卓話


イニシエーションスピーチ

2007年1月24日(水)の例会の卓話です。

守谷恒夫君、 新欣樹君 

社会の発展に貢献するプラスチック

住友ベークライト
代表取締役会長 守 谷 恒 夫 君

 住友ベークライト蠅亮匐箸魯廛薀好船奪を合成或いは分子レベルで加工することにより,プラスチックに様々な機能を発現、付与し幅広い産業分野に供給することにあります。プラスチックは今や学問としても、産業としても広大な広がりと奥深さを持っています。弊社はそのほんの一部分を担っているに過ぎません。これからの話はプラスチック全体のほんの一部を切り取ったものとご理解いただければ幸いです。

 プラスチックの語源はギリシャ語の“Plastikos”だそうでございます。日本語では合成樹脂と呼ばれ、その定義はJISに「必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料」と規定されています。プラスチックをごく大雑把に分類すると、熱硬化性と熱可塑性に分けられます。

 プラスチックの始まりは熱硬化性のフェノール樹脂です。ベルギー生まれのアメリカ人ベークランド博士によって、ちょうど100年前の1907年に初めてベークライトと言う商標名で工業化が試みられました。日本では、べークランド博士の友人の高峰譲吉博士の尽力によりベークランド博士より1911年にライセンスを受けて、量産化が始められ、日本ベークライト、現在の住友ベークライトに受け継がれてきました。その後、社会の要請に応じ、いくつかの技術革新を経て、様々な性質を持つプラスチックが発明され、用途や消費量の拡大に伴って惹起した社会的な問題を克服しつつ活用されてきました。現在JISには103種が登録されています。新しい樹脂によって新しい用途を開発すると同時に、100年前に工業化されたフェノール樹脂もリニューアルを重ね、今日では自動車の軽量化などに益々活用されています。

 プラスチックの世界の生産量を、1950年から2004年まで、鉄と比べたデータがあります。プラスチックの生産量は年々上昇し、2004年で2.24億トンで、鉄の10.6億トンに比べると約1/5ですが、体積ではプラスチックが2240億リッターで鉄の1330億リッターを上回っています。プラスチックの原料は主に原油由来です。限られた資源である原油をがぶ飲みしているのではないかとの疑念も出てきますが、決してそのようなことはありません。石油化学工業協会の2003年版統計資料によりますと、プラスチック材料として使用されたのは、原油および輸入ナフサのうち6.3%でした。又、生産に必要な単位体積(1リッター)あたりの原油量(エネルギー量)を金属材料と比べてみても、鉄が3.78リッターに比べ、プラスチックの中では多消費型であるポリカーボネートでさえ2.66リッターです。プラスチックは優れた材料ですが、時代が進化するにつれて、まだまだ多くの課題を抱えています。限りある資源の有効活用の度合いを一段と高めること、製品の安全度や環境に対する配慮を飛躍的に高めることなどが必要です。さらには原料ソースの多様化も望まれています。

 私はプラスチック産業に従事する一員として、今後も、微力ではありますが、身近に出来ることから、その解決に取り組んでいく所存です。

原子力の話
日本原子力発電

代表取締役副社長 新  欣 樹 君
 
 世界では今、「原子力ルネッサンス」といわれるように、原子力に対する積極的再評価が行われています。アメリカでは、政府の強力な優遇措置もあって、30基余りの原子力発電所の新設が計画され、ヨーロッパでも、フィンランドとフランスで、具体的建設計画が進められています。イギリスもエネルギー政策の見直しが行われ、原子力発電所の新設を真剣に考える政策に変わってきています。また、中国、インドやインドネシア、ヴェトナム、オーストラリア、カザフスタン、エジプトさらには中東湾岸6カ国までもが、原子力発電を計画したり、関心を表明しています。

 こうした動きとなった理由は2つあります。第1は、エネルギー安全保障意識の高まりです。中国やインドなどの石油需要の急増がある一方で、供給はピークオイル論が叫ばれるなど、中長期的には石油需給の逼迫が予想されるため、各国が、エネルギーセキュリテイに敏感になり、改めて非化石エネルギーである原子力が見直されたということです。第2の要因は、地球環境問題です。地球温暖化の原因となるCO2の排出を抑制するため、風力発電や太陽光発電などの導入が図られましたが、供給の安定性や経済性などに課題があって、現時点では基軸エネルギーとはなりがたいとの認識が広がり、原子力に再び注目が集まったということです。

 日本の状況ですが、現在55基、約5000万KWの能力の原子力発電設備があり、原子力発電比率は3分の1となっています。最近の石油価格の高騰によっても日本経済はびくともしていませんが、これは、2度のオイルショックの経験を経て、日本が石油備蓄や,省エネルギーを徹底したこと、それに原子力の開発利用を推進してきたことの成果であります。

 国は、この1,2年、「原子力政策大綱」や「原子力立国計画」という方針を打ち出して、原子力推進の方向が再確認されました。2030年以後も原子力発電比率を、3〜40%程度ないしそれ以上にする、核燃料サイクル路線を着実に推進する、ということが国家目標とされたのです。その過程で、原子力の新増設についてのいくつかの新しい動きも始まりました。

 高速増殖炉については、原型炉である「もんじゅ」が長期間運転停止状態にありましたが、地元のご理解も進んで、来年にも運転再開できる条件が整いつつあります。高速増殖炉の実用化の見通しは、「原子力立国計画」では、「2025年ごろまでに次のステップである実証炉の実現を目指し、2050年よりも前を目指して商業ベースの導入を開始する。」というシナリオが描かれています。

 こうした原子力推進にあたって大きな課題を3つだけ申し上げます。第1は、「安全の確保」です。原子力関係者は、「安全第一」の重要性を痛感しておりますが、近年では、単に「安全」にとどまらず、「安心の確保」が重要視される時代となってきています。その意味でこれまで、データの隠蔽や改ざんといった信頼性にもとる行為が見られたことは否定できず、深く反省して、今後社会の信頼を勝ちうる努力を続けてまいります。

 第2は、「高レベル廃棄物の処分」の問題です。再処理をした後の高レベル廃棄物は、ガラス固化して地層深く埋設処分する方針ですが、処分地が決まっておりません。地方公共団体からの公募により候補地を選定する手筈で、原子力発電環境整備機構が中心となって手続きを進めている途上にあり、関係者一体となって努力してまいります。

 第3は、「原子力の平和利用」に徹することです。北朝鮮の核実験以降、日本も核兵器を保有することの是非の議論がありますが、核兵器を持つことは、核不拡散条約を中心とするNPT体制から離脱することであり、そうなればウランなどの対日供給はストップされ、日本の原子力活動そのものに大きな支障が生じます。これは日本のとるべき道ではないと思います。