卓話


日本の子供の貧困をなくす

2021年4月21日(水)

特定非営利活動法人リトルワンズ
代表理事 小山訓久氏


 今、日本の子供の貧困は7人に1人と言われています。先進国の日本であり得ないと思われますが、食べ物が食べられない、学校に行けない、医療を受けたくてもなかなか受けられない子供の貧困が起きています。このような貧困は、個人の問題だけではなく、文化的な貧困であったり、社会的貧困であったり、様々な理由が複雑に絡みあって起きています。

 子供は未来の主人公です。それが今、大変な状況に置かれています。今日は子供の貧困と私達の活動、そして、大人に何ができるかを話したいと思います。

 私達リトルワンズは今から12年前から活動を始めました。当時、厚生労働省も子供の貧困についての詳細なデータを取ったことがなく、数字もありませんでした。ですから、「子供の貧困なんてありえない」と言われておりました。

 当時は、私はテレビのニュース番組の制作をしており、報道の現場でも母子家庭が困っているといったニュースは聞きませんでした。ある日、母子家庭を取材する機会があり、現実に直面したのです。私が取材した方は大変生活にお困りで、行政や支援団体にも取材をすると、お困りの母子家庭は大変に多く、しかも、支援のミスマッチがありました。例えば、お母さんが今すぐ住まいが必要なので、行政に相談に行くと、「5月が申請月なので2カ月待ってください」と言われているのです。

 一方、私が学んだアメリカでは、スピード感を持って支援に当たっていました。大学に行きながら、ボランティア活動をしており、関わっていたDV被害者支援のNPOは人手がなかったため、ただの留学生だった私も料理を作ったり家庭教師をしたり、寄付を集めたりと、様々な体験をさせていただきました。アメリカでは、企業だけではなく、団体、地域の方達が関わって、慈善活動をしていました。ロータリーの方もそうです。

 男性である私が支援をするのは珍しいと言われます。日本では母子家庭の支援は母子家庭、女性の支援は女性がやるものだというイメージがあるようです。私自身は母子家庭ではありません。先日、シンガポールの新聞に載った時も、アジアでは私のような存在は珍しいと言われました。一方で、世界的には、支援活動をするのに性別、出自は関係なく、支援したいならば普通に関われます。そうした意味でも日本はまだ遅れたところがあります。

 アメリカや世界の支援の良いところ、日本の良いところをあわせて、私は母子家庭を支援するNPO法人を立ち上げました。私達は、子供とお母さんの生活支援、就労支援、住まいの支援、イベント等をしています。小学校で部活をやりたいけどお金がないのでできないという子供のために習い事の奨学金を作りました。部活は子供にとって人生の一部。それを応援することは非常に大きなことです。かつてアメフトをやっていたのでアメフトをやりたい子供を、私のように剣道をしていた人間が剣道をしたい子供を応援したい、そんな形で少しずつ寄付が集まっています。

 住まいの支援にも日本で初めて取り組みました。空き家、空き室が世界的にも問題になっています。それをリノベ−ションしてお母さんに安く貸すモデルを作りました。国土交通省が作ったモデルに命を吹き込んだ形です。不動産屋さん、大家さん、民間と行政が一緒になって、三者鼎立でお母さんを支援しています。この支援が世界的にも評価され、2018年にWorld Habitat Awards Winnerを受賞しました。日本で受賞するのは16年ぶり2度目、NPOとしては日本初。私も国連ハビタットの本部があるケニアに行ってきました。

 受賞後はいろんな国から住まいの支援を教えてほしいという声が多く寄せられ、今もオンライン会議をしています。住まいの支援は日本も国交省をはじめいろんな支援があるのですが、女性をターゲットに絞ったものはほとんどありませんでした。子供にとって住まいはただの家ではありません。安心の場所であり、学びの場所であり、人生の拠点でもあります。こうした命を支える形で支援することは日本ではあまりなく、ハードを作る支援がほとんど。国交省と連携して、国交省はハード、ソフトは私達という形で進み、最近は厚生労働省も連携して進んでいます。

 私たちの事業は、私達がモデルを作って政府に伝えて実行してもらったり、政府が作ったものに命を吹き込んでいます。日本は北と南に広いため、東京で作ったものが東北や大阪でうまくいくことはありません。それぞれの地域にフィットする形で支援をしなくてはなりません。

 今は携帯を持つのが当たり前で、ライフラインになっています。お母さんは支援団体がどこにあるのか、行政に対してどうやってアプローチすればいいのかがわからないため、その情報の窓口の設置をずっと提案し、私達でポータルサイトを作りました。今、それが東京都に認められ、都が母子家庭向けに、情報のポータルサイトを作ってくれました。 こうした形で、私達が作ったものを行政に渡していくと、全国に広まりますし、私達もノウハウをまた他の方に提供することができます。ノウハウのシェアにはおすそ分けの気持ちもありますが、良いことは広げた方が良いと思っています。

 今、コロナ禍であるため、イベントが開催できなくなりました。BBQや博物館に行くことは大したことではないように見えるかもしれませんが、子供にとっては夏休みにどこにも行けないこと、他のお友達は博物館に行っているけれど自分は行けないことは非常に悲しいことです。また、子供の時に経験がないと大人になった時にそうしたことをすることが少なくなってしまいます。お金がない、あるいは教えてくれる人がいない。たったそれだけで子供の人生が非常に寂しくなります。

 夏休みだけどお金がないからどこにも行けないという家庭のために、BBQや旅行等をしています。お母さんたちはいろんなリクエストをくださいます。例えば、「1000円で宿泊したい」、「2000円まででなんとかしてほしい」。私達は知恵を絞って協力してくれる企業や自治体を集め、その金額で旅行できるようにします。困難な要望をアイデアと工夫によって乗り切ってきたわけです。こうして、知らない間にノウハウが磨かれました。 また、お母さんと子供が困っているからといって何でもしてあげればいいのではなく、お母さんと子供が持っている力を引き出す、本当に困っていることに協力する、同じ目線で支援をする。この辺りが大事なことです。

 先日、紀尾井町ロータリークラブの皆さんから靴の支援を頂きました。これは靴に困っている子供が多いため、私達からご提案して始まりました。現場のニーズを汲み取って現場の人達に必要なことを一緒に作っていく。こんな形が素晴らしいと思います。

 今はコロナもあって子供達も家に籠もりっきりで、勉強も自習をしています。これには弊害もあります。学校はオンラインで学習させるようにしていますが、家にPCがない、Wi-Fiがない子供もいます。そんな子供達は、Wi-Fiが無料で飛んでいるコンビニに行って、勉強したりしています。タブレットがないため勉強に遅れが出る子供もいます。自治体によるタブレットやWi-Fiの支援が増えていますが、足りない所も多く、家で勉強できない子供も多いのです。

 また、ステイホームと言いますが、家に居られない子供やお母さんも多く、その相談は、2020年は300件以上、普段の3倍以上に増えました。DVから逃げるため、離婚直後でお金がない、保証人がなく家が借りられない等の理由で友達や親戚の家を間借りし、お母さんとお子さん2人で4畳半を分けているような家庭。庭にある倉庫やビル屋上のメンテナンスルームで暮らしている家庭など、日本では信じられないようなケースが沢山あります。

 日本で非正規労働が多いため、コロナで解雇されるお母さんが非常に多くなっています。結果、貯金を切り崩して生活をせざるを得なくなり、子供が食事に困ることが多くありました。私達は農家と連携して、野菜、肉、お米などの生鮮食品を直接届ける仕組みを作りました。これは5月から杉並区でも、見守り支援として実装され、厚生労働省の補助金を使い、事業としてスタートします。それでも栄養に困る子供がまだ多くいます。地方にこうした支援団体がなく、行政だけでは手が足りていません。全国の方に食事を提供するために色々なスキームを考えているところです。

 これから私達は沖縄の母子家庭の就労支援に当たります。休眠預金を使った国の初めての事業です。東京から参加するのは私達のみで、沖縄の団体と連携します。沖縄は子供の貧困が大変多く、最低賃金も非常に低く、かついろんな状況もあります。これらの解決のために自分達のノウハウをすべて提供しようと思っています。

 大人にとって子供は人生の後輩です。私は長年、武道をやってきており、人生の先輩からも大変お世話になりました。先輩が後輩を支援するのは日本では当たり前であると同時に素晴らしく美しい文化です。ですから、企業、個人、どんな形でも、小さな後輩のために、大人が何かをやってくれたらと願っております。

 SDGs、ESG、IRと、企業が地域やこれからの人達のために貢献をするのは当たり前の時代です。事業の中で活動することは沢山できます。今、私達の活動に貢献して下さっている企業は、私達と対等な立場で自分達ができることで応援して下さっています。こうした循環が日本でどんどん生まれたら、子供の貧困も解決できるのではと大いに期待しています。


   ※2021年4月21日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。