卓話


変貌するオフィスビル東京

2020年10月28日(水)

(株)不二屋インターナショナル
代表取締役社長 鈴木喜雄君


 弊社は虎ノ門の交差点に、1929年明治学院、神戸女学院を建てたウィリアム・ メレル・ヴォーリスの設計で竣工いたしました。以来、2回の建て替えを経て現在に至ります。

 初代ビルのテナントは、場所がら政治団体事務所やレストランなどがありました。レストランは、第二の海軍司令室と言われる程、海軍士官が毎晩来ていたと聞いております。

 東京大空襲を逃れ高度成長の東京で移り変わりをみてきました。1967年2代目のビルの主なテナントは銀行の支店や政府の外郭団体が入っていました。

 現在のビルは、国家戦略特区の再開発として東京メトロ銀座線虎ノ門駅ホーム拡張、日比谷線新駅虎ノ門ヒルズ駅との地下連携通路建設を基本コンセプトとし、オリンピック開催の前までに竣工を約束に今年 7月に竣工しました。テナントはデジタル庁、IT企業、外資系などさまざまな業種が入っております。

 ビルディング管理におきまして戦前は機械室、警備、清掃などはすべて自社雇用形態でしたが戦後からは外注雇用となり、現在のビルは大手デベロッパーの子会社に総括的に運営を委託している状況です。

 世界の都市ランキングでは東京はロンドン、ニューヨークに次ぐ第3位ですが、海外からのアクセス、バリアフリー化、起業支援などまだまだ課題があると言われています。そこで2020年に世界最高の都市への変貌を狙い、虎ノ門は国家戦略特区政策の一つとして多くの再開発が進められてきました。

 虎ノ門地区ではBRT運用、環状2号線沿線の東京都しゃれまちづくり条例で、世界スタンダードのまちづくりが進められてきました。賃料もリーマンショック前までのレベルまで戻り、私募リートなどの資金も潤沢に集まり現在は7つの再開発が進んでおります。空室率も過去最低となりオリンピックを控えて準備が進んでいました。

 それがこのコロナの影響でREITの先行きが不透明となり、総合的な値動きを示す東証REITの急落がオフィス系銘柄期待低迷につながっています。オフィス市況の好調持続期待から都市部オフィスは人気を集めてまいりましたが、新型コロナ対応の為テレワークの普及や企業業績の悪化とで、賃料の引き上げ率が停滞し、各社事業床縮小の動きがでております。現在はリートの資金が入りビルの格付けがなされビルの質が選別されるとともに、ビルの価格は地価とキャッシュフローをベースに決まるようになりました。

 また世界認定機関のリードやキャスビーなど世界基準の省エネ、健康、環境に関わるビル設備基準などを対象に評価されるようにもなりました。日本では認定機関の評価はまだまだ認知度が低いですが、海外の企業からは高評価ビルが入居条件の1つとなっています。

 テナントのオフィスの使い方も変わってきています。以前は部署ごとに机を並べて仕事をしておりましたが、最近は社内で自由に居場所を選べるフリーアドレス化が進み、支給した携帯で位置情報を管理する会社もあります。見方によれば自由になっておりますが、実は会社に知らないうちに管理されているというSF映画にでてくるような管理社会になりつつあるとも言われております。

 コロナ渦、ウィーワークをはじめとするシェアオフィスの台頭でオフィス賃貸業にも変貌が見られてきています。世界にある店舗オフィスの使用が可能となり必要に応じて会議室も借りる事が出来る新しいスタイルのオフィスが増えてきています。

 新しい時代の到来、戦後70年で構築された社会、特に秒単位で運行されている鉄道などの交通インフラ、はんこう社会、会議などの働き方習慣、テレビ、新聞を中心とするメディア、物流、通信など今の日本が直面する抜本的な改革がそこまで来ています。現行、何不自由なく生活してきた習慣を変える勇気、どのように舵を取っていくかが試されております。

 最後にこのような時代のなか、これからのオフィスビルもニーズにあわせて変えていかなくてはいけなく、その時代にあったオフィスビルを提供していく所存であります。


免震・制震・耐震〜建造物の地震対策

2020年10月28日(水)

(株)川金ホールディングス
代表取締役社長 鈴木信吉君


 一年前の卓話で、東大地震研平田先生が、首都直下地震対策として建物の耐震性を強化することが必要と話されました。それには掲題の3つの方法があります。免震は地震から免れる、制震は揺れを制御する、耐震は地震に耐えるという概念です。

 耐震は頑丈な建造物にするということです。現行の建築基準法は、大地震では建物の損傷は許容するものの、人命にかかわる崩壊が起こらないことを最低限の水準と定めています。つまり、耐震構造では建物は倒壊しないものの、大きく揺れます。

 免震では、建物と地面を切り離し、免震装置を基礎に据え付けて、建物に伝わる揺れのエネルギーを小さくします。現在、多くの免震装置はゴムで作られており、横の力に対して柔らかく変形し、建物の水平方向の周期を長期化して揺れを抑えます。また、ゴムと交互に鉄の板を挟むことで、建物の重さによる鉛直方向の変形を小さくします。このような免震装置は、支承と呼ばれています。更に揺れを低減させるため、油圧ダンパー等を併用して建物の揺れのエネルギーを吸収します。これは自動車のショックアブソーバーと同じ機能です。

 現在では、ゴム支承にダンパー機能も持たせるのが主流で、ゴムに特殊な材料を配合したり、ゴム支承の中に鉛の棒を挿入するなどして減衰性能を上げています。免震の場合は大地震でも大きな揺れは感じず、棚やデスクなども殆ど動きません。

 制震の場合、建物は接地していますが、地面からの地震動エネルギーを油圧ダンパーなどで吸収します。他に、特殊鋼棒材や粘性体を充填した壁材があります。建物の屋上に揺れる錘を置き、建物と別に揺らして振幅を調整させる装置もあります。制震は免震に比べ若干の揺れは感じますが、耐震に比べるとかなり小さく制御できます。

 免震の総工費は耐震に比べ1割弱アップ、制震は免震の半分程度のアップとなります。一方、免震や制震の建物の資産価値は大きく向上します。大地震後の修繕費も抑えられ、地震ライフサイクルコストは割安になります。

 ところで、建築基準法に基づく現行の耐震基準は昭和56年に改正されました。当面、それ以前に造られた建物をすみやかに補強する必要があります。現在、公立学校の耐震化率は99%、病院全体は75%、住宅は87%、住宅以外の建築物で74%です。国交省は学校、病院、百貨店等の多数の者が利用する一定規模以上の建築物について、令和2年に95%、7年には耐震不足の建物解消にする目標を掲げています。

 学校などの低層建築物は、免震や制震の効果が低く、殆ど耐震で補強します。鉄骨の筋交いを校舎や体育館に取り付ける工法です。工事中も建物を使用できる、居ながら工事が可能です。

 4階建て以上の中高層では、柱等の補強や、ダンパーなどの制震装置を付加します。超高層は、ダンパーや制震壁、錘などの制震装置を設置する補強方法が主流です。

 一方、インフラでは緊急輸送道路上の橋梁の耐震補強進捗率が現在79%です。橋梁の補強では、免震支承交換、ダンパー付加や橋脚の炭素繊維補強などが各地で行われています。

 最近は、病院内のベッドや医療機器、工場内の生産設備などが地震でも揺れないようにしたいとするニーズが増えています。BCPの観点からは、地震を経ても操業継続可能ならしめる対策が求められています。また、医療行為や学業、企業活動や交通などを止めずに済む、居ながら工事による補強が多くなっています。

 震源から遠く離れた地域の超高層ビル・マンションなどが、長時間ゆっくり揺れ続ける現象は、長周期地震動によるものです。高い階ほど揺れ、50階建ての最上階で2メートル程度の揺れ幅があるそうです。国交省は、長周期地震動は固有周期の長い高さ60メートルを超える建築物への影響が大きく、対策として制震ダンパーの設置などが有効としています。

 いのち、資産を守り、安全安心な社会が維持されるためにも、大地震への備えが大切です。