卓話


NOSS(日本・おどり・スポーツ・サイエンス)とは

2014年3月19日(水)

日本舞踊 西川流 三世家元
西川右近氏(名古屋RC)


 伝統芸能は大切なものですが、伝統をそのまま若い人達に伝えていって本当に意味があるでしょうか。どんな伝統芸能でも、できた時は新作であったはずです。それを大事に、壊れないように、まるで置物のように次の世代に伝えていくというのは私の性分に合いません。ではどうしたら若い人達にこれを広められるかと思っていた時に、病気をしました。心臓バイパスの手術を2度受けて、動脈瘤を摘出し、腹部から鼠径部まで人工血管です。でも、生きています。生きていればこそいろいろなことができるということで、NOSSという、踊りを元にした運動を作りました。今デイケアやデイサービスなどで、皆さんにこれを楽しんで頂いています。楽しいのは、踊りを踊ったような気分になれるからです。今日はぜひ皆さんにそれを体験していただこうと思います。

 まず、NOSSとは何かというビデオをご覧ください。

<ビデオ上映>
 日本・おどり・スポーツ・サイエンス、NOSS。これは日本舞踊を元に考案された高齢者のための健康体操です。年齢とともに衰える筋肉を動かし、いつまでも元気でいられる、そんなNOSSの魅力をご紹介しましょう。

 「私がこの踊りを考えだしたのは10数年前です。心臓の病気をし、ベッドに寝てしまいました。起きてみると、全体の筋肉が非常に衰えていたことにびっくりしました」(西川氏)

 「これまでも日本舞踊は健康に役立つだろうと言われていたのですが、科学的なデータはほとんどありませんでした。そこで、私達が出来る範囲内で研究しようということになりました」(中京大学体育学部長・湯浅景元教授)

 NOSSを踊った時に使った酸素から消費するエネルギーを測定してみました。NOSSの踊り6分45秒で消費エネルギーは27.5kcalでした。なんとこれはウォーキングに比べて1.3倍の消費量です。そしてこのNOSSを踊っている時の脈拍の平均は79。これは他の運動と比べてずっと低い数値です。

 「つまり心臓と血管に大きな負担をかけないでエネルギーが使えたということです」(湯浅教授)

 一般的に筋肉を鍛えるには最大筋力の50%以上出さなければならないと言われています。背中の筋肉の測定結果を見てみると、NOSSを踊っている時は平均80%以上の筋肉を使っていることがわかりました。

 「ということは、背中の筋肉はもう十分NOSSという踊りで使われているということです。今度は太ももの内側の内側広筋の結果に驚いたのです」(同)

 測定結果を見ると、なんと最大筋力より大きな筋力を発揮しているところが時々見られました。膝を曲げながら腰を沈めていく時などでは、100%を超える筋力を発揮しているのです。筋肉というのは伸ばされながら重さを受ける時に、大きな力が出ているのです。

 「内側広筋、すなわち太ももの筋肉もこのNOSSという踊りによって老化を抑えるだけではなく強化できる、そういう負荷が掛かっていることがわかったわけです。人間が健康を維持するために行う運動とは3つが入っていないといけません。有酸素運動、筋肉運動、そしてストレッチ運動。NOSSを見ますと、この3つがしっかりと組み込まれています。ということは、健康を維持するために非常に最適な運動というわけです」(同)

<ビデオ終了>

 さて、今朝起きてから肩から上に手を上げた方いらっしゃいますか?(挙手多数)。ものすごく優秀です。普段、肩から上に手をあげるということは少ないのです。昔は肩から上に手をあげる動作が多く、例えば電気をつける、ざいはらい(はたき)で掃除をする、洗濯物を干す時に二股になった竹棒で上げるといった運動をしました。右手を上げて、左手で右胸を触って右手を動かしてみてください。胸の筋肉が動いているのがわかります。骨は筋肉でつながっており、筋肉が弱ると動作ができなくなります。

 昔は足も腰も普段から鍛えることができました。和式のトイレで、いやでも屈伸運動をしなければなりませんでした。今の小学生に和式トイレのスタイルを取らせると、後ろに倒れてしまいます。それだけ膝の筋肉が弱っています。それらを補うには、やはり運動です。不活発病や廃用症候群などは、動かさない、動かないからなるのです。

 ちょっとだけNOSSをやってみましょう。いやだなあと思っても、顔はにこやかに。この運動は、にこやかにしてやることに効果があるからです。「日本・おどり・スポーツ・サイエンス」という名前の前半は、日本にあるおどりという意味です。スポーツという言葉は、明治時代に「運動」と訳されたがために、早く走る、高く跳ぶといった競走だと思われがちですが、実はラテン語が語源で、チェスやカードなどのゲームも含まれ、いわゆる娯楽という意味です。ですから、「スポーツ・サイエンス」は、娯楽をサイエンスしようという意味です。

 金沢医科大学の高齢医学科の森本教授が未病学会で、NOSSを踊った時の脳の活性化について発表されました。残念ながら痴呆症には効きませんでしたが、ウツ、閉じこもりに対しては、非常に効果がありました。私の『7分のおどりで筋力強化!』(日本経済新聞出版社発行)にその論文も掲載されています。

 ただ、もう少し医学的エビデンスを出そうと、今年4月から息子を藤田保健衛生大学大学院に行かせ、4年間で医学的なエビデンスを出せるような研究グループを作ろうと思っています。父・西川鯉三郎がやった仕事に替えて、私はNOSSというものを作り、息子がその医学的エビデンスを出すということになると、日本の伝統芸能も役に立つものとして残っていくのではないかと思っています。

 NOSSは、本当は若い人のために作ったのですが、NOSSができあがった時に少子高齢化の問題が出て、役立つのではないかと関心を寄せていただきました。現在、インストラクターのほとんどが通所介護の場に入っています。

 それではNOSSの代表的な動きを説明します。

 立った姿勢は筋肉が伸びたままです。ちょっと腰を落とし、7秒間数え、戻してください。この運動を繰り返すだけで筋肉は発達します。また、NOSSは踊りの女形で踊ります。女形は足を内股にするため、内側広筋を鍛えることができます。少し足を広げて内側に回し、そのまま腰を落とす。膝を伸ばして縮めることを繰り返してください。これが外国にはない、日本が生んだ運動です。

 お辞儀は、頭で下げずに、腰に回転軸があると考え、腰骨を前に回転させると思って上半身を倒し、戻してください。頭だけ下げると猫背になります。胸だけ張るとお尻がでます。そうではなくて、腰の回転で全身を曲げていくのがNOSSの正しい動きです。

 次に、胸のところで手を組んで、女形の足にし、腰を落とし、首を右・左の順に1,2,3と傾けてください。その時、気持ちは18歳です。介護所でこうしたことを言いますと、皆さん、わあっと笑います。それが一つの健康法です。

<その後、ビデオに合わせて実践へ>

 ご協力ありがとうございました。手を打つ、これだけで脳の活性化になります。人間は口を使うことと手を使うことで、いちばん脳が活性化します。最後に一つだけゲームをやりましょう。自分の両手でするじゃんけんで、右の手が常に負けるルールです。グー、チョキ、パーと口にし、考えながら繰り返すことで脳が活性化します。

 人間にはいつの日か衰えが来ます。その衰えを一日でも遅くして、自分の筋力を元に、楽しい人生を送って頂きたいと思います。


     ※2014年3月19日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。