卓話


オーストラリアと日本 欠かせないパートナーシップの将来

2005年11月9日(水)の例会の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

駐日オーストラリア大使 
H.E.Mr. Murray McLean OAM

第4078回例会

 オーストラリアと日本は,これまで互いの経済発展を支え合い,今日の幅広い二国間関係を築いて来ました。もし,互いの存在がなければ,両国はどうなっていたかを想像することは難しいことです。 

 日本は,石炭や鉄鉱石など,オーストラリアからのエネルギー資源の安定した供給なしに,戦後の経済発展を支えた自動車や鉄鋼産業を発展させることができたでしょうか。オーストラリアは,日本からの多大な投資と最先端製品の供給がなければ今ごろどうなっていたでしょうか。両国は,確かに互いの存在なしに,これほど豊かな国にはなれなかったでしょう。年月を重ねて日豪関係が深まり,新しい分野へと関係を拡大するにつれ,これは,より一層の真実味を帯びてきます。  

 基盤となる日豪経済関係
日豪貿易関係は,両国の補完的な貿易関係を基盤に,オーストラリアにとって最大の貿易関係に発展しました。とりわけ,オーストラリアの天然資源が日本の産業発展に貢献するという形で,二国間関係は発展し,両国は互いに不可欠なパートナーとなりました。 

 オーストラリアは,エネルギー,自動車,鉄鋼業などの,日本の主要産業を支える石炭と鉄鉱石の半分以上を供給しています。オーストラリアは,日本にとって主要なLNGの供給国であり,他の重要な鉱物の供給国でもあります。オーストラリアは,天然資源だけではなく安全で質の高い農産物ならびに食品の信頼できる主要供給国でもあります。

これまでの日豪の貿易関係は,オーストラリアが原材料を日本に輸出し,日本が製品をオーストラリアに輸出するというパターンを踏襲してきました。これは,両国の競合優位性を活かしたものであり,相互に多大な利益をもたらしてきました。

 現在のオーストラリアは炭鉱と農場があるだけの国ではありません。実は農業はわが国経済の3.6パーセント、資源部門は6.4パーセントをしめるに過ぎないのです。我が国は,金融,教育,ビジネスサービスなどの質の高いサービスや最先端の研究,また高付加価値製品の供給を増やしています。これは日豪関係にある程度反映されていますが,両国間の経済的機会を最大限に活かすために今後さらなる努力が必要です。

 安全保障と政治的関係
ここ数十年で,日豪関係は,経済のみの関係をはるかに超えるものになりました。ハワード首相は,日本を地域で最も近い友好国と表現しました。日本との関係の深さと幅がこれを裏付けています。

日本とオーストラリアは,東アジアでの北と南に位置し,価値観を共有する国として,域内の安全保障と安定,また互いの国益につながる重要な戦略的利益やその他の利益を共有しています。両国は,共に市場経済型の多元的民主主義国家です。両国は政治問題や安全保障問題において,基本的な戦略的国益を共有し,緊密な協力を行っています。そしてほとんどの場合,同じ視点から地域の問題に取り組んでいます。

オーストラリアは日本と共に,地域の安全保障において,米国の果たす,強くゆるぎない役割に対してコミットしており,米国がそれぞれの同盟関係を通して,地域において関与することを強く支持します。イラクにおける協力は,両国が国際問題に対するアプローチを共有していることを示す象徴であり,東ティモールとカンボジアでの協力を基盤とするものです。両国の共通の利益は他の分野でも見られます。それらを挙げてみます。

・効果的な国連改革についての相互協力
・ASEAN地域フォーラムやAPECなどを通して,他国間の安全保障フォーラムやそ
の他の協議メカニズムのさらなる発展
・東南アジア諸国への支援を進めるためにテロの脅威に対する取り組みでの協力
・大量破壊兵器の拡散防止のための協力
・ 地域の人身売買阻止に向けた取り組み
・「クリーンな開発と気候のためのアジア太平洋パートナーシップ」のメンバーとしての協力
・ヒトからヒトへ感染する鳥インフルエンザの発生事態に備え地域的世界的メカニズムを整備するための協力
両国の関係,両国共通の価値観を土台としており、共に自由民主主義国家としての原則に強くコミットしています。

日豪関係を支える地域社会
相互の理解と評価を深めるメカニズムとして「ワーキングホリデー制度」があります。1980年以降,10万人以上の日本人と7,000人のオーストラリア人が互いの国に渡り,仕事に就いてきました。日本政府が実施しているJETプログラムもあり,人と人の交流が二国間関係の下支えになっています。このような交流を通じた絆の強さは,日本語が我が国の学校で最も人気の高い外国語となっていることからも分かります。

 未来への更なる機会
今日の日豪関係は強固かつ成熟したものです。今後も日本とオーストラリアには,大きな機会が待ち受けています。

 経済的成果をつかむ
 経済分野において,オーストラリアは日豪関係の深さと幅広さを見ても,次のステップとして,包括的な自由貿易協定(FTA)を検討する段階にきていると考えています。

現在,オーストラリアは日本とのFTAに関するFeasibility study(実現可能性研究)を行っています。日本のモデル分析によると双方向の貿易において関税を削減すれば,日本のGDPは0.13%上昇するそうです。金額にして6,500億円になります。

 FTAはモノの貿易だけでありません。サービスの自由化,関税協力,知的財産の取り扱い,投資専門家の移動,その他の貿易促進措置など,幅広い経済イニシアチブも含まれます。FTAはモノの貿易を自由化するだけではなく,域内最大の経済国である両国の基本的な統合を促進するものです。

両国の経済をより緊密に統合させることによって,FTAは日本の目標とする食糧とエネルギーの安全保障にも寄与し,広範な地域のイニシアチブにおいて,より緊密に協力するうえでの,より強い基盤を作ることになります。日豪のFTAは,両国が他国と交渉中,及び交渉を終えた別のFTAの結果として,経済界が被る不利益を解消できます。

よく,FTA締結を阻むものとして農業が取り上げられます。我が国は大規模かつ効率的な農業生産国ではありますが,実際のところ,新しい農産品の輸出によって日本市場を圧倒するほどの力はありません。日本の農業分野はオーストラリアの同分野の2.6倍の規模があり,オーストラリアは特に水の供給という点で農業生産が大きく制約されています。

 今年終了した両国間の共同研究では,日豪FTAはオーストラリアの食品・農産品の対日輸出を5%増やすに過ぎないとしています。また,日豪FTAを通して日本の農業の効率は高まり,日本の農産品の世界への輸出が増えるとしています。

日本にいくつかのセンシティブな分野があることは承知していますが,オーストラリアは,他国とのFTAを通してセンシティブな分野に柔軟に対応できることを示してきました。農業は乗り越えられる問題なのです。

平和と安定のための協力
安全保障においても,日豪関係は深まろうとしています。テロとの闘いにおける日豪間の継続的協力が,日豪関係の鍵になります。

オーストラリア国防軍と日本の自衛隊との交流は活発です。日本,オーストラリア,米国が,閣僚レベルの3ヵ国間安全保障対話を実施することで合意したのは安全保障協力における重要な一歩です。私たちは,東アジアサミットの初回参加国として,地域の形成や,経済発展や平和と安全保障に対して貢献する,またとない機会に直面しています。

2006年日豪交流年
来年はオーストラリアと日本の「2006年日豪交流年」に指定されています。年間を通して二国間交流に力を入れることにより,日豪関係をさらに広げ,深めることを目的としています。芸術,文化,政治,ビジネス,教育,科学技術,スポーツ.観光,社会とライフスタイルなどを含む,さまざまな分野での交流活動が行われる予定です。

結論
地域の安定と繁栄ならびに国際安全保障の強化に対して,国益を共有する日豪両国は,幅広い問題において,さまざまな形で協力を進めています。二国間でも地域間でも,重要なパートナーとして両国はさらに協力を深める必要があります。

国際社会における日本の役割の拡大や,両国のさらなる経済統合,また相互利益となる地域・国際問題についての日豪の協力において私は長所しか見つけることができません。