卓話


イニシエイションスピーチ

2012年12月12日(水)の例会の卓話です。

武藤敏郎君
池田泰弘君(掲載していません)

活力ある高齢社会へ

蠡舅汰躙Α〕事長 
武藤 敏郎 君

 我が国の65歳以上の人口比率(高齢化比率)は1994年に14%を超えました。現在では23%を超えています。国連によると、この比率が14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と定義されています。我が国は既に超高齢社会に突入しています。

 人口の高齢化が進むと、年金、医療、介護をはじめ社会保障給付費が増加します。社会保障給付の財源は、約50%は保険料、約40%は公的負担、残り約10%が受益者負担などです。現在では、社会保障給付費は100兆円を超え、公的負担は約40兆円に達しました。この公的負担増に対して、公債の発行によって対処してきた結果、政府債務が累増し、政府債務残高のGDP比は200%を超えるに至りました。さる8月、社会保障財源に充てるために消費税率を10%に引き上げる法律が成立しました。財政の健全化に向かって大きな一歩を踏み出したといえます。

 しかし社会保障と税の一体改革として打ち出された今回の消費税引き上げは、我が国の高齢化比率が2050年から2060年にかけて40%に達すると見込まれる超高齢社会における国民負担の在り方という長期的観点からみると、小さな一歩にすぎません。大和総研では、長期的観点から社会保障サービスの水準と国民負担の関係を試算しました。これを紹介したいと思います。

 社会保障サービスの水準は、65歳以上の高齢者層が受け取る社会保障給付の一人当たり金額が、生産年齢人口の一人当たり所得額の何パーセントに相当するかで表すことができます。

 現時点では、この比率(所得代替率という)は約80%となります。所得代替率80%を維持したまま高齢化比率40%を迎えると、社会保障保険料と税負担を合わせた国民負担率は、2060年には約70%となります。現在の我が国の国民負担率は約38%です。70%という高い国民負担率は、民間経済の活力を奪うことになり望ましいとは思えません。

 2060年の我が国の国民負担率をドイツやフランスの国民負担率を参考に50数%に抑えるとすると、所得代替率を30%カットする必要があります。この結果社会保障水準は現役層の所得の50数%となります。
 
 このような所得代替率と国民負担率の組み合わせは、高齢者の安心と現役層の活力の維持を考え合わせると現実的なものではないかと考えます。

 所得代替率すなわち社会保障サービスの水準を30%引き下げるためには、年金については、年金額のマクロスライドを行うとともに、支給開始年齢を引き上げること、所得がある高齢者の年金を減額することなどが考えられます。

 医療については、社会的入院を介護に代替すること、患者自己負担を工夫して過剰な診療を抑制すること、いわゆるジェネリックを活用して薬代を節約することなどが考えられます。介護については、ケアハウスなど民間活力を活用して効率化・合理化を図るなど様々の取り組みがなされています。

 また、このような社会保障サービスの需要の増加は、新しい産業が創出される機会となります。高度医療機器、高齢者向けの医薬、介護器具の開発、住宅や都市の高齢化対応など様々なビジネスが立ち上がって行くでしょう。さらに元気な高齢者が生きがいを持って働くことができる雇用の創造も考えられます。

 私は、以上の観点から「活力ある高齢社会建設計画」を策定し、これから10年、20年、30年後の目標を示して計画的に施策を実施していくことが必要ではないかと考えます。

 韓国は2020年代後半に、中国は2030年代後半に超高齢社会になります。日本は世界で突出した超高齢社会ですが、日本が持続的で活力ある超高齢社会の建設に成功すれば、これらの国々に経験とノウハウを提供することができ、世界に模範を示すことができます。