卓話


20円で世界をつなぐ-TABLE FOR TWO-

2016年5月11日(水)

特定非営利活動法人
TABLE FOR TWO International
事務局長 安東迪子氏

 TABLE FOR TWO International (以下、TFT)は、日本で始まった活動で、2007年にNPO法人を東京で創設しました。

 私は、中学・高校とミッションスクールに通い、人のためになる仕事をしたいと弁護士を目指し法学部に進学しました。卒業後は一般企業に就職し、食品や食材の輸入に携わり、給料の一部を食料関係のNPOに寄付する事にしました。仕事で目の当たりにする飽食の現場と寄付先のNPOから届く飢餓の状況のギャップに悩んでいた時、TFTの創設メンバーに出会い、コンセプトに共感して創設から参画しました。TFT事務局は少人数で、日本と海外あわせてフルタイム6名で運営しています。

 現在、世界人口70億人のうち、アフリカ、アジアなどで10億人近くが食べる物が足りず飢餓に苦しんでいると言われています。一方で、先進国を中心とした20億人以上は肥満や過体重で健康を害しています。同じ時代に同じ地球にいて皮肉な食の不均衡が起きていることが私達の問題意識で、この問題を同時に解消する仕組みができないかと考えたのがTFTです。

 TFTの仕組みは、先進国の企業の社員食堂やレストランなどで、通常よりも少しカロリーを減らした寄付つきのヘルシーメニューを推進するものです。先進国の皆さんにはカロリーが抑えめで、バランスが良く、野菜が多めの食事を食べて肥満を予防して健康になってもらい、抑えた分のカロリーを飢餓で困っているアフリカ、アジアの子供達にプレゼントしようという発想です。物理的にカロリーを送ることはできないため、食事代金に上乗せした1食当たり20円の寄付金を、TFT事務局を通して、開発途上国の学校給食として提供する仕組みです。

 この20円が大きなポイントです。アフリカは物価が安いため、20円で温かい学校給食1食を賄うことができます。日本でTFTのメニュー1食を摂ると、アフリカの子供に温かい学校給食1食を贈ることができます。日本の人とアフリカの子供が2人で一緒に健康になりましょう、1対1で食卓を囲み食事を分かち合うというイメージで、”TABLE FOR TWO”=”2人の食卓”という団体名にしました。

 創設以来、多くの賛同を得て、日本全国で約650の企業・団体が参加しています。少しずつ世界に広げており、海外14ヶ国分も合計すると約700団体になります。一番多いのはアメリカで、ヨーロッパ、アジアでも始まっています。

 寄付を贈る先は、東アフリカのエチオピア、ウガンダ、ケニア、ルワンダ、タンザニア、アジアのフィリピンの計6ヶ国です。これまで累積で4,000万食相当の給食を届けることができました。概算で2万5,000人の子供の8年間分になります。

 学校給食の内容は、現地で主食として食べられているウガリやポショ(穀物の粉を湯で練り上げたもの)に豆のスープや野菜や果物などを合わせたもので、一食当たり1500kclにもなります。貧困地域のため、朝も夜も家で何も食べられない子供が多く、子供達はすごい勢いでこれを完食します。

 給食の提供には、もう一つ、教育機会を提供する意味もあります。困窮状況のため、親は子供を労働力として捉え、なかなか学校に行かせてくれません。また、子供達も、学校に来たとしてもお腹がすいてつらくなって帰ってしまい、だんだん学校に来なくなりドロップアウトしてしまう現状があります。文字も読めず計算もできないまま大人になるため、例えば農業をして作物を売ろうとしても騙されて買い叩かれるなどして、貧困から抜け出せないといった状況があります。貧困から抜け出すには子供に教育を受けてもらうのが一番で、そこに学校給食が効くと言われています。

 学校給食があるから学校に行かせるという親が多く、私たちが給食の支援を始めた学校では、半年から一年位で生徒数が倍に増加した学校もあります。支援先の一つであるタンザニアのムボラ村では、給食の導入前後で、就学率(村の中で学校に行くべき適齢期の子供達の中で、学校に名前を登録している子供の率)が70%から96%に、出席率(就学児の中で、ドロップアウトせずに継続して学校に通う子供の率)が50%から90%になり、ほとんどの子供達が卒業し、進学率も飛躍的に向上しています。

 ルワンダの辺境のバンダ村の小学校でも学校給食の提供を始めたところ、ドロップアウトした子供達が学校に戻ってきました。10歳で2年生に復学した子などがいます。給食をしっかりと食べることで集中して授業に臨めるようになり、中等教育への進学試験の合格者も増えました。たった20円の給食が、子供達の将来を左右するほどの影響を持っていることがわかります。

 こうした支援に加え、長期的な自立を見据えて、農業支援も昨年から始めました。種や苗、農機具、灌漑設備などを提供するとともに、地元農家や子供達に持続可能な農業技術の指導を行っています。乾燥した土など厳しい環境や、乏しい資金・資源でも続けられるような技術を伝えています。

 国内では、大企業から小さなベンチャー企業までさまざまな規模の団体が参加しています。昨年5月には、トヨタ自動車が国内の全食堂62カ所でTFTを導入し、約8万人の従業員の方が参加してくださっています。

 それから、東京ロータリークラブの会員で、TFT創設の頃からアドバイザーとしてお力添えをいただいている川口順子先生のご尽力で2007年12月に参議院、2008年11月に衆議院でTFT推進議員連盟が発足し、参議院の議連では川口先生が会長に就任されました。そこから国会食堂や議員会館、官公庁、地方自治体などに導入が広がっています。

 大阪リバーサイドロータリークラブ様では2010年7月からランチの場に募金箱を設置する形で参加いただいています。他にも、糖尿病学会でのランチセッションの導入や、IMF世銀総会やAPECなどの国際会議の際にはこちらの帝国ホテルでTFT対象メニューを出して頂き、いい反応をいただきました。大学生や高校生の皆さんも草の根の活動を主体的に行い、現在約120の学校で導入されています。食堂以外にも、全国で約600台の寄付付飲料の自販機設置や、オフィスデリバリー、売店への食品の卸、レストラン、百貨店、スーパーでの総菜販売に広がっています。

 一般の方に参加してもらえるように、昨年秋には、世界食料デーである10月16日から1ヶ月半の間、「おにぎりいただきます!ソーシャルアクション」を開催しました。日本人のソウルフードとも言える代表的な食べ物で、かつ世界のどこでも簡単に作ることができる「おにぎり」に焦点をあてた企画です。特設ウェブサイトにおにぎりの写真を投稿すると、投稿された場所に応じてサイト上の地図の中に写真が表示され、同時に1枚あたり100円が協賛企業から寄付される仕組みです。

 個人が気軽に参加できると評判を呼び、1ヶ月半で約5,500枚もの写真が日本だけではなく、ヨーロッパ、アメリカ、南米、アフリカなど世界各地から投稿されました。今年も第二回を開催する予定です。食品メーカー等は、消費者が商品を食べたり飲んだりしている写真が集まることに魅力を感じてくれ、既に数社の協賛が決定しています。

 こうしたプログラムとは別に、個人の方が自身のお誕生日会の参加費からの寄付や、友人とのダイエット対決の結果や禁酒の頻度に応じて寄付をくださる事もあります。野球やゴルフなどのスポーツを通じて消費したカロリーを金額換算し寄付できるプログラムも新たに始めました。

 海外での取り組みで大きなものとしては、昨年イタリアのミラノで開催された「食」をテーマにした万博で、日本政府のパビリオンで世界の食料問題を解決するための日本の活動という形でTFTが紹介されました。また、今年1月のダボス会議では、ランチビュッフェや参加者が宿泊する近隣のホテルのレストランでTFTを導入していただきました。

 これだけ支援を集めていても、TFTの支援先の村から一歩外に出ると、支援の行き届いていない子供達が大勢います。昨今の温暖化の影響で干ばつが進んでおり、アフリカの農業はこのままだと2020年には収穫量が今の半分程になってしまうという予測も出ており、食事の支援と農業の支援、どちらも待った無しです。

 ロータリアンの皆様は、多大なる影響力をお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。是非お力添えをいただきたく、お願い致します。企業・団体・個人として、各種プログラムへの参加のご検討や、参加いただけそうな方のご紹介もとても嬉しいです。個人の方のご寄付でしたら、1,000円なら50食で1人の子供の約2ヶ月分、10,000円なら1年分の給食を賄うことができます。税控除の対象にもなりますので、是非ご検討いただければ嬉しいです。