卓話


イニシエイションスピーチ

2011年6月8日(水)の例会の卓話です。

新庄 一郎君
南学 政明君 

遺言検索について

銀座公証役場
公証人  新庄 一郎 君

 日本公証人連合会では、平成元年、1989年以降に作成された公正証書遺言と秘密遺言について、無料で検索・回答しています(ただし、当該公正証書の閲覧や謄写は有料です)。もっとも遺言は個人の秘密に関する事項ゆえ、^筝世靴燭箸気譴觴圓死亡した事実を証明する書類、∩蠡蛙妖利害関係者であることを証明する書類、0様蠎圓凌畔を証明する書類の提出を要します。

 このサービスは、公証業務に付随するものとの位置付けで実施されていたのですが、サービスとはいえ、入力データに多数の誤りが存在していた上、該当する公正証書はない旨回答した後、遺言公正証書が発見された事例、遠隔地に存在する旨の回答を得て出向いたところ人違いであった事例等看過できない過誤が相次いだこと、外国人のデータ入力に問題があることから、連合会では遺言検索システムを全面的に見直すことになりました。

 この遺言検索システムは、従来、\(漢字)、∪(カナ)、L勝粉岨)、ぬ勝淵ナ)、ダ固月日、性別の6項目を検索項目とし、各公証人は、検索依頼者から上記6項目の情報を入手して連合会に照会し、検索の結果、全項目が一致した場合には「該当あり」、相当数の検索項目が合致している上、担当者の経験上該当するのではないかと思われる場合には「類似者あり」、それ以外の場合には「該当なし」として回答していましたが、担当者らと話すうち、問題点が浮き彫りにされていきました。

 その第1は、検索項目それ自体の問題です。特に外国人については大きな問題がありました。外国人の場合、漢字で表記される者と漢字以外の文字で表記されるものに分類していましたが、現在中華人民共和国で使用されている「簡体字」は漢字に分類され、漢字以外の言語はアルファベットで表記し、すべてカナで「読み」を付すこととなっていたのです。

 母音や子音の異なる言語を無理やり日本語読みしていたわけで、世界一多い姓である「李」について調べたところ、「リ」、「リー」、「イ」、「イー」の4種類の登録がありました。遺言者本人の発音、聞き取る公証人の表示、検索依頼者の発音と公証人の表示、さらに連合会担当者の聞き取りと段階を経るわけですから、「読み」に意味があるか相当に疑問です。検討の結果、外国人の遺言は件数的にも少なくHDDの容量も大きくなったこと等にかんがみ、パスポート等証明書類の映像データを保存しておき、\固月日、国籍を検索項目として保存してある映像データと照合する方式に改めることとなりました。

 第2は、連絡方法です。連合会に対する公証人の問い合わせは、慣例として電話で行うこととなっていました。個人情報保護のため、誤送信等を恐れファクシミリやメールは不可としていたのです。しかし、仮に誤送信されても、死亡した方の氏名等のみで遺言内容が漏れるわけでもなく、問い合わせの手間と正確性を担保するメリットとを比較考量すれば結論は明らかということで改善しました。

 第3は、類似者の取り扱いです。連合会の担当者は、経験上同一人の可能性が高いので公正証書原本に照らし合わせて回答してもらいたいとの意図を込めていたようですが、公証人側の認識とは相当ずれがあったようで、照会に係る者とは異なると勝手に判断して回答したり、類似者につき作成した公証役場に自ら照会して内容を確認する手間を省いて依頼者に回答したりしていたわけです。

 そもそも多くの段階で人の作業が加わるのですから、過誤が生じて当然というように頭を切り替え、類似者は同一人であることの確度が高いとの前提で、依頼者から遺言者の生前の住所とか相続人の氏名、財産の概要等の参考事項を聴取した結果を類似者の遺言作成役場に問い合わせ、公正証書と照合してもらってから正確な情報を提供するよう指導に努めています。

 今後も過誤を糊塗することなく真摯に反省し、その原因を明らかにした上、改善の糧としたいと考えております。

激変する商品先物市場

(株)東京工業品取引所
特別顧問  南学 正明 君

 先物取引とは、「契約は今、履行は将来」という契約です。例えば、金の価格は、現在、1kg当たり約4百万円ですが、これを6ヶ月後にも同価格で10kg売買するという契約です。価格が将来どのように変化しても契約した価格で取引できるのが特色です。加えて商品の受渡しを行わず、差金の授受で取引を終わらせることも可能です。こうした取引を行う場が商品取引所です。

 商品先物市場に期待される主たる機能・役割は、次の3つであり、産業インフラとしても重要な役割を担っております。

 第1は「透明・公正な価格の形成機能」です。取引所では、明確なル−ルに基づき取引が行われ、その結果は直ちに公表されますので、透明・公正な価格が形成されます。このため、取引所の価格を参考に現物価格が形成されることも多いのです。

 第2は「価格変動リスクのヘッジ機能」です。先物取引は、現時点で将来の価格を決定する取引ですから、その後に価格が変動しても予め契約した価格で取引できますので、将来の価格変動リスクを減少又は排除できます。

 第3は、「資金運用の場の提供機能」です。先物取引は、損失も大きいが利益も大きい投機性の高い性格を持っていますので、将来の価格について様々な思惑を持った投機資金が資金運用のため、市場に入ってきます。

 次に、商品先物取引の歴史でありますが、世界で初めてこの取引が行われたのは日本です。18cに始まった大阪の堂島米会所での米取引が起源と言われます。当時、米相場は、庶民の生活のみならず、藩の財政にとっても重要な意味を持っていましたので、米相場の変動リスクを押さえ、藩の財政を安定化させるというリスクヘッジの必要性が米先物取引の契機になったわけです。
 
 また、世界初の近代的な商品取引所は、19cに設立されたシカゴの商品取引所CBOTと言われます。このシカゴでも、大阪同様、農産物の価格変動リスクを如何にヘッジするかということが市場設立の契機でありました。
 
 その後、農産物以外の価格変動の大きい商品 例えば、銅・アルミ等の非鉄金属をロンドンのLMEが、WTI原油をニューヨークのNYMEXが取引対象とました。また、東京工業品取引所では、今、金、白金、銀、原油、ガソリン、灯油、ゴム等を上場しています。
                             
 最後に、市場の激変の模様について、次の3点を指摘しておきたいと思います。

 第1は、IT化と取引インフラ高度化の急速な進展です。かつての取引は、取引所のフロアにおいて、人間同士の手振りや掛け声等の合図により行われておりましたが、近年、IT化が進展し、コンピュ−タを用いた「スクリ−ン取引」が主流になりました。このシステム投資は、巨額にのぼり、取引所経営にとって、重大な問題になってきております。

 第2は、政府による規制強化の動きです。戦後、我が国においては、商品先物取引の営業をめぐるトラブル・紛議が多発した時代があり、政府の行政は、規制に主眼が置かれてきました。即ち、個人投資家への勧誘規制が強化され、本年1月からも、お客から要請がない限り、業者から勧誘してはならないという「不招請勧誘の禁止」が導入されました。

 こうした規制強化に伴い、業者は、今、ビジネスモデルの転換に懸命に努力しているところです。

 第3は、取引所再編の進展です。今申し上げた2つの変化は、必然的に取引所の再編を促すこととなります。昭和40年頃、日本には20を超える商品取引所がありましたが、今では3つに減少しております。東京に2つ、関西に1つです。これらの取引所も、明年夏には再編される方向で、今、準備が進められております。
 
 なお、最近、話題になっている「総合取引所構想」についてでありますが、民主党政権下で策定された「新成長戦略」の一環として、現在、株式、債券、金融先物、商品先物等を一緒に取り扱う取引所の創設を目指して、関係省庁間で検討がなされているようです。

 この点に関し、取引所の統廃合のみに注目が集まりがちですが、各省ごとの規制・監督や税制面での取扱いの一元化等を抜きにして、組織のみをいじっても、我が国マ−ケットの競争力強化は、難しいと思われます。

 以上、商品先物市場について、ご説明いたしました。皆様方の先物市場に対するご理解が少しでも深まれば幸いです。