきています。こうした様々なグローバル・イッシューは、WIPO, WTOのほか、ガバナンスの異なるさまざまな縦割りのフォーラム、プルリ(複数国間交渉)、バイ(二国間交渉)など枠組みの中で、区々に取り扱われています。これらは多くの場合,技術・法的問題の本質を共有しており、また政治的にも密接に関連しているところもあり、包括的にアプローチし、国家戦略をたて、国際交渉を主導していくべきかと思います。
 
 ますますグローバル化する国際経済、社会において、わが国がかつてのような活力ある知的財産立国を再生していくには、研究開発、知財マインドを一層高めること、そして、とりわけ知財のグローバルな課題の解決を主導する、グローバル・マインドを持つことが必要ではないかと考えます。