卓話


イニシエイションスピーチ

2013年2月13日(水)の例会の卓話です。

出光正和 君
三枝成彰 君 

音楽業界の最新動向

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代表取締役 三枝成彰 君

 皆さんは、「初音ミク」をご存じでしょうか。
 いま、初音ミクという存在がたいへんなブームを巻き起こしています。まず映像をご覧下さい。

(初音ミクのコンサート映像上映)

 歌っている女の子はバーチャルで、実在しません。バックバンドと観客は実在の人間です。実在しない女の子の歌に喝采を送り、ペンライトを振っているのです。私たちの世代には理解しがたい世界がここにあります。

 初音ミクは、「ボーカロイド」と呼ばれるコンピュータソフトです。あらかじめ入力された女の子の声を自由に歌わせることができるソフトで、これを利用して世界中のアマチュアの人たちが作った曲が、15万曲あるとも30万曲あるとも言われています。そうやってコンピュータで作曲するのが、いまの主流となっており、NHKの大河ドラマなどもそうなっています。

 昨年行われたNHKの「紅白歌合戦」で、オーケストラがまったく登場しなかったことにお気づきになりましたか。いまや「紅白」に出場する歌手たちの後ろに流れる演奏も、ほとんどすべてがカラオケで、生演奏はとても少ないのです。

 初音ミクは、ヤマハが開発したボーカロイドというソフトを使って、クリプトンというソフト会社が作り出したキャラクターです。いまや日本のみならずドイツ・フランス・イタリア・シンガポール・上海・ニューヨーク・ロンドンなど世界中に「アイドル・初音ミク」のファンが10万人はいると言われていて、コンサートを行えば大盛況です。

 60年代まで、歌手たちはレコード会社の専属で、いい曲を書いても勝手に歌うことはできませんでした。70年代になると、シンガーソングライターと呼ばれる人がギター一本で作詞作曲し、一人で自由に歌うというスタイルが生まれました。いまは商業放送に乗らないような内容のものをユーチューブやニコニコ動画などのサイトで発信するという新しいスタイルが出てきています。その曲の価値を決めるのは大衆であり、生産者が消費者と直に取引をできる時代が来たのです。青森のスーザン・ボイルと呼ばれる女性は、息子が作曲した曲を歌い、動画が250万回も視聴されるスターとなりました。HJリムという韓国の女性ピアニストは、家族に音楽留学の成果を見せるために発信した映像が名門レコードレーベルのディレクターに認められ、プロ・デビューしました。いきなりアルバムを連続発売して、一枚目はベートーベンの「ハンマー・クラビーア」を演奏しています。

 ボーカロイドの発達は、誰でも作曲できる状況を作りました。それ以外にも、ドラムやベースだけのパターンがあったり、有名な曲のフレーズを自由にアレンジできる状態で収めてあるソフトが、安価で手に入れられます。音楽の素養がなくとも、それらを組み合わせて曲を作ればよいのです。そこにちょっといい歌詞をつけて、初音ミクに歌わせることも可能です。つまりもう、ポップスの世界に専業の作曲家は必要なくなったのです。

 CMの音楽もいまはほぼすべてコンピュータで作られます。私がかつて大河ドラマやアニメ「機動戦士ガンダム」の音楽を作ったころは、スタジオを借り、演奏家を50人集めたりして録音しました。しかし、いまはそんなことはまずやりません。自宅のコンピュータですべてを作り、納品までできてしまいます。作曲家に加えて、演奏家さえもいらない時代がきたのです。

 ボーカロイドソフトもさらに進化し、最近では声質なども自分の好みに変えられるようなものができつつあるといいます。音楽業界の変化は甚だしく、生演奏は全体の4割ほどになっていると思います。テレビの世界ではもうほとんどありません。私もボーカ
ロイドを使って、ミュージカルを作ろうと決めました。それがいいことか悪いことなのかはわかりませんが、とにかくそういう流れの中に自分もいる以上は、試してみようと思うのです。

 いま世界中でスシブームです。かつては敬遠されていた日本発信の生の食材が、受け入れられているのです。同じように世界中で日本の漫画やアニメが大流行ですが、出てくる女の子のキャラクターは、みんな若く、スカートが短いのです。いわば一種のロリコンですが、これもスシと同様、日本人が新鮮な食材と同様に年若い女性を好む傾向が、文化を介して世界に伝播したのだといえるでしょう。

 皆さん、とにかく一度は、こういったものに触れてみて下さい。自分は遅れていると感じ、ビジネスへのヒントを見出すか、まったく琴線にふれないか、触れてみないとわかりません。とにかくこんなことがいま起きていると、知っていただきたいのです。