卓話


プラスチックごみを減らし、きれいな環境と生き物を守る

2021年10月6日(水)

東京大学博士課程
米山奨学生


 留学のために来日してから7年が経ち、現在、私は東京大学農学生命科学研究科博士後期課程に在籍しています。今年4月から米山奨学生になりました。 博士論文研究では、環境に優しい新型プラスチックの開発をテーマにしています。近い将来、世界で起こっているプラスチックによる環境破壊問題に対する学術的な解決策を提案したいと思っています。

 今日は“プラスチック”をキーワードに、いま世界的に大きな問題となっているプラスチックごみについて、私が日本に来てから学んだことを皆さんにお話しします。

 一般に普及しているプラスチックは、 石油を原料とした石油合成プラスチックです。軽くて丈夫で長持ちである上に熱によって変形することが可能であるため、様々な用途に用いられており、プラスチック製買い物袋はそのうちの一つです。

 石油由来のプラスチックは有限な資源であり、近い将来に枯渇する恐れがあるとされる石油を原料としています。そのため、このまま利用を続けていると、いつか新しいプラスチックを生産できなくなります。また、製造過程で大量のエネルギーを必要とし、最終的に焼却処分する場合は二酸化炭素を新たに放出するため、地球温暖化を促進させるデメリットもあります。

 さらに、これら石油由来のプラスチックは、自然環境において微生物などによる分解を受けにくく、自然界に流出すると、人の健康や生態系に影響を及ぼす事が懸念されます。過去の世界プラスチック総生産量は83億トンを超え、うち63億トンがゴミとして地中に埋められるか海洋へ投棄されており、リサイクルされているのはわずか9%に過ぎません。

 すでに海洋生物への影響も出ています。クジラやウミガメ、イルカ、海鳥などがエサと間違えて捕食すると、プラスチックは消化されないため胃の中に残り、エサが食べられなくなって死んでしまいます。そして、海にはすでに1億5000万トンものマイクロプラスチックのごみが浮遊しており、2050年にはその重量が海洋生物の重量を超えるという試算もあります。

 7年前、初めて日本に来た時にびっくりしたことがあります。普段ゴミを捨てる時、燃えるゴミ・プラスチック・紙類・ビン・缶・ペットボトルなど、細かく分けなければなりません。そのお陰で、日本では現在家庭ごみとして回収されたプラスチックの約 80%が有効にリサイクルされています。

 皆さんがご存知の通り、日本では去年の7月1日からレジ袋が有料になりました。では、プラスチック製買い物袋の有料化とプラスチックごみの削減には、いったいどのような関係があるのでしょう。

 端的に言うと、直接的な関係はありません。プラスチック製品のごみ問題を一般社会に広く知らしめるための“意識改革の象徴”であり、レジ袋有料化をきっかけとして、プラスチック製品についてもう少し知識を深め、賢く使って、地球環境に負荷をかけないように正しくごみ処理をしましょうという宣伝です。

 しかしながら、他国ではそもそもプラスチックの分類回収ですら実現されていないのが現状です。プラスチックによる環境汚染問題への取り組みを日本だけが行っても意味がありません。やはり世界の国々が一緒に取り組んで初めて多少の効果が表れると考えられます。

 もし日本が新たな材料を開発することが出来たなら、日本国内だけではなく、他国とも連携して、さらなる発展を促進しなければなりません。これは日本に限ったことではなく、何かいい技術を習得した国があればそれを世界中で共有したほうが良いと思います。

 もはやプラスチックごみ問題は世界的な大問題で、早急に対処しなくてはならない段階にあります。そんな中で国や個人の研究開発で得た良い成果を出し惜しみしていては、最終的に自分や自分の子孫を苦しめることになると気づくべきだと考えます。

 日本政府や世界各国政府の取り組みに加えて、私たち一般人はどう行動すればいいのでしょうか。問題を解決するには、日本発の「3R運動」をさらに世界レベルで推進していくことが大切だと思います。

 「3R運動」の3Rは3つの英単語で出来ています。Reduce, Reuse, Recycleを指しています。この3つの単語について簡単に説明します。
 Reduce: 日本語で“減らす”です。まずはプラスチックゴミの発生を抑制することです。例えば、プラスチック容器の製品は買わない、使い捨ての買い物袋を使わないなどです。

 Reuse: 日本語で“再利用”です。プラスチック製品を使用後も廃棄することなく、再利用するということです。例えばプラスチック容器を洗浄して使ったり、分解されにくいプラスチックを使い捨てるのではなく、長期間使う製品に使用したりすることなどです。

 Recycle: 日本語で“再資源化”です。廃棄されたプラスチックゴミを分類分別して、有用な素材を取り出し、別用途で再利用していくことです。

 プラスチックごみ問題を解決するためには、私たち一人一人が、3Rに取り組むことが大切です。そして、ロータリーの活動を通じて、人類共通のレガシーである「環境」を守ることが重要だと信じています。これまでに、ロータリーでは天然資源の保全と保護を促進し、環境の持続可能性を高め、人と環境との調和を促す活動を沢山行ってきました。これらの活動に従事したロータリアンは、問題に気づいて、解決策を一生懸命に探してきました。しかし、プラスチックごみのような世界的問題とあっては、どんなに機知に富むロータリアンでも気が遠くなってしまうでしょう。ですから、この複雑な問題を小さく分割し、少しずつ改善できれば良いと考えます。

 ここからは、私が行ってきた研究について簡単にお話します。

 私の研究課題は新規生分解性プラスチックの開発と実用化です。生分解性プラスチックとは石油由来のプラスチックと違い、生物資源からなるプラスチックで、使用後は自然界に存在する微生物のはたらきで最終的に水と二酸化炭素に分解されるものです。

 現存のプラスチックを生分解性プラスチックに置き換えることで、仮に製造者や使用者の意図しないところで海洋にプラスチックが流出したとしても、プラスチックごみの生成を爆発的に抑制できる可能性があります。

 そして最近、私達の研究グループは日本海洋開発機構(JAMSTEC)と協働で私達の研究 室で作成した生分解性プラスチックを有人潜水調査船「しんかい6500」を使って水深5000m以下の深海でプラスチックの分解性を確かめるというおもしろい実験を開始しました。自分も参加者として「しんかい6500」の支援母船に乗りました。

 発展途上国などでは特に、プラスチックごみ問題に対する対策がまだまだ不十分です。自分が卒業した後、今まで研究してきた環境に優しいプラスチックに関する仕事をし続け、日本で習った知識を活かし、新しい技術や材料を世界に普及させることにも努めたいと考えています。

 将来は、中国に帰って日本と中国の間での技術交流を促す役割も果たせるように、仕事や研究を通じて自己実現と社会貢献を行いたいと思います。

 プラスチックと私の研究の話は以上です。
 この度は、東京ロータリークラブから奨学金をご支援いただき、誠にありがとうございます。もともとはアルバイトや大学のティーチングアシスタントをして学費と生活費の一部を補填していましたが、米山記念奨学金のご支援があり、博士課程3年目の今、最も忙しい時期に、研究と博士学位取得のための勉強に集中できるようになりました。

 今年 4 月から米山奨学生になり、もう半年が経ちました。例会は2回しか参加できていませんが、しっかりと最後まで真面目に留学生活を送り、卒業しても立派な社会人として自立できるよう努力致します。

 最後になりましたが、ご支援をくださった全ての方々に心よりお礼申し上げます。


    2021年10月6日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。