卓話


半導体産業の未来と課題

2014年1月29日(水)

東京エレクトロン
代表取締役会長兼社長 東 哲郎君


 本日ご紹介します『半導体産業』の市場規模は約30兆円、半導体を搭載する電子機器産業の規模は約150兆円、そして、半導体を製造する装置産業は約3兆円の規模です。半導体は日頃消費者の目に触れることがない電子部品ですが、パソコンやスマートフォン、TV、ばかりでなく、自動車、各種産業機器(測定器、組立機器など)を含む、全ての電子機器の機能を司っています。

 1947年に半導体トランジスタが発明され、1970年にインテル社が現在の半導体と同じ原理である初の半導体集積回路(IC)を開発して以来、その飛躍的な進化がコンピューターの性能を高め、同時に小型化と低価格化を実現して来ました。その結果、コンピューターは企業や研究機関だけで使うものではなくて、個人が使う所謂パーソナルコンピューター(PC)の時代が到来しました。そして、PCと並行して1990年代にインターネットが広く普及し、世界中に散らばっていた貴重な情報を、一般人も知り得る時代(情報のフラット化)がやって来ました。さらに、今後は全ての物に半導体が搭載され、膨大な情報(ビッグデータ)が利用される高度情報化社会(IoT: Internet of Things)がやって来ます。

 このように膨大な情報が行き交う高度情報化社会を創造した半導体市場は、50年前と比較すると約300倍の市場規模に成長しました。さらに21世紀に入って、BRICsで代表される新興国、そしてアフリカ諸国などの後進国においても電子機器が普及し、半導体産業は益々発展・拡大する状況になって来ました。但し、新たな購買者は所得が低いので、電子機器の低価格化が進み、業界全体にコスト競争力が強く問われています。又、半導体メーカーの勢力図にも大きな変化が起こりました。

 1990年代までは米国と日本企業が市場を支配していましたが、21世紀に入ると日本メーカーに代わってアジアメーカーの台頭が顕著となりました。変化の最大の理由は、半導体の開発・製造・販売を全て1社で行うIDM*(Integrated Device Manufacturer)に対抗して、得意な分野だけに資金と人材を集中投資する水平分業型メーカーが現れたことです。専門分野への大型資金投入と人材を集中投資することによって、高度な専門性とコスト削減を手中にし、半導体産業内での主役に躍り出ました。特に、米国のFabless(設計専門)+アジアのFoundry(製造専門)の組み合わせが活発化し、アジアの半導体メーカーが大きく成長しました。

 さて、半導体の微細加工の歴史は、1970年に10μm(マイクロメートル)(100分の1mm)であったものが、40年の歴史を経た現在、数10nm(ナノメートル)(10万分の1mm)に進化しています。そして、研究開発段階では原子数個分のスケールである数nm(ナノメートル)(100万分の1mm)の加工技術開発が進行しています。まさに究極の加工領域に入っており、1企業や1研究機関の技術力と資金力だけでは製品開発が出来ない状況になっています。この様に、半導体製造装置メーカーには、高度な技術力、資金力、そして強いコスト競争力が求められるため、当社は今回米国アプライド・マテリアルズ社との経営統合を決断致しました。

 皆さまもご存じのとおり、技術革新が生み出すコンドラチェフの波と称される約50〜60年の長期的な景気変動があります。21世紀の新たな時代は環境・エネルギー技術、そして、バイオ関連技術が経済を牽引すると予測されています。そして、画期的な工業製品は過去、異分野の技術の融合によって生み出されて来ました。半導体も機械工学(メカニクス)と電子工学(エレクトロニクス)の融合が生み出した画期的な工業製品です。そして、今後は電子機械工学(メカ・エレクトロニクス)と生命工学(バイオテクノロジ)の融合によって、新たに画期的な工業製品が生まれて来るものと期待しています。

※1mm=1,000μm(マイクロメートル)  1μm(マイクロメートル)=1,000nm(ナノメートル)