卓話


「ロータリークリアランド・カンボジア完遂記念式典を終えて」

2010年6月16日(水)の例会の卓話です。

地区対人地雷除去に関する特別委員会 座長
岡崎 由雄君 

 1998-99年度,徳増須磨夫ガバナー,鈴木和夫会長の時に,東京RCが提唱し,第2580地区公式「世界社会奉仕活動」として承認された「クリアランドプロジェクト・カンボジア」活動の最終のご報告をいたします。

 ご承知のように,このプロジェクトは2000年に開始され,2001年2月にアンコールワットの有る町シェムリアップの北西60kmにあるロハール村でのクリアランド第1号を完成させてから,ちょうど10年になります。

 この間,東京RC80周年記念事業として1千万円の寄付と,RI100周年記念事業として特別基金からの1千万円を拠出していただいて,カンボジアとタイの国境近くにあるプレチョアン村に「東京RCクリアランド」を独自に造成し,当クラブから会員ご家族合わせて24名の方々に現地に行っていただき,子供たちと交歓をしていただきました。

 このプロジェクトを始めた頃は,各クラブに卓話にいって,ご寄付をお願いしますと,「他にロータリーに相応しい奉仕活動があるのではないか」というご意見が多く,地雷除去活動の意義をご説明するのに,いささか苦労もいたしましたが,「いろいろな奉仕活動があるにしても,地雷原で生活している人たちに,先ず地雷を除去してあげなければ,どんな奉仕活動も実行できない。地雷原で生活している人たちの命に関わる切実な問題を先ず解決することが重要です。」と話し,「クリアランド第1号のロハール村では,日本を含む世界のNPOや他地区のロータリアンが,井戸を掘ったり,学校を建てたり,犠牲者への義手・義足,車椅子などのプレゼントなどが始まっている。このように地雷除去した後には,国際協力の支援の輪が広がっている状況に十分のご理解を得たい」とご説明してまいりました。地雷除去活動は理屈ではなく現実的に人命を救おうというのが課題で,まさに人道上の奉仕活動です。

 振り返ってみれば,10年前。タイのバンコクから双発のプロペラ機で,カンボジア・シェムリアップ空港に飛びました。当時の空港周辺はヤシの木のはえた原っぱでした。

 空港は35〜36度という高温にも拘わらずクーラーはありません。トイレも空港の外にあるという具合でした。空港から市内のホテルまで30分程の道は,舗装もなく砂ぼこりをあげる砂利道でした。途中の風景は,質素な高床式家屋やテント張りの店,屋台の食堂,そして裸足で歩くパンツ一枚の子供たちという所でした。

 10年後の今日。空港は空調完備の近代的なビルになり,道路もほぼ舗装されています。町には信号機も設けられていました。屋根つきの食堂も増えましたし,欧米風のホテルも立ち並ぶ観光地になりました。これは周辺の地雷が全て除去され,世界中の人たちが世界遺産のアンコールワットの観光に来るということの現れです。しかし,一歩町を離れてタイとの国境地帯近くに足を運ぶと,そこは未だに地雷原です。

 これまでにロータリーの資金1億5千万円を費やして,第1号から第10号までのクリアランドができました。その面積はおよそ130万平方米(ちょうど東京ドームのグラウンド100個分)。約30ヶ所,26,000人の人たちが地雷の恐怖から解放されて平和な生活を送っています。

 土地が安全になったとはいえ,電気や水道もないので,人々は,日が昇れば起きて水を汲み畑を耕し,日が沈めば眠る,という貧しい暮らしをしていますが,村の周辺は緑の畑となり,村の人々には笑顔が戻り,夢と希望をもたらしています。

 カンボジア赤十字の発表によると,地雷の被害者は,1979年の4,674名をピークに2008年2月には年間266名に激減しています。

 昨年の2月と今年の2月に,クリアランド第1号のロハール村を訪ねました。10年前の村民の生活は貧しく貨幣経済すら成立せず,物々交換で生活していました。今回訪問した時には,テント屋根の商店もありました。学校もりっぱになって生徒たちは制服を着て通学していました。子供たちは,知識としての「地雷」を知ってはいましたが,実際には見たことも爆音を聞いたこともないという状況でした。勿論,この村では,この10年間,事故はゼロです。

 クリアランドで生活する人たちは,「やっとこれで人間として人間らしく安心して暮らせる」と大変喜んでいます。これこそ,ロータリーの人道目的奉仕の精神だと思います。カンボジアの地雷原に生活する人々の「地雷を何とかしてほしい!」という叫びに応えた証しだと思います。

 この活動の報告については,目下,クラブ会報委員長がまとめて下さっています。追ってご報告いたしますので是非ご一読ください。

 本年2月5日。シェムリアップで,この10年を記念して完遂記念式典を開きました。日本からは,地区内外のロータリアン201名が参加しました。東京RCは,児玉会長以下会員26名,ご家族23名,総勢49名がチャーター機で現地に参りました。

 今回のツアーにはNHKと朝日新聞がバンコク支局より取材に来てくれました。式典の様子は,明けて2月6日の朝,NHKのテレビとラジオでのニュース番組として全国に放映,放送されました。

 これら一連の式典が無事に終了できましたのも,直行チャーター便の計画,式典の設営準備,ツアーの準備と進行,ヘイロートラストとの交渉など担当してくださった特別委員会常任委員のご努力の結果だと思っています。お世話くださった皆様に感謝申しあげたいと思います。また,この10年間,当クラブの会員皆様から大変なご理解ご寄付を賜りましたことも,あらためて厚くお礼を申しあげてご報告といたします。

<DVD上映>
『ロータリークリアランド完遂記念の旅−2010年2月3日〜2月7日−』(地区対人地雷の除去に関する特別委員会監修)
2月3日 成田よりJALチャーター機(ロータリーフライト)でシェムリアップへ直行。ル・メリディアン・アンコールホテルでアプサラダンスの出迎え。

2月4日 国際交流演奏会。シェムリアップ近郊のポーバンティエィチェイスクールで,日本の太鼓の演奏会を開きました。子供たちも自分で和太鼓を叩きました。初めて叩く日本の太鼓に笑顔がいっぱいになりました。子供たちの笑顔は世界の宝です。

2月5日 午前中,参加者は三つのコースに分かれて現場研修を行いました。
AコースはHALO TRUSTのカンボジア本部で活動状況を聞きました。1,000人を越えるクメール隊員が1992年からカンボジア全土で活躍しているそうです。
Bコースのロハール村では,立派になったロハールスクールを訪れました。5歳から15歳までの子供たち301名が,午前と午後に分かれて通学しています。校舎はノルウェーのNPOによって建てられたそうです。
Cコースのアンロンベイ地区は地雷除去現場の視察です。84年から85年にクメール・ルージュが大量に地雷を埋設した所です。炎天下で一つ一つ手作業で地雷を除去する現場を視察しました。

午後,ル・メリディアン・アンコールホテルで完遂記念式典が開かれました。第1部は,静岡富岳太鼓(財団法人日本太鼓連盟)の迎え太鼓の演奏の中,ロータリアンの他,現地の政府関係者など総勢240人が出席してプロジェクトの完成を盛大に祝いました。
開会の辞はパストガバナー指田勢郎氏,続いて座長の岡崎由雄氏,ヘイロートラスト本部東南アジア地区代表リチャード・ボウルター氏,カンボジア王国政府代表チュン・ブン・ロン閣下,在カンボジア大使館川村裕公使がそれぞれお祝いの挨拶をなさいました。

平和のシンボル,クメール人除去隊員顕彰碑(カンボジア王国に永久保存)の除幕式も行われました。このモニュメントはイギリス人女性アーティスト・サッシャ・コンスタンブルさんの製作によるものです。
式典の最後にカンボジア政府とヘイロートラストより国際ロータリー2580地区へ感謝状が贈られました。2580地区からはヘイロートラスト現地統括責任者への感謝状を贈りました。また,サッシャ・コンスタンブルさんにも感謝状を贈りました。

第2部ウェルカムカクテルパーティーはプールサイドに場所を移して行われました。

第3部感謝祝賀会はホテルの特別会場で行われました。ヘイロートラストからクメール人地雷除去隊員ロータリー班の永年功労者表彰と記念品の贈呈がありました。10年の勤続隊員は300人でした。最後にロハール村の村長からお礼の言葉もありました。

その笑顔が曇ることのないように,「一人でも多く地雷の被害から救おう」と始めたロータリークリアランドプロジェクトはカンボジアの子供や大人たちに生きる希望をもたらす活動でした。