卓話


イニシエイションスピーチ

2009年10月28日(水)の例会の卓話です。

谷川紀彦君
小林啓文君

日本企業から想うこと

エーザイ
取締役議長 谷川紀彦君

 本日は入会時の職業分類に則ってベアリング、及び、それから派生する日本企業の特質といったお話をさせていただきたいと思います。


ベアリングには回転をスムースにする役割があり、回転するあらゆる場所に使われておりまして、皆様のご家庭でも電気洗濯機、掃除機、パソコン等々、平均するとどんなご家庭でも30個から40個はお使いいただいている筈です。大きさも、ユーロトンネルを掘る時に使われましたが、掘削機用の直径6mのものから直径0.3mmの小さなベアリングまで色々な大きさ・種類のベアリングがございます。産業用では、工作機械、風力発電用風車、新幹線の車軸、自動車、人工衛星、医療用のCTスキャナー等で使われております。皆様にお馴染みのボールベアリングですが、中に入っているボールは、いわゆる完全に限りなく近い玉(真球)でして、一つの玉を地球の大きさに例えますと、その凸凹の程度は長谷の大仏位(高さ12.4m)しかありません。

 ベアリング産業では、トライボロジーという、摩擦をコントロールする技術をコア技術としております。ベアリングの発明者はレオナルド・ダ・ビンチで、13,000ページに上る彼のノートの中に、今日のベアリングとほとんど違わないベアリングのスケッチが残っております。

 日本に初めてベアリング製造会社が生まれた経緯に触れたいと思います。

 明治の初期に安田財閥の安田善次郎という銀行家が、日本の工業化を展望して工場の建屋建設が増えると見込み、西洋釘の国産化を企画しました。その準備のための海外調査員の人選を、友人であり、初代の特許局長であった高橋是清(後の総理大臣)に依頼致しました。偶々高橋の元部下であった鹿児島出身の山口武彦に白羽の矢が立ち、弱冠27歳の山口青年を2年間ヨーロッパに出張させました。帰国後、山口青年によって1897年に西洋釘の製造会社、1906年に機械工具の輸入商社、さらに、4年後の1910年に液体酸素の製造会社が作られました。加えて、1914年にベアリングの製造会社が設立され、ここに日本最初のベアリング製造会社が誕生しました。

 この山口武彦によって作られた4つの会社はいずれも社歴90年以上の長寿企業として、又、うち3社は東証1部上場会社として、今日も生き残っているという事は大変興味深いことです。

 特に、いわゆる長寿企業が日本に多いということは、日本企業の大きな特徴の一つでございます。

 例えば、東証一部上場企業1701社(10月9日現在)のうち創業70年を超える長寿企業は448社、一部上場企業の26.3%に当たります。商工リサーチの調査でも、日本には100年以上続く会社が約15千社あるそうです。

 さらに面白い事は、世界で一番古い企業が日本にあるということです。会社の名前は金剛組。大阪市四天王寺にある寺社建築の会社で創業は西暦578年、1431年にわたり営業を続けています。

 では、なぜ長寿企業が日本に多いのでしょうか。私は、次の3点だと思っております。 
1)日本企業の「もの作り」へのこだわり。
2)変わり続けられる柔軟性。
3)日本が平和であること。
日本企業から想うこと

 特に、第3点目は、我々日本人は見落としがちですが、平和こそが長寿企業存続のための大きな条件だということは忘れてはなりません。

 日本は外部からの侵略や内戦に見舞われたのは過去、戦国時代や、不首尾に終わりましたが二度にわたる元寇、あるいは江戸時代末期の内戦位であります。ですから、戦争や他民族の支配を永く受けた地域には、長寿企業は見当たりません。他民族支配の多かった朝鮮半島には100年以上続く企業や商店は一軒もなく、永く植民地支配下に置かれたインドには、3社しか無いそうです。

 私たちのロータリークラブの綱領の第四に「世界的親交によって国際間の理解と親善と平和を推進すること。」と記されております。

 私はこれからも奉仕の心をもって、ロータリー活動に積極的に参画し、平和維持のささやかな一助になりたいと思っております。

事業承継

森・濱田松本法律事務所
パートナー弁護士

小林啓文君

 今日は事業承継についてお話します。

 世の中は少子化時代。子孫に会社を継がせるのが昔よりずっと難しい時代です。

 ここでは主に法律的なことを中心にお話します。つまり、継がせたい人間は決まったとして、その方法で、税理士さんに聞くべきようなことは省くということです。ただ、これらのスキームはその会社が置かれた状況により、より適切なものを選ばなくてはならないもので、これは絶対だというものはありません。一応ここではお子さんに継がせたいというケースを取り上げます。

 一つはMBOというやり方です。これを使うのは本業が豊富なキャッシュフローを生むというケースです。これは、お子さんにまずSPC(特別目的会社)を設立してもらいます。このSPCが手持ちの現金で足りない買収資金を借り入れます。この資金で親などが持っている会社の株式を買い取ります。するとSPCの所有者はお子さんで、このSPCが借金と対象会社の株式を持っています。その後で、対象会社とSPCを合併させます。すると対象会社の株式はお子さんが所有し、買収のための借金は対象会社の借金に変わってしまいます。対象会社に豊富なキャッシュフローがあれば、そのキャッシュフローでこの借金を返済していけます。この方法は事業を継がせたい第三者の経営者でも適用可能です。

 次は、小さな資本金で見込みのある新規事業を子どもにやらせる方法です。新規事業を立ち上げれば、少し様子を見れば成功しそうかどうか分かるものです。その成功しそうな新規事業をまだ小さい事業の芽の、小さいうちに子どもに資本を出させてやらせるのです。それが化けたら元々の事業の会社の株を買い取ってもらいます。万一うまく行きそうにないことが分かったら早めにその新規事業を止めるか、旧事業会社の方で買い取ります。

 もう一つは、儲かっている事業と赤字事業を持っていて赤字事業を止めようと考えているようなケースです。この二つの事業を一つの会社でやっていて、トータルがやっと黒字という程度なら、この会社の株式評価は大変低いものになります。この評価が低い間に子どもに売却します。その後、赤字事業を廃業したり、第三者に売却したりして、黒字事業のみを残します。

 更に黄金株というやり方があります。これは少しやり方を変えれば上場会社でも利用可能です。現在の会社法では、種類株式といって配当や議決権等に差がある株式を発行することが可能です。例えば、現状の株式を議決権のない株式とある株式を半分ずつにしてしまいます。そして議決権のない株式を相続後に会社に買い取ってもらうなどして相続税を捻出したり、議決権のない株式を事業承継しない相続人に相続させたりして、議決権だけは事業承継者に行くようにすることが可能です。上場企業でも使えるというのは、最近無議決権株式を普通株式とは別に上場することが可能になりました。無議決権株式を無償交付して上場しておけば、相続時に無議決権株で物納するとか、増資の時には無議決権株式だけで増資して、議決権割合を落とさないようにするなどの工夫が可能です。

 次に事業承継しない相続人に一部株式が行ってしまったような場合では、その相続人に会社に強制的に売り渡すよう請求することが会社法上可能になりました。ただし、この制度は譲渡制限をしている会社だけです。この制度は、現状で株式が分散してしまっている場合も応用可能です。少数株主に相続がある毎に請求すれば、分散を防ぐのに利用することができます。

 会社が自己株を剰余金の範囲で取得可能な制度も、使い道があります。親と子が半分づつ所有している場合では、親の分を会社が自己株で取得すれば、子の持ち分割合が増える計算になります。この際にTOBなどの手法で、見なし譲渡益課税にして、税金を安くすることも可能です。

 また、2006年度から中小企業基盤整備機構による事業継続ファンドの制度も始まっています。