卓話


わが国の書籍は、海外でどれくらい読まれているのか?」

2017年12月6日(水)

サンマーク出版
代表取締役社長 植木宣隆君


 斜陽産業といわれる出版業界ですが、本日は、海外で日本の書籍がどれくらい読まれているのか、その現状と今後の可能性について、お話しします。

 海外へのライツ販売では、台湾、韓国、中国の3カ国が日本書籍の取引先トップ3。それに続くのがタイ、ベトナム、インドネシア。マンガとライトノベルを除いた書籍では、アジアとの取引が全体の8割くらい。

 なかでも中国は成長市場で日本の翻訳書は人気が高く、中国アマゾンのランキングでは東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が3年連続で上位3位に。また講談社の『窓際のトットちゃん』は1000万部を、絵本の『100万回生きたねこ』はミリオンを突破しました。

 小社の刊行物でも、稲盛和夫さんのミリオンセラー『生き方』が中国で300万部、海賊版も600万部とか。餃子偽装のある国で「ど真剣に生きなさい」という本が1000万人近くの読者をつかむのは凄い。『トットちゃん』もそうだが、大袈裟に言うと「本が人を変え、国をも変える」かもしれません。

 実は、当クラブのオリックス・宮内義彦さんのご著書も中国で人気。版権料が高騰している様子。稲盛さんと宮内さんは、中国の経営書の双璧とのことです。

 『トットちゃん』を刊行しているのは新経典というヒットメーカーで、陳さんという社長は、村上春樹の『1Q84』を初版120万部でスタートするなど、中国出版界の第一人者。陳さんに、大ヒット連発で、儲かってしようがないですね、といったら、「いやいや、山岡荘八『徳川家康』26巻を、4人の翻訳者で手分けして翻訳したりしているので、そうでもない」と。聞くと、三方ヶ原の戦いで家康が武田勢に攻め込まれて敗走し、脱糞した話を知っている。「中国の英雄像は、いいことしか伝えないが、日本ではこうしたマイナスのことも伝える。そこが魅力だ。それを読者に知ってほしくて出版する」と。素晴らしい話ではありませんか。この話を聞けただけで、北京まで出張した甲斐があったと思いました。

 そして、それから3年ほど。毎日新聞紙上に「中国で『徳川家康』100万部突破」という記事を見つけ、きちんと結果も出していることに二度驚きました。

 さて、90年代から欧米圏での翻訳が出ていた村上春樹は別格の存在。韓国でアドバンスが1億円を超え、数十ヵ国で翻訳されている。ただ、純文学ということもあって、部数的な伸びには限界があるようです。日本語書籍は欧米(特に英語)での翻訳出版が難しいとされていましたが、ここ7〜8年、作家個人がエージェントと契約するなどの努力が実り、フィクションの分野で成果が上がり始め、東野圭吾を筆頭に、桐野夏生、高村薫、小川洋子など、英語圏での売上が期待できる作家を輩出するようになりました。とりわけ東野圭吾は今や全世界的な人気作家のひとりとなっています。

 小社では、20年前から版権販売に取り組み、近藤麻理恵こと、こんまりさんのミリオンセラー『人生がときめく片づけの魔法』が世界30ヵ国で大ヒット。タイム誌の「世界に影響を与える100人」に選ばれたお蔭もあって、2015年には全米アマゾン年間総合第2位、260万部という記録を作りました。全世界で800万部に達している。モノを捨てるときに「有難う」というのが「クール」だとか。

 嬉しかったのは、このブレイクスルーによって、欧米からの日本を見る目が変わり、また日本の出版社も臆せず欧米へも売り込もうという流れができたこと。ダイヤモンド社のミリオンセラー『嫌われる勇気』も韓国で150万部、台湾で50万部とヒット。米国でも刊行予定があるとか。

 まだまだ日本のコンテンツが世界に広がる余地はあるはず。私は日頃、社員に「世界で2000万人に読んでもらえる本を出そう」と大ボラを吹いている。このホラが現実のものになる日を待っている次第です。