卓話


イニシエイションスピーチ

2009年4月8日(水)の例会の卓話です。

野呂 剛君
桑原 徹郎君

砂糖業界の現状について

大日本明治製糖株式会社
 取締役社長 野呂 剛 君

 最初に大日本明治製糖の歴史と砂糖についての誤解について述べさせて頂きます。

当社の歴史
 当社は1996年に両社とも三菱商事の100%子会社であった大日本製糖と明治製糖が合併して出来た会社です。

 大日本製糖は1895年に東京にわが国最初の近代的製糖会社として発足しました。その後、日清戦争後に台湾が日本に帰属することになり大日本製糖は1906年には台湾に進出し製造及び販売をスタートさせました。一時期は台湾以外でもジャワ、平壌等にも製糖工場がありましたが、敗戦により海外の資産を喪失し国内生産に専念する事になりました。明治製糖は1906年に設立された日本で4番目に古い製糖会社です。明治製菓や明治乳業が明治製糖から巣立っていきました。

 <砂糖を食べると太ったり糖尿病になるという誤解>
 肥満や糖尿病の原因は一日に摂取する総カロリーの取り過ぎであり砂糖とは関係がありません。砂糖1gのカロリーは3.89kclであり3gの砂糖でも12kclにも満たないのです。因みに皆様が召し上がっているパン一個が80kclですから如何に砂糖のカロリーが低いかお分かり頂けると思います。

 実際に、日本では1972年が砂糖の一人当たり消費量が一番多かった年で30kg弱ありましたが、その後大幅に減少して現在では約19kgしかないにもかかわらず肥満や糖尿病が当時よりも激増している事は砂糖と肥満や糖尿病の関連性がない事を裏付けるものと言えるでしょう。

<砂糖業界の現状>
 日本で砂糖が本格的に生産されるようになったのは日清戦争後に台湾が日本に帰属するようになってからです。現在、日本における砂糖の消費量は約220万トンですが、この内約4割である85万トンが国産糖で、残りの約6割である135万トンは、輸入原糖でありタイやオーストラリアが主な供給国です。

1.国産糖について

A.甘蔗糖
 鹿児島や沖縄では砂糖きびの栽培が盛んです。台風に強い農作物であることから栽培されているのですが、一方において沖縄の離島では国土領有権上も重要な意味合いがあります。石垣島や西表島においても砂糖きびが栽培され砂糖工場があります。

B.甜菜糖
 北海道の甜菜糖生産は、戦前は上手くいきませんでしたが、戦後は政府のサポートもあり昭和30年代になってから急速に伸び、更に50年代後半からは品種改良や栽培技術の向上等もあり大幅に増加しました。甜菜は北海道における重要な農作物であり麦や大豆、馬鈴薯と共に輪作に組み込まれた事も追い風になったと思います。現在、北海道には3社8工場が稼動しており甜菜糖の生産は約70万トンあります。

2.精糖業

 海外から輸入された原料糖及び国内で生産された原料糖は、精製工場で精製され世界でも一番高い品質の砂糖となって消費者に販売されます。現在操業中の精糖工場は委託工場を含めて14社13工場あります。会社の数よりも工場の数が少ないのは共同生産工場があるからです。

 精糖業界は、1980年代以降には異性化糖による砂糖消費量の減少や国産甜菜糖の増産、1990年代以降は加糖調製品の輸入急増により砂糖消費量が激減し工場稼働率が悪化し厳しい状況となりました。そのため2000年から産業再生法に基く生産設備の廃棄や工場の共同化、精糖会社の合併が推進されました。

3.日本の糖業政策

 現在の日本の砂糖は国産糖と輸入糖を国が一度買い取り加重平均した価格で精製糖メーカーに売り戻す制度でそのベースとなっているのが2007年10月から施行されている『砂糖でん粉調整法』です。従来からの制度との変更点は、国内産糖と輸入糖との内外価格差是正を図る現行の糖価調整制度の枠組みは維持しながら、甘味資源作物の生産から製造までの各段階におけるコスト削減を推進する事です。この仕組みは消費者に一定の負担があるものの世界の先進国における価格と大きな差はなく何とか機能していると思います。今後、WTOやFTA等の動きもあり業界としても更なる合理化が求められています。

4.世界における砂糖の問題

 19世紀末の世界の砂糖生産量は1,000万トンでしたが20世紀になると急増し現在の砂糖生産量は1億6千万トンです。現在、世界最大の砂糖生産国であるブラジルで砂糖きび生産量の半分以上がバイオエタノールの原料として使用されており食料危機下での新たな問題として一部では批判されています。バイオエタノールは、二酸化炭素の排出がないクリーンなエネルギーという側面もあるため簡単に結論が出せる問題ではありません。

 何れにせよ食料危機の現在、砂糖が割安な健康に良いエネルギー源として見直される日が遠からず来ると思われます。

石油・ガスの探鉱・開発について

ダイアモンド・ガス・オペレーション(株)
代表取締役会長 桑原 徹郎 君

 昨今新聞などを賑わしています一つの題材は、地球温暖化問題に端を発する地球に優しい再生可能なエネルギーです。例えば、太陽光や風力による発電、バイオ燃料、これらのエネルギーがゆくゆくは石油、石炭、天然ガスなどにとって代わって行く、という必要性、そしてその為のあらゆる施策を官民一体となって行なって行かなくてはならない、という論調です。

 私たち人間や、その人間の生活を可能にしている地球上に生息する総ての動植物、そしてそれらの生存を可能にしている地球の自然環境を考えるとき、人は地球をこれ以上壊してはいけない。人類総てがこの考え方に基づいて行動しなくてはならない時が来ているのも事実なのではないでしょうか。

 そのような論点について、エネルギーという観点からはよりきれいなエネルギーを、また、再生が可能なエネルギーを志向することが求められているのも事実です。でも、時間軸と経済性という観点からはどうなのでしょうか?

 再生可能なエネルギーが世界の一次エネルギーに占める割合は水力も含めて昨今約13%程度との統計があります。これが2030年頃には18%程度になるのではと言われています。また、鉱物資源であるウランを使う原子力発電については昨今の6%が2030年には7%にしか増えないという統計もあります。一方、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料は昨今の81%が2030年には75%と、依然として化石燃料に頼らなくてはならない現実があることが示唆されています。(上述の数値はIEA 550シナリオより引用)

 再生可能エネルギーの代表格である、太陽光、太陽熱、風力などは現在から2030年までの間に7倍に成長します。しかし、先に申し上げましたようにその絶対量は多くはなく、石油や天然ガスにとって代わるまでにはまだまだ時間がかかります。また、コスト的にも現在の太陽光発電は現在の発電コストに比べて約4倍のコストがかかります。原子力発電にしましても、発電コストは石油や天然ガスに比べて割安ですが、廃炉コストがどのくらいかかるのか、という問題を抱えています。石油、天然ガス、石炭などの継続した利用の必要性は当面は無くなりません。

 さて、石炭は私の専門外ですので、今日は石油と天然ガスを利用できるようにするための探鉱・開発・生産のみに絞って、残りの時間でお話します。先ず、有限資源である化石燃料がいつまで持つか、換言すれば、消費量に対する埋蔵量である可採年数は、石油は約40年、天然ガスは約60年と過去25年位変化がありません。これは即ち、消費する分新たに見つかっている、と言うことです。技術の進歩がこのことを可能にして来ました。

 但し、簡単に見つかる巨大油田や巨大ガス田は減少していますので、開発にかかるコストは確実に上がって来ています。陸上や海底下数千メートルに埋まっている石油や天然ガスがこの辺にあるであろうと推測する技術、実際に井戸を掘って見つける技術、見つけたものを地表に上げて来る生産の技術、生産をなるべく長く持続する技術、安全性を保つ技術、環境にやさしく生産する技術、コストを低く抑える技術、とあらゆる技術の進歩があって過去四半世紀に亘って可採年数が石油は約40年、天然ガスは約60年に保たれている訳です。

 イギリスやノルウェーが80年代に産油国になったのも、海底下の油田やガス田から生産・開発する技術の進歩があって初めて実現しました。比較的平たく広がった海底油田を水平に掘る技術が代表的なものです。技術の進歩はまだまだ続いていますが、化石燃料は所詮は有限な、いつかは枯渇する資源であり、今出来ることはこれをなるべく大切に使いながら、新規の再生可能なエネルギー源の開発に力を入れて行く、と言うことだと思います。私たち石油・ガスの探鉱・開発に従事する者は引き続きエネルギー資源の確保に努力を重ねて参る所存です。ご清聴ありがとうございました。