卓話


次世代金融への転換

2020年2月26日(水)

(株)みずほ銀行
常任顧問 林 信秀君


 

 社会の大きな変化の中で、銀行を含むあらゆる業界・企業がビジネスモデルの大きな変革を求められています。
1.社会の大きな変化
 国際社会の分断があらゆる面でおきています。この問題の本質は、日本企業のグローバルなサプライチェーンが機能しなくなる可能性があるということです。日本が得意としてきた製造業、物作りのグローバルサプライチェーンはある意味曲がり角にきていると考えられます。

 さらに、アマゾンやアリババなど世界中で巨大なPlatformerが出現し、消費活動のDigital化が進んでいます。

2.銀行の収益構造の急変
 銀行を取り巻く経営環境は過去に類をみないほどに厳しく、4つの構造的課題があります。
 1つ目は、企業・個人の“カネ余り”により、銀行の貸出が伸びないということです。

 2つ目は、マイナス金利政策の長期化により金利収入が伸びない点です。

 3つ目は、ヒト・モノ・カネといった経営資源のミスマッチの拡大です。ミスマッチの事例として店舗があります。この10年で銀行の来店客数は4割も減少しました。

 最後、4つ目の構造的な課題は、競争環境の激化です。従来は国内外の金融機関同士の競争が主でしたが、テクノロジーの進化によって、異業種からの参入も活発化し競争が激化しています。小売、通信大手、スタートアップなどが次々に参入し、おカネを巡る顧客との接点は銀行が独占できなくなったのです。

 次に2つのメガトレンドについて、お話したいと思います。
 1つ目のメガトレンドは、「少子高齢化」です。中長期を見据えた際に日本が立ち向かうべき最大の課題は、人口減少・高齢化への対応です。金融資産の高齢者への偏在は一層強まる見通しで、2035年には70歳以上の高齢者が保有する金融資産の割合が約4割になることが想定されています。

 一方で、2035年には、高齢者(65歳以上)の3人に一人が認知症となる可能性も指摘されており、金融システムから阻害されずサービスを安心して受け続けられる仕組みづくりが必要となります。

 こうした時代/経営環境だからこそ、伝統的金融機関の生きる可能性が残されているともいえます。操作性/機能は非常に便利でも、プライバシー/信頼の観点から、家族も含めて自分の全財産を開示して人生設計に係るコンサルティングは、信頼できる金融機関へと、人々は、用途によって使い分けるのではないでしょうか。

 2つ目のメガトレンドは、「サステナビリティ(持続可能性)」です。環境や人権等の社会問題に対する関心が高まる中、企業に対する社会的要請も高まっています。日本でも、経団連が企業行動憲章を大きく改定するなど、SDGsへの取組みが加速しています。

3.展望
 この厳しい環境認識を踏まえ、我々は、従来の銀行業務からの脱却、「次世代金融」へのビジネスモデル転換を目指しています。

 1点目は、伝統的金融機関ならではの強みや存在意義を再認識することです。
 長年の取り組みを通じ培われてきた銀行に対するお客さまからの信頼は、大切にすべき財産です。

 2点目は、非金融も含めた「金融を巡る新たな価値」を創造することです。例えば、私共グループの信託銀行が2017年に取扱いを開始した「選べる安心信託」は、資産管理などの金融サービスに加え、介護や老人ホームなどの非金融サービスを組み合わせ、ライフステージに応じてご利用頂ける商品であり、発売以降好評を博しています。

 3点目は、デジタルとリアルの融合です。デジタルを活用して顧客基盤を拡張し、磨き上げた銀行・証券・信託一体の対面コンサルティングで収益をあげていくビジネスモデルです。そのためには、店舗を従来の事務処理中心の場から、「コンサルティングの場」へと転換を図ることが必要です。

 伝統的な安心・信頼を武器に、銀行起点から顧客起点/社会課題解決起点へとビジネスモデルを転換し、デジタルで経済圏を広げてリアル即ちお客さまとの対面営業で深掘りするという「次世代金融」への転換が、100年に一度とも言われる大変革時代を生き抜き、持続的な企業になるための「解」であると考えます。