卓話


イニシエーションスピーチ

2005年12月7日の例会の卓話です。

鹿島光一君 
中澤忠義君

書籍販売の潮流

衄重洲ブックセンター
代表取締役副社長
鹿島光一君

 私共、書籍販売業は本離れ、活字離れといわれる厳しい向かい風が吹いています。1996年をピークに7年連続の売り上げの減少でしたが、2004年度は8年ぶりに前年を上回ることができました。景気の回復といった理由はあると思いますが、私は業界の前向きな取り組みの結果であったと考えています。本日はそのいくつかの例を皆様に紹介させていただきます。

書店はここ近年、読者のさまざまなニーズに対応するために、大型化と複合化が進んできています。現在1000坪以上の書店は全国に20店舗あり、全国の読者によりよい環境になってきています。しかしアジア各国においてはすでに2000坪以上の書店があり、近年の出版点数の増加に対応するためには、今後日本の書店も2000坪以上のメガブックストア時代になっていくと思います。

最近の書店は、従来の本を探すこと自体を楽しむ方にプラスして、本以外の何かをお求めになる方に対応するため、書籍販売を中心とした複合化が進んでいます。複合化の中で特に組み合わせが良いのはカフェと本です。いまや本で売り上げを確保し、コーヒーで利益を上げるビジネスモデルが確立されています。音楽のCD、ビデオやDVDなどメディアを販売するなどして、ほかのメディアと書籍を一緒に販売する方法も盛んです。このように書店は、大型化、複合化、専門店化することで、本を購入するという目的のみならず、書籍を中心としたエンターテイメント性豊かな場にかわってきているのです。

次に、私共の業界はインターネットの出現により大きな変化をもたらしました。インターネット書店は、検索システムの充実、決済方法の多様化、物流システムの改善によって大変便利になってきています。さらにネットで注文して、コンビニエンスストアや書店で決済と書籍の受け取りを行える送料無料のシステム、いわゆるクリックアンドモルタルが実現されたこともインターネット書店を一層躍進させました。

最後に業界全体の取り組みを紹介させていただきます。

業界が、近年特に力を入れているのが小学校における本の読み聞かせです。法律としても平成13年度・2001年に「子供の読書活動の推進に関する法律」として施行されました。子供たちが本に触れる機会が減っているという問題は、ロータリアンの方々も大変危惧されていると思います。私も読書は日本の文化を守る大切なことであると認識しており、支援していく所存であります。出版社を取り巻く環境も変わってきています。

現在 世界のボーダーレス化が本の世界でも起こっています。世界のいいものを日本に、逆に日本のいいものを世界に発信する時代になっています。その他、絶版本の復刻や、充実したコンテンツの高価格本、あるいは装丁にこだわっている豪華本などの高付加価値のある本を積極的に出版するようになり、文化の発展に寄与しています。

以上ご説明したように、書籍業界は、出版社、物流、書店が三位一体となり、さらには、印刷、製紙業など紙に携わる業界とともに進んで日本の文化を守り、育てていこうとした結果、8年ぶりに売り上げを伸ばすことが出来たと私は思っています。

最後に申し上げておきたいことは、書店を歩くと、本の積み方、本の置かれている場所、タイトル、本の匂い、紙の質感、などあらゆる情報が五感に訴えかけてきます。そのような書店を、是非時代を読むツールのひとつとして使っていただきたいのです。また、私はインターネットで本を買うだけではなく、なぜ書店が必要であるか次のように考えています。「来てくださった方が手ぶらで帰るのは悪い書店、ほしい本が手に入るのは普通の書店、ほしい本とは別の本を選んでしまうのが良い書店」是非皆様にはご自身と合う書店を選んでいただき、本の杜を散歩していただくことをお願いいたします。

東京工業品取引所 特別顧問
 中澤 忠義 君

商品先物市場(石油・貴金属など)について
 
 高値圏で変動する商品市場
 今世紀に入り、「商品」(commodity)の価格は世界的な上昇局面に入りました。その代表例が原油です。4年前20$/バレル程度であった原油価格は、本年8月には69$/バレルまで高騰しました。この間、金・白金等の価格も2倍近く上昇しました。

こうした商品価格高騰の原因の第一は、中国をはじめとするアジア諸国の急速な経済成長に求められます。これらの国々は、従来の資源輸出国から輸入国に転じ、しかもその購買量を急速に増やしています。

 第二に、中東地域における紛争の多発や主要先進国の通貨不安等々に起因するインフレ・ヘッジのために、ファンド資金が「商品」に注目し始めたことが挙げられます。これらのファンド・マネーは、ニュースに鋭敏に反応し、商品先物市場においては、しばしば価格のオーバーシュートと大きな価格変動をもたらし、上昇局面に入った商品市況を牽引する役割を果たす結果となりました。

 我が国の商品先物市場
 我が国の商品先物市場は、昭和25年の商品取引所法制定以来、50年余りの歴史を有しており、現在では東京工業品取引所(以下、「東工取」)や東京穀物商品取引所など全国に7つの
商品取引所が存在します。

 主な上場商品のシェアは、石油が約5割、次いで貴金属と農産物がそれぞれ2割強、その他はゴムや非鉄金属等となっています。

 東工取は1984年、繊維・ゴム・金の3取引所が合併して発足しました。繊維は2000年に上場廃止となりましたが、1999年にガソリン・灯油が、2001年には中東産原油が新たに上場され、
現在では貴金属・ゴム等を含めて10品目の商品が取引されています。

 合併後の20年間で出来高は30倍となり、国内シェアの5割を占めるに至っています。

 世界の取引所
 世界の商品取引所に目を向けますと、第1位はニューヨークのNYMEX(エネルギー・金属)、以下、大連商品取引所(大豆等)、東工取、ロンドンのLME(非鉄金属)と国際石油取引所、
上海先物取引所(銅・ゴム)、中部商品取引所(石油製品)、東京穀物商品取引所(大豆・コーヒー等)と続いています。

中でも、ここ数年、急成長を遂げている中国の取引所が注目されます。

 これらの取引所の間では、経済のグローバル化の進展にともない、市場間の価格の連動性が高まると共に、市場の効率性・信頼性を競う取引所間競争も活発化しています。

 我が国商品市場の新しい動き 本年5月、我が国の商品取引所法は6年ぶりに抜本的な改正が
行われました。

 その目的は、商品の価格変動リスクのヘッジ(保険つなぎ)の場としての商品先物市場を一層整備し、産業インフラとしての利便性と信頼性の充実を図る点にあります。

 このため、ー莪所の会員資格として大口需要家(電力会社、航空会社等)を追加し、契約の履行を保証する独立型の決済機関(アウトハウス型クリアリング・ハウス)の設立を認め、
0兮者保護を強化する(委託者勧誘規制の強化)等の措置がとられました。

 行政面においても法令違反企業への厳しい営業停止処分等が行われ、従来の業界の負のイメージが急速に払拭されつつあります。

 こうした動きと並行的に、健全なビジネスモデル構築に向けての取り組みが業界をあげて進められ、海外を含む証券・金融等他業界との交流が活発に行われるようになりました。

 また、情報通信技術の発達により、大量かつ迅速な取引が可能になったため、商社や個人のディーリングや海外からの市場参加が顕著に伸びています。