卓話


学校教育で起きている劇的変化
NHKでも特集された教育法・アクティブラーニングとは

2018年2月7日(水)

(株)アクティブラーニング
副社長 得能絵理子氏


 日本の一般的な教育は、受動学習という、先生が一方的に教える知識主体のものが多く行われてきました。それに対し、生徒自らが考え発言する機会を与えるアクティブラーニングという教育が始まっています。

 元々、弊社の代表がアメリカで教えていました。初めは小さな大学で、そして、ペンシルバニア大学、ハーバード大学でも教鞭を取りました。その中でアクティブラーニングをしっかりと自分の中に入れていき、帰国前にはハーバード大学から優秀指導証書というトップ数パーセントの教師だけがもらえる賞をいただきました。何か自分でビジネスをやってみたいと、日本で20年前に教育の会社を始めました。

 元々は、学校が中心でしたが、徐々に企業からの依頼も増え、能動的な人材育成をテーマに大企業から小さなスタートアップ企業までいろいろな企業で教えています。

 アクティブラーニングがテーマですので、皆さんに少し質問をしながら進めていきます。

 ある大きなニュースがありました。2020年に教育業界であるものが廃止されますが何だと思いますか。長く続いており、アクティブラーニングとも関係のあるものです。正解は大学入試センター試験です。マークシート型の知識を問うような試験がなくなり、考えたり自分の意見を述べたりといった試験が大学の入試の中核になると言われています。

 理由は簡単で、時代の要請があるからです。イノベーションがよく言われるように、今までのものから新しいものを創り出していく時代になっています。正解どおりの思考ができる人材ではなく、正解を超えた何がしか自分なりの正解を創っていく人材が求められています。そのため、自分で考え、自分の意見を伝えることを主体にした能動的な学習が教育界の中核になってきています。

 「では、受動学習、情報のインプットは必要ないんですか」とよく聞かれます。そんなことはありません。そもそも教育はインプットとアウトプットの二段階で成り立っています。何も情報を入れていない状態で、例えば英語の単語が何も頭に入っていないのにアクティブラーニングすることは難しいですから、情報を入れることもとても重要です。ただし、これまでアウトプット、能動的な学習が極端に少なかったため、バランスを取ろうというのが導入の流れです。

 脳にはニューロンといわれる神経細胞があり、これらが結びつくことによって、情報が伝達されたり、記憶したりしていますが、ニューロンのつなぎ目はちゃんと繋がっていないことがわかりました。そこまで情報は電子的な信号で来ていますが、つなぎ目のところは化学的物質が行き来する。そして、それが例えば水道の蛇口のように沢山出る時とあまり出ない時があり、沢山出る時に最も学ぶと言われています。脳が活性化している状態で、「開脳」と呼んでいます。この状態に情報を入れるととても学習しますが、逆にこの状態ではない時にいくら情報を入れても学習しません。では一体いつこの開脳状態が起きるかといえば、学習者が能動的な時、つまり自分が主役であると思っている時に最も学ぶのです。

 これは我々の日常生活でもあります。運転手は助手席の人よりも道を覚えやすいという「ドライバーズ効果」と呼ぶ現象です。2人が同じ景色をずっと見ていて同じ場所にもう一度行こうと思ったら運転手は行けますが、助手席の人は行くことができない。助手席はちゃんと見ているようで見ていない。これが教育上、非常に問題です。教える側と教えられる側という立場になった瞬間に、教えられる側が助手席に座ってしまうことです。教育のジレンマと呼びます。

 これは親子、上司と部下でも起きます。上司がしゃかりきになるほど部下が受動的になっていく。これを解決するソリューションはシンプルなアウトプットです。つまり、受け手側を助手席からドライバーに座り直させる。これができると非常に能動的になり、開脳して情報をインプットしてくれます。

 アクティブラーニングは考える力を伸ばすことに加え、インプットの活性化にも有効です。情報を使うから入れたくなるという当たり前のことです。

 実際にかなり成果が出てきています。いろいろなところでアクティブラーニングを導入していただいており、茨城県にある学校では、それにより学力がかなり伸びてきました。

 経済界にはどのような影響があるのか。アクティブラーニングは早い学校では8年程前から行っており、アクティブ型授業を受けた学生が社会に輩出される中で、まず採用が変わるだろうと言われています。これまでの採用は合同説明会や一方的に企業の魅力を伝えるものが主流でしたが、それでは学生が魅力を感じづらいという状況が出てきました。

 そこで最近、学生が主体的になれるイベントを企画するケースが増えています。住宅・不動産ポータルサイトなどの企画・運営を行うLIFULL(ライフル)さんはかなり力を入れています。LIFLULLさんは、学生にビジネス企画を草案させ起業家に提案させるというイベントも行いました。そうした結果、日本一働きたい会社に選ばれました。つまり能動性喚起、主体的にさせることを丁寧にやると結果が出るということです。

 そして、育成も変わると言われています。今までの上意下達では社員が動いてくれないという声が出てきており、管理職の方々を対象にした、スタッフの能動スイッチをいかに入れるかという研修も増えています。

 そこで質問です。人生で最も大切なものを3つ挙げてください。よろしければ隣の方とお話しいただきたいと思います。

 この質問を私達はいろんな国でしており、若者を対象に全世界的なアンケートを行ったことがあります。同じ質問をハーバードの学生に聞いた時の動画をご覧下さい。2人の学生に突然この質問をふってどのような回答が返ってくるのか。

 一人目の18歳の女の子が大変渋い回答をしていました。1つめが「自立性」、次に「愛する人」、最後が「ミステリー」と、とても自分なりの回答を出しています。特筆したいのは2人が2つ目に挙げたのが、家族や友人であることです。これは全世界で必ずランクインするユニバーサルな回答の1つです。ただ、彼らがおもしろいのは自分達なりの視点で回答を出そうとするところで、二人の説明はちょっとずつ違いました。

 これを私達は日本人の学生にも聞いています。すると日本人の学生はどこかで聞いたことのある回答を述べるのがすごく得意なんです。「それ聞いたことあるな」という感じです。アメリカの学生は、自分独自の視点を出そうと工夫しているところがあります。

 もう少しかみ砕くと、最初にぱっと出るアイデアは「仲間が大事」といったどこかで聞いたことがある話です。これを私達は第一思考と呼んでいます。ただ、ここで回答を出してしまうと他と変わりません。そのため、ここからもう一歩、あるいはもう二歩進めて第二思考、第三思考まで行った時に初めてイノベーションや新しいものを生み出すことができると思います。

 そもそも考えるということは、何か問題があった時、我々のデータベース、考えている知識や過去の経験を検索しにいき、その中でベストのものを引っ張ってきます。でもこれは本当に「考える」なのでしょうか。これは検索ではないでしょうか。一方で、本来あるべき「考える」は、その先になにがしか新しく自分で付け加えたものを出していくことではないでしょうか。調べる、そして、考えるという二段階をしっかりと踏む人材を育てるためのファシリテーション技術を導入したいとなる訳です。

 最後に自宅で出来るアクティブラーニングを説明します。最近、私が出たNHKの番組「あさイチ」の内容がよくまとまっていましたので、そちらをご覧ください。

 まとめますと、コミュニケーションのスタイルをぜひ変えてください。通常よくあるコミュニケーションスタイル、特に親御さんは「〇〇しなさい」というケースが多いと思います。そうではなく、「あなたはどう思う?」「そうするとその先はどうなるのかな?」と、思考を回転させるような対話を意識して下さい。自分の意見を言う環境を作ってあげることが重要です。先程の「ドライバーにする」ことをぜひ意識してコミュニケーションをとっていただけたらと思います。

 我々は子供向けのキャンプも沢山行っており、ハーバード大学の学生が教えるコースもありますので、ご興味ある方がいらっしゃればご参加ください。

 コミュニケーションスタイルを変更できそうだなという方がいらっしゃればぜひ試していただけたら大変うれしいです。