卓話


職業奉仕月間例会
環状第2号線の整備について

2014年10月8日(水)

東京都技監(建設局長兼務)
横溝良一氏


 環状第2号線は、神田佐久間町から有明までを結ぶ都市計画道路で、その一部は「外堀通り」と呼ばれています。最近、虎ノ門ヒルズが建っている新橋〜虎ノ門区間が開通し、その先、築地から有明に至る臨海部区間で、現在も整備が進められています。

 有明には2020年の東京オリンピックで、メディアセンターの設置が予定され、さらに選手村や国立競技場の近傍も通るということで、環状第2号線を「オリンピック道路」という名前にしたら良いのではないかという話があります。なお、新橋〜虎ノ門区間には「新虎通り」という名前がつけられています。

 臨海部では、隅田川と交わる箇所で橋梁を架設しました。最も河口に近く、川の玄関口であることから、都市にとっても象徴的な橋です。先日、知事に「築地大橋」と命名してもらいました。やはり築地という名を残そうということで、完成の暁には知事に揮毫もしてもらおうと考えています。ところで、今回架設した橋の部材は120mの長さがあり、3,000t級の大型船で吊り下げました。大変巨大なものですが、設置する時の余裕は両端ともわずか5mmです。日本の高度な技術が活用されているのがわかるでしょう。

 環状第2号線ならではの工夫として、立体道路制度の活用があります。例えば、建物の真ん中に道路を抜く、あるいは建物の下に入れるといった、道路と一体的な建物の建築を可能にする制度です。環状第2号線では、虎ノ門ヒルズの地上から地階にかけての部分で、建物の中を道路が通過しています。

 この区間は、再開発事業により整備されました。もともと木造の住宅が密集して沢山の方が住んでおり、事業計画決定時の権利者数は942人でした。この方々に、ただ移転していただくのではなく、3つの再開発ビルを建て、そこに入居していただき、土地を集約することによって道路を造るというものです。3カ所のビルのうち、2カ所は道路に沿って建物が建てられていますが、中央の虎ノ門ヒルズには立体道路制度が使われています。
 都市計画にも経緯があります。昭和21年に幅100mの道路として計画されました。しかし、幅が広ければ用地費も非常に高くなるため、昭和25年に幅40mに縮小することになり、平成10年に、道路本線を地下化することになりました。世間では「マッカーサー道路」などと呼ばれていたこともあります。

 地下道路の構造についても、色々な取組みがありました。最初は、道路を地下に入れ、ビルをその上に建てようとしましたが、換気塔の騒音などが懸念され断念。次に、換気塔はつくらずに掘割構造で換気する案が示されましたが、今度は「道路を渡れない」となり、最終的に現在の構造になりました。最初の計画と同じように見えますが、ビルを3カ所に集約し、土地のほとんどを道路にし、その代わり超高層ビルにするということで落ち着きました。換気塔は景観にも配慮して表面をガラスで覆い、虎ノ門ヒルズの前に設置されています。

 まだ仮設の部分もありますが、この区間は今年3月29日に開通しました。自転車道も作り、幅員13mの歩道も作られています。これほどの歩道幅があるのならば、パリのシャンゼリゼ通りのようなオープンカフェなどが作れないかということで、東京都は「東京シャンゼリゼプロジェクト」という、道路上に出店等を許可する取り組みを始めました。現在、オープンカフェが3軒出店しています。追加の募集をかけていますので、近いうちにさらに賑わいが増すと思います。都議会で何度もふれられ、報道でも多数取り上げられたので大変繁盛しているそうです。

 この取組は、単に賑わいを作ることだけではなく、占用料をいただき、それを道路の維持管理に使うことで、税金による負担を抑えながら街を良くする仕組みを模索することも目的のひとつです。国家戦略特区に指定されると、同様の手法が可能になりますが、従来は都市再生緊急整備地域内に限られていました。日本では、道路を使用する制限が厳しいためです。東京シャンゼリゼプロジェクトは、過密化した都市の中で、憩える空間をつくる一つの手段になると考えています。

 隅田川の河川区域にもオープンカフェを作りました。浅草寺から東側に進んだところに二天門という船着場を作り、現在お店が2軒出ています。大阪では北浜テラスなど河川をうまく使っていますが、東京でもこうした賑わいの施設をさらに作っていこうと考えています。

 なぜ、日本の道路などは制限が厳しいのでしょうか。欧米の都市と比較してみると、都市形成の違いによって、道路管理に関わる法律にも違いがあるように思われます。例えば、道路上に石が落ちていて、それに躓いて倒れた場合、道路管理者が悪いのか、よく見ないで歩いた人が悪いのか。フランスの場合は、これが相殺され管理者の責任のハードルが低くなっています。日本の場合、管理者が悪いという法体系になっていて、オープンカフェなどがなかなか出しにくい環境です。おそらく、欧米の都市は、城塞都市をルーツにしているため城壁内の限られた空間を皆で有効に使う意識が強いのだと思います。一方、日本では城内には殿様しか居らず、都市は城下町として広がりました。新しい土地利用は外側に広がるので、わざわざ公共空間を他の用途に利用する意識が低いのかもしれません。そのような都市形成の違いが、法律の違いにも現れていると思います。しかし、最近では皆さんご存じのように、東京マラソンで毎年あれほどの参加者があるのに、事故は起きません。ランナーが新宿の都庁舎前で預けたバッグが、ゴールの有明できちんと渡される。道路上で躓いて問題になることもない、そういう時代に変ってきています。我々は、時代の変化を捉えて、公共空間も活用して、楽しい街造りを積極的に進めていきたいと思っています。

 視点を変えまして、環状第2号線ではいくつかの地道な工夫もしています。笹子トンネルの天井崩落事故を覚えておられると思います。トンネル本体は悪くなかったのですが、天井を留めていた箇所が検査しにくい環境にあり、メンテナンスがどのように行われていたのかなどの問題が指摘されています。この事故以降、東京都は原点に返ってメンテナンスの考え方を整理し、メンテナンスをしやすくあるいはしなくても済むような仕組みに取り組んでいます。例えば、照明や梯子を付けて検査しやすくするなど、小さなことではありますが現場から工夫をしています。

 先ほどの築地大橋には、検査路を設置したほか、耐食性の高い塗装を採用しました。既存の構造物についても、従来の吊足場や専用車両を使った点検方法から、検査路による歩いてできる検査への移行、さらにICTなど新技術の活用による点検システムなどの採用も考えています。

 環状第2号線の換気塔は、表面がグラスウォールで、夜になるとイルミネーションが光り、とてもきれいです。ここでも光触媒を利用したコーティングで汚れが浮き、降雨によって洗い流されます。街の景観維持とメンテナンス省力化の両方に配慮しているわけです。

 先ほど、道路で得られた収入を維持管理に活用する話をしました。これをもう少し大きくした仕組みがあります。道路を含めた街全体を一つのエリアとして考え、それを民間の方達に管理していただく、基本的な管理費用は我々がお渡しし、さらにグレードアップしたい分は皆さんに負担していただく、あるいは道路上に広告を出すことによって、その収入から維持管理費を出していく。このような形をエリアマネジメントといいます。

 このように税金による負担を抑えながらメンテナンスをし、同時に地域の方に街に愛着を持っていただける取り組みを広げていきたいと思っています。これまでの例としては、汐留です。地下通路や高いところにあるガラスの通路も道路施設であり、それらも含めた管理を地元団体が行っています。

 新橋〜虎ノ門区間が開通するまでに、68年間かかりました。地元の方々には大変お待たせをしたことになります。また、計画区域内にあった日比谷神社を遷座するなど多くのご協力を頂きました。再開発事業では、どうしてもご協力を頂けない方に、土地収用法により移転して頂いたこともあります。この地区には沢山の権利者の方がいらっしゃいましたので、その仮移転費用は年間約30億円になります。事業が1年延びるとそれだけ費用がかかってしまう。そんな公共の利益を踏まえて、法手続きを進めました。

 そうした、多くの皆様のご理解とご尽力により、新橋〜虎の門区間は開通しました。臨海部では現在も環状第2号線の整備が進められています。オリンピック・パラリンピックの開催に不可欠なことはもちろん、東京の骨格をなす道路として都民に愛される空間にしていきたいと考えています。そろそろお時間です。本日はご清聴ありがとうございました。