卓話


イニシエイションスピーチ

2009年12月2日(水)の例会の卓話です。
大塚 陸毅君のイニシエイションスピーチは掲載していません。

大塚 陸毅君
渡邊 泰彦君

「海外建築・開発事情」

職業分類:ビジネスセンター開発
渡邊 泰彦君

 私は、三菱地所で丸の内再開発に携わっていたので海外の建築家、都市開発の専門家などを数多く訪問した。時代の最先端をいく彼らの考えを知ることで、将来どのような建築や都市がそして都市文化が創られていくのかを予測できるのではないかと期待したのである。その中から印象に残った人々、プロジェクトなどを紹介したい。

 数年前、アムステルダム都市計画局長のトン・スカープ氏から丸の内開発への提言を受けた。有楽町から東京駅までの鉄道線路を地中に埋め八重洲と丸の内を連結、地表に公園、文化施設等を新設したら更によい街になる、というのである。現にバルセロナやボストンでは、市街を分断していたハイウェイを地下化、交通混雑解消、緑地, 文化施設新設など環境貢献に大きな成果を上げている。

 地球環境に関心が深まる中、古い建造物の再利用が最近とみに盛んである.オランダの港で長さ270メートルもある廃物突堤のうえに、超細長の3階建ビルがたち世界を驚愕させた。取り壊せば港の底が破壊され、環境問題を引き起すので再利用したのだ。シカゴではイスラム教会の廃墟を完全復元、内部を百貨店に改装した。アディダスの本社もまた廃物病院の再利用である。

 ロッキー山中で環境研究所を主宰するエモリー・ロビンス氏を訪問したが、マイナス20度の冬でも電力を使用せず、それでいて室内には半袖姿が見られバナナが実っていた。彼は、ナチュラル・キャピタリズム(自然資本主義)を著した環境学者だが建築素材、工法の研究を極めた実務家でもある。最近エンパイアステートビルの環境性改善を受注したとのことである。

 バルセロナの元開発局長で今はハーバード大学教授のホアン・ブスケ氏に、この街には昔から自由奔放で奇抜な建物が多いが建築規制は無いのかと聞くと、規制は全くしていないとの返答であった。最近、大御所建築家ジャン・ヌーベル氏設計でサイケな色をした超高層が完成しサグラダ・ファミリア教会のむこうを張って天高く聳えているが、規制を嫌うバルセロナの象徴のように思えた。

 北京のオリンピックスタジアム、「鳥の巣」などの斬新設計で世界的注目を集めている建築家ヘルゾーク氏の事務所に、5角形とも6角形とも見えるような奇妙な非対称型の窓の模型があったが、この形が省エネ的に最も効率がいいのだとのこと.デザインと効率の融合の成果であろうか。

 奇抜といえば極めつきはレム・コールハウス氏で彼は著作「錯乱のニューヨーク」で有名になった建築家だが、最近では北京のテレビ放送社屋の設計で知られている.摩訶不思議な代物で、2本の傾斜した超高層建物が、そこから奇妙な角度で突き出した空中回廊で結合されている。ドバイの人工島の上に彼が計画した極端に細長い高層ビルは、太陽光を遮るために長方形の短い辺には窓を作らず、その面を太陽に直面させて日中回転するのである。

 建物を捻る、曲げるは最近の流行で、マンハッタンの設計事務所をたずねるとどこでも、この手の模型がおかれていた。911のグラウンドゼロ跡地の記念的建物も四角を捻った形になる予定である。


 イタリア人の女流建築家アウレンティ氏の設計で千鳥ヶ淵にイタリア文化会館が建てられ、その真っ赤な色が話題となったが、建築における色彩の権威トリノ工科大学のジョバンニ・ブリノー教授によると、ローマ時代から街造りには色彩計画が周到に準備され重要な役割を果たしてきたのだという。日本でも色彩に対する関心を高める必要があると思われる。

 此れからの街造りは、外国の都市との競争を意識せざるを得ない。保守的な街ロンドンの都市計画責任者を20年以上やってきたピーター・リース氏も最近になって考えを大きく変え、「今ロンドンでは何本もの超高層を許可した。国際競争に勝つ為だ」と言明している。再開発を通じ都市の質的向上を図ることが今や世界共通の課題となっている。開発に携わる人々の責任は大きい。