卓話


日本の建設業界が取り組むべきDX戦略について

2022年11月30日(水)

(株)竹村コーポレーション
代表取締役社長 今福浩之君


 私の経営している会社は明治39年創業の中堅・中小の建築設備工事会社です。本日は私どもの目線から見る、「日本の建設業界が取り組むべきDX戦略」と題してお話しさせていただきます。

 2020年の東京オリンピック開催を契機に建設業界は長い冬の時代を抜け非常に忙しい時を過ごしております。インフラ整備や都市再開発などを中心に大型工事が数多く発生し、建設業に携わる多くの企業は非常に多忙な時期を過ごしています。

 しかしながら業界には、さまざまな課題があり、代表的な課題が「人材不足」と「就業者の高齢化」です。総務省が発表している建設業および建設工事従事者の現状の労働者分布を見ると、55歳以上が約34%、29歳以下11%というデータが出ています。年々若手人材が少なくなることにより高齢化が進んでいるのが現状です。将来の建設業界を担うであろう29歳以下の割合は約1割程度しかありません。このまま建設業界で働く人が先細りしていくと、2025年時点では技能労働者数が40万人以上不足するといわれており、今後多くの建設現場が回らなくなる恐れがあります。

 その対策として業界のDXを進めることが重要だと考えられています。デジタル技術を導入しDXを進めることで、人手不足や長時間労働といった建設業ならではの課題を解決できると言われております。

 大手ゼネコンでは独自の開発や研究を元にDX化を進めている一方で業界の90%を占める弊社のような中堅・中小企業ではDX化がなかなか進んでおりません。しかし、本当に建設業を改革するには中堅・中小企業のイノベーションこそが重要だと思います。

 私は中堅・中小企業のイノベーションを加速する鍵は海外の最先端なデジタルやロボット技術にあると着目しております。私は何度か米国に行って現地の建設系スタートアップを見学し、様々な技術者や投資家のお話を聞き、米国の建設業界は10年以上前から急速に変化していて、様々な建設分野でイノベーションが起きていることに気づきました。本日は日本でも参考にできる技術を共有させていただきたいと思います。

 ロボット技術を活用されている事例ですと、元々「鉄の州」と名付けられた米国のペンシルバニア州ではAIとロボットを活用して鉄筋の加工を自動化しているスタートアップがあります。従来は2〜3人の作業員が鉄筋の組み立て、溶接や結束、品質管理を行っていましたが今は専門技術を持たないオペレーター一人がロボットを操作して加工できます。従来の加工法と比較すると約3分の1の人力で4倍以上の効率化を実現できております。

 また住宅分野では「多層階住宅の開発の設計」「部材の調達」「施工」「運用」を一元管理しているデベロッパー機能とゼネコン機能を併せ持つスタートアップもあります。施工はモジュール化されているので、設備回りなどの標準化や部材の3Dプリンティング製造などを行っております。施工もロボットを活用しているので、作業員の省略化も実現しています。こういう仕組みを導入されたことによって施工コストを約半分にできております。

 米国の建設業界のスタンダード・ソフトウエアになっている会社もあります。マイクロソフトのウィンドウズがパソコンOSのスタンダードのように、この企業は米国のデベロッパー、ゼネコン、サブコンと業者を連携するオープン・ソフトウエア・プラットフォームを提供しています。元々バラバラのシステムを使用していた業界が今は一つのシステムで見積、発注、予算管理、請求や報告作業を行っております。コミュニケーションロスを削減し、書類作りの重複を防ぎ、データを活用して業務を効率化しております。

 国内のみにソリューションを求めず、海外を含め幅広く情報を収集して新しい技術を積極的に取り入れ、イノベーションを進めることが必要だと思います。

新たな働き方の創造〜人を中心としたオートメーション

2022年11月30日(水)

アズビル(株)
取締役代表執行役社長 山本清博君


 弊社は計測と制御を主体としたオートメーション企業であり、“人を中心としたオートメーション”というグループ理念のもと、国内外で事業を展開させていただいております。本日ご参加の皆様の多くがお客様となっております。この場をお借りして、日ごろのご愛顧に感謝申し上げます。

 COVID-19感染症拡大後の新たな働き方として、リモートワークとオフィスでのハイブリット勤務、そして、オフィス空間で“安全すなわち感染しない”ということを意識せざるを得なくなったことは、大きな変化であると考えております。それら新しい働き方の中、“人を中心とした考え方で世界を救う”という考えについて、お話しさせていただきます。

   まず初めに、皆さんにお尋ねしたいことがあります。“今の温度は何度だと思われますでしょうか”

 事前の計測結果では、だいたい、24度前後の温度を示しております。
 もう一つ質問させていただきます。“今、暑い、寒い、といった感覚でとらえると、どのように感じられておりますでしょうか”

 若干暑い、ちょうどいい、など、いろいろお感じになられているのではと思います。実は、温度が同じであっても、お一人お一人の感じ方が異なることが学術的にもわかっております。

 具体的には、PMVという指標で表すことができます。
 PMV:Predicted Mean Vote (予告平均温冷感申告) とは人間の暑さ・寒さの感覚をあらわす温熱環境指針の一つで、デンマークのFanger教授が提唱し、1984年にISO-7730にて国際規格化されております。

 PMV値は、−3.0(寒い)〜+3.0(暑い)で表され、環境要素(温度、湿度、放射温度、気流)と人的要素(活動量、着衣量)から決まります。このように、暑い、寒い、等の感じ方は様々な要素が関係することになります。よって、この部屋自体の温度を、26度ではなくもう少し温度を上げたとしても、少し風を感じていただくことにより、快適に感じていただくことが可能となります。

 これが、“人を中心とした”という発想となります。それでは、このような考え方が、どのように“世界を救う”のか、についてお話しさせていただきます。

 先ほど申し上げましたように、ある空間の空調制御を、特定の個所の温度ではなく、お一人お一人の感じ方をもとに制御する仕組みを、弊社の湘南工場で導入しております。昨年の夏場の半年間での実績では、様々な省エネルギー施策を組み合わせて、従来よりも約50%の空調エネルギーの削減を実現できました。

 これはあくまでも弊社工場の一定期間での事例となりますが、様々な空間に適用可能であると考えております。また、目を海外に向けますと、よくお聞きになると思いますが、東南アジアの一部の地域では、“寒くても冷房の効いたオフィス”で働くことが好まれる傾向にあります。

 もし、世界的に、本日お話ししました“人を中心とした”発想で、個人の感じ方にあわせた、適切なエネルギー使用量にすることができたら、空調用エネルギーの削減に、大きく貢献できるのではと考えております。

“世界を救う”。

 現在、世界中で様々な取組が進んでおります。未来の子供たちのために、今、なすべきことは多く、その一つにオフィス空間でのエネルギー消費を、快適性と安全性(感染しない)を損ねることなく削減していくことがとても重要であると思っております。

   本日ご紹介しました“人を中心とした考え方で、地球を救う”という発想は、まだまだ道半ばではありますが、弊社としては一歩ずつ歩を進め、未来の子供たちに、少しでも良い状態で地球を譲り渡せるよう、努力を継続していく所存であります。