卓話


特殊紙とは何か〜その過去、現在、未来

2017年3月29日(水)

(株)巴川製紙所
取締役社長 井上善雄君


 特殊紙には明確な定義がありません。敢えて定義するとしたら「普通一般の紙とは異なった特性を有し特殊な用途に向けられる紙」とでもなるでしょうか。特性や用途から当初は特殊紙と分類されても、コモディティ化が進行し、やがて一般紙へと移り行くものもあります。

 紙は中国で発明され、後漢時代の105年に宮廷に仕える宦官(かんがん)であった蔡倫(さいりん)という人によって集大成されました。洋紙の製造工程を大別すると、木材チップから繊維を取り出すパルプ化工程と、このパルプを紙として抄き上げる抄(しょう)紙(し)工程になります。

 生産スケールの側面からは、専用抄紙(しょうし)機にてパルプから抄紙工程まで一貫生産される紙が一般紙、購入パルプを用いて多目的抄紙機で少量多品種生産される紙が特殊紙であると分類定義できます。

 103年前の当社創業当時には、電気絶縁紙や電気通信用紙といった国内生産ができず海外からの輸入に頼っていた紙を始めとし、未だ一般紙化していない包装分野の薄口の紙や、現在では特殊印刷用紙に分類されているファンシーペーパーといった装飾性の高い紙の需要など、多種多様な特殊紙の需要が形成されていました。

 その後、高度経済成長が産業用紙や情報用紙といった各種特殊紙の需要を喚起し、また、技術的には加工手段の「含浸(がんしん)」「塗工」「貼合せ」技術が発展したころから、各種記録紙に代表される特殊加工紙が生まれました。

 特殊紙事業は、一般紙に比べて技術革新の影響を強く受けます。当社の製品を例にとれば、コンピュータプログラミングに用いられた統計カード用紙は、入力システムの変更でやがて不要となり、当社創業以来の製品である電気絶縁紙もプラスチック材料の抬頭(たいとう)で、やがて用途が限定されることになりました。

 1980年代に入ると、需要が急速に拡大してコモディティ化が一挙に進行した感熱記録紙のような特殊紙があった一方で、化学繊維、無機繊維や金属繊維を原料として抄紙した本来の「紙」の範疇(はんちゅう)には入らず「湿式(しっしき)不織(ふしょく)布(ふ)」として定義される非植物繊維系のシートも総称して「機能紙」とするとの概念が生まれ、さらに2000年頃には、特殊紙と機能紙が合体した「特殊機能紙」という呼称も生まれ、現在に至ります。

 特殊紙製品の多くは、最盛期が比較的短くて製品寿命も余り長くはありません。その中で、特殊紙事業が衰退せずに現在も存続していることは、特殊紙に携わる先達が、常に新しい着想や新しい素材を求め、新しい技術開発を行い、独創的な新分野を創造してきた結果であると考えます。

 第四次産業革命、IoT(Internet of Thing)の時代を迎える中、比較的小さい回路で高電圧・大電流・高周波数に対応する為、発生する熱や絶縁破壊、そして電磁波をコントロールする必要が生じつつあります。私はこの熱・電気・電磁波コントロール材料という新たな市場で、無機材料の繊維シートや、少量の木材パルプをバインダーとして無機の粉体を高密度でシート化した特殊紙が活躍するものと期待しています。先人達が範をもって示した開拓者精神をもって、その実現に邁進するつもりです。


コンクリートの話・電柱の話

2017年3月29日(水)

日本コンクリート工業(株)
代表取締役会長兼CEO 網谷勝彦君


機ゥ灰鵐リートの話
1.コンクリートのイメージは
 鉄と並び、土木・建築の素材として安全・安心なインフラ整備に欠かせない材料ですが、どうも社会的な評価には「差」があるようです。

 東京RCに入会した際も「コンクリート製品製造・販売」という業態分類は、私一人の為に用意されたようでした。極め付けは、民主党政権の発足時「コンクリートから人へ」とされたことです。社長であった私はコンクリートに関(かかわ)る人達の士気を憂(うれ)い「人と暮らしを支えるコンクリート」というコピーで、そっと抵抗しました。民主党政権の人気も今ひとつでしたので、この抵抗に世間からお咎めはありませんでした。

2.コンクリートとは
 砂、砂利、水をセメントで凝固させた材料です。この比率を土木学会では「配合」、建築学会では「調合」と呼び、配合(調合)によって「強度」が違ってきます。

 高強度コンクリートという表現を高層マンションの広告でご覧になっていませんか。超高層マンションには「超高強度コンクリート」が大いに寄与しています。

 コンクリートは「圧縮力」には強いが「引張力」には弱く、鉄筋を入れた「鉄筋コンクリート」としての使用が圧倒的です。さらに大きな引張力を得るために、あらかじめ圧縮力をかけておく「プレストレストコンクリート」も広く世界で活用されています。

3.コンクリートの歴史
 2000年前のローマ時代に遡り、「ローマンコンクリート」と呼ばれているのが最古です。

 現在も残るパンテオンは、鉄筋を使用していないコンクリート建築としては世界最大のコンクリート製ドームです。ローマ建築はコンクリートを利用したことにより、石やレンガでは困難だった斬新な建築が可能となりました。

 ローマ時代の建築物が多く残っているのは、コンクリートの耐用年数からと説明されています。この長寿命の秘密は、ここ10年の日本の研究により解明され、現在のコンクリートとローマンコンクリートを比較すると強度では差がないとされており、ローマ人は馬の毛を混ぜるとひびが入りにくくなること、血を混ぜると凍結に強くなることも知っていたそうです。

 2000年前の知恵は、ローマ帝国が滅亡すると同時に姿を消し、現在と同じコンクリートが出現するのは、産業革命後の18世紀になります。

4.これからのコンクリート
 ・長寿命化
  建設省(現国交省)が1998年にまとめた「建設省総合技術開発プロジェクト」では、500年以上も可能とされており、「百年コンクリート」は今後常識化するのでしょう。

 ・プレキャスト品が主流に
  地震で構造物が崩壊した際、現場打ちコンクリートの中に、異物(缶やビン類)が混入している写真を目にした経験があると思います。現場管理、品質管理から、急速に工場生産品に移行しつつあります。

供ヅ澱譴力
1.無電柱化推進法の策定
 昨年12月に参議院で可決成立し、推進の準備体制が整いました。目的は3つ、‥垰堝始の防災機能強化安全かつ円滑な歩行者空間の確保E垰垠粉儻上とされ、既存の電柱3,500万本をなくす始まりです。実は、弊社の主力製品にこのコンクリート電柱があり、無電柱化には関心があるのです。

2.架空から地中化への道
 国策として推進するにも、簡単ではないという認識が必要です。
第一に膨大なコスト。地中化は電柱の10倍以上のコストを要し、1kmに4〜5億円と想定され、全国3,500万本電柱の地中化は、500兆円を超えるコストとなります。
第二に時間。400m〜500mの地中化工事に7年というデータもあり、民意の同意には、託児所の開設と同じような丁寧さが必要です。

3.提案
 骨太な長期的な推進計画が必要で、その枠の中で見える目標を伴ったプログラム策定です。健全な財政も視野に無電柱化の負担を吸収していかねばなりません。
 長期的な取組みを想定すると、他施策も必要です。
 地震に強い町に液状化対策。歩行者の安全に細径電柱。景観向上に蜘蛛の巣電線の整理などが思いつきます。