卓話


Fintechについて考える

2019年4月24日(水)

(株)三菱UFJ銀行
特別顧問 畔柳信雄君


 金融=Financeと技術=Technologyを掛け合わせた「Fintech」が話題になっています。これは、一般にデジタル技術を活用し金融をより高度に便利に快適にする一連の動きを指します。この中でも、現金を使わないキャッシュレス決済が注目されています。日本は「キャッシュレス後進国」とされ、政府は対応を進めていますが、これが銀行界へ難しい対応を迫っているとの指摘が多く見られます。

 Fintechのtech=技術を広く「IT化」と捉えると、50年以上前から銀行におけるFintechは始まっていました。1960年代には入出金の計算・記録が算盤・手書きからコンピュータに置き換わる「算盤レス」が進み、1970年代にはキャッシュディスペンサーの普及や後の「手形・小切手レス」に繋がる全銀システムが稼動、1980年代には情報システムが構築されました。その後、スマホ上で銀行取引が可能となり、来店機会自体が減少しているほか、お客さまの取引や銀行内部における「印鑑レス」が進むなど、銀行業界は歴史的に「IT化」に出来る限り取組んできました。

 日本がキャッシュレス後進国との指摘は、クレジットカードや電子マネー等による決済が消費に占める割合であるキャッシュレス比率が40〜90%程度の諸外国比、20%程度に止まる点を根拠としています。しかし、銀行預金を介した振込や口座振替を加えると、この比率は54%に達するとも言われ、日本が他国に見劣りしているとは言えなくなります。

 一方、Society 5.0といった新しい経済社会への移行過程であらゆる産業が巻き込まれる「産業tech」とも呼ぶべき足許の潮流は、従来のようにIT・ロボットを銀行内部の合理化に活用することだけで乗り越えられるものではない、過去経験したことのない波と捉えるべきです。キャッシュレス進展と現金ニーズの低下に伴い、駅前一等地の銀行店舗・ATM運営や要員配置を含め、銀行経営のあり方が問われています。

 さらに、取引を仲介して得る手数料ビジネスもGAFA等のプラットフォーマーを含む新しいプレーヤーに奪われ、口座引落し等のインフラ機能しか銀行には残らないのではないかとの危機感も感じます。

 今後も一段と大きく、速く進むとみられる技術革新に、金融機関がどう対応していくかを見通すのは困難ですが、生活者の立場から金融機関に期待されることを2点述べたいと思います。

 一点目は、技術革新を積極的に活用し、資産保全や個人情報保護等に十分配慮した上で、サービス向上と手数料引下げに繋げられないか、すなわち金融機関最大の使命である安全・信用を兼ね備えた技術革新の取入れ期待です。

 二点目は、データライゼーションの中で生じる期待です。金融機関は預金等を通じ、お客さまから様々なデータをいただいています。これらをお客さまの理解を前提に、信用情報等の形で活用できないか、さらに様々な企業との取引を通じ生み出され、世の中に散在するお客さまのデータを昨今注目される情報銀行のように金融機関が確りと資産化し、その価値向上をお手伝いする存在になれないかという期待です。

 新たな時代にもお客さまからの期待に現役世代が確りと応えて欲しい、最後に金融業界の一OBとしての期待を述べ、話を締め括ります。


私立女子大学の経営環境について

2019年4月24日(水)

学校法人女子美術大学
理事長 福下雄二君


 本日は、私立大学の経営環境、とりわけ女子大の経営環境、女子大の存在意義等についてお話しをさせていただきます。

 今、私立大学を取り巻く経営環境はかつてないほど厳しい状況にあると言えます。
 日本の18歳人口は、2018年を境に減り始め、本格的な18歳人口減少時代を迎えます。これがいわゆる「大学の2018年問題」といわれるものであります。このまま推移すると、定員割れの大学や赤字経営の大学が間違いなく増えていくことになると考えられます。

 このような私立大学を取り巻く厳しい状況に対応して、多くの大学では、さまざまな方法で生き残りを図っているところでありますが、特に女子大を取り巻く環境は、昨今の女子大離れ、共学志向により、とりわけ厳しいものとなりつつあります。

 女性の大学進学率の高まりと社会進出を背景に、女性の学部・学科選択が変化し、多様な学部・学科を選択できる志望が強まり、女子受験生の共学志向が高まりました。即ち、女子受験生の求めるニーズが女子大よりも共学に移っていったということであります。それにつれて女子大の人気も薄れていったのであります。

 このようなことから、一時は「女子大は役割を終えたのではないか」と言われたり、女子大不要論まで唱えられたこともありました。

 そのような中で、では一体、女子大の存在意義は何なのか、ということでありますが、女子大の存在意義を3つの点で整理してみました。

 第1点目は「女子だけの教育環境」という点であります。
 即ち、人生の土台をつくり、その後の人生を大きく左右する大事な時期を、男性を意識しない環境で勉学や制作に没頭する、そこでさまざまなことを学び、経験し、最後は自分で決断し行動する、そういう力を身に付け、自信をもって社会に出ていく、そういう女子だけの教育環境に価値があるということであります。

 第2点目は「リーダーシップ」という点であります。
 男女共同参画、女性活躍が叫ばれておりますが、日本の社会はまだまだ男女の活躍に格差があります。

 社会に出てリーダーシップを発揮して活躍する女性を育てるためには、共学よりも女子だけの大学の方が良いと言われております。何故ならば、社会で男性が果たしているリーダーの役割を、女子大では女性が果たさなければならず、その結果、意思決定力と実行力、リーダーシップを身に付けた女性が育つからであり、それが女子大の存在意義の一つとなっております。

 第3点目は「ロールモデル」という点であります。
 女子大学の意義の一つは、豊富なロールモデルを日常レベルで提供できることであります。ある女子大学の場合、教員の過半数が女性教員で、女子学生がその女性教員のキャリアを身近に日常的に見ることができ、それがロールモデルとなって、女子学生のキャリア志向が高くなっているということであります。

 最後に、厳しい環境の中にあって、特色あるキャリア教育を展開して成功している女子大の事例を紹介します。

 お茶の水女子大学や奈良女子大学などは、企業で働く場合でも、一般職より総合職を目指すべく指導し、管理職など指導的立場に就くことを目指す女性を対象とした教育を行っております。

 一昨年春、総合政策学部を新設した津田塾大学も、将来、企業においてリーダーになれる総合職を志向するキャリア指導を行っております。

 昭和女子大でも、キャリア教育が積極的に展開され、今や女子大就職率8年連続日本一という実力派女子大として知られております。

 その他にも、国家資格試験の合格実績を誇る女子栄養大学、さらには、高度の専門職の養成に特化している女子大として、東京女子医科大学、女子の体育大学、そして私が理事長を務めております女子美術大学などがあり、その存在価値は今でも損なわれていないと思います。

 以上、女子大の経営環境、女子大の存在意義等についてお話しをさせていただきました。